連載

Travel

2026.02.13

熱田神宮といえば『きよめ餅』。名古屋の定番土産として愛される理由とは?【ボイメン本田剛文、いざ参る!Vol.5】

『きよめ餅』といえば名古屋でお馴染みの大人気銘菓。羽二重餅のふわっと口の中で溶ける柔らかい食感と、こしあんの上品な甘さが実に魅力的な一品です。
昭和11(1936)年に創業し、『きよめ餅』の製造・販売一筋のきよめ餅総本家。なんと我らが中日ドラゴンズと同じ年、共に今年90周年を迎えるそうです。

そんな熱田神宮土産として長きにわたって愛されてきた伝統の味を、情熱を持って受け継いできた5代目社長の後藤尚子さんと、夫で統括部長の後藤徳生さんにお話を伺いました。地元名古屋の自慢『きよめ餅』のおいしさに迫ります!

愛され続けて90年!そのネーミングは故事にちなんだきよめ茶屋が由来

『きよめ餅』の生みの親は、尚子さんの祖父であり、初代の新谷栄之助さん。熱田神宮に名物を作りたいという熱い思いから考案したのだそうです。そしてこのネーミングの由来は、なんと江戸時代にまで遡ります。

かつて熱田神宮の西門近くに、参詣者たちがお茶を飲み、一息ついてから、身を清め、神前に向かったと言われる『きよめ茶屋』があったと伝わっています。この故事にちなんだ名を冠(かぶ)した『きよめ餅』を世に売り出し、その味を誕生当時のまま、現在まで大切に受け継いでいるのです。これが今も地元で愛され続けている理由の一つと言えるでしょう。

御多分に洩れず僕自身も、『きよめ餅』ファンの一人。5個入りの箱を買って「1日1個ずつ食べよう……」などと思っていても、ついつい手が止まらず、3日もあれば間違いなく空っぽになります。

手作業でのこだわり製法で変わらぬ味を今に伝える

変わらぬ味を作り続けるのはとても大変なこと。ロングセラーとして愛されているおいしさの秘訣を尚子さんに尋ねてみました。

「歯切れの良さと口溶け感を出すために、 朝6時から工場を稼働し、機械を使って餅と砂糖を毎朝1時間半かけてこねているんです。ただ機械任せにしてしまうと、砂糖のダマができて不完全な仕上がりになってしまうので、最終段階では手でこねています」と尚子さん。

5代目社長の後藤尚子さん。この日は熱田神宮で開かれる年始の献茶会へ参加されたため美しい着物姿で登場してくれました

繊細な口当たりも人気を支える大きな要素であるだけに、羽二重餅作りに妥協はありません。職人の研ぎ澄まされた感覚と技術であのおいしさが出来上がるのです。

こだわりの羽二重餅に包まれているのが、これまた絶品のこしあん。こちらも実に丁寧に作られています。餅と同じく、すべてを機械任せにできない水分量の加減は、やはり人間の長年の感覚が必須です。更に夏と冬では温度・湿度が違うので、それらに対応するため、あんこの固さを変えながら味の品質を保っているのだそう。細部に至るまで、変わらぬ美味しさを追求する姿勢は、90年の月日を歩んだ今も変わりません。

「こだわって作っていかないと、きよめ餅じゃなくなってしまうので」と語る徳生さんの目には情熱が宿ります。

後藤徳生さんも『きよめ餅』のブランド力を全国に!という熱い思いを語ってくれます

やってみてわかる早業の凄み……怒涛のきよめ餅製造ラインに挑戦!

きよめ餅の歴史を知り、製造部分を少しだけ体験させていただくことに。僕が挑戦したのは、型にはめてお馴染みの丸形にすることと、『きよめ』の焼印を押すことです。味を決定づけるセクションではありませんが、商品の顔を作るという意味で、重要な工程です。

いざ、挑戦してみると、言うは易しとはまさにこのこと。柔らかくフワフワなきよめ餅をつまんで型に入れるだけでもひと苦労で、「優しくつかみながらも手早く」「ちょうど良い塩梅の力加減」が求められます。柔らかい餅の変幻自在な状態にもてあそばれながらも、何とか30個の型作りをやり遂げました。

工場内に特別に入らせてもらいました。ほこりなどを持ち込まないよう念入りにチェックしてから、いざ工場内へ。みなさんの真剣な表情に気持ちが引き締まります。

次は最後の仕上げの焼印です。従業員の方が押しているところを事前に見せていただき、小気味いいリズム感で、テンポよく軽めに押していくのがコツだと見取り稽古で心得ました。

「うわっ」と思わず声をあげてしまったほど難しい焼印。うまくいかず思わずしかめっ面になってしまいました。

しかし、いざ実践してみると、難関で、初手から餅の表面に黒々とした刻印となってしまいました。想像したよりも更に軽いタッチが正解だと気づくものの、今度はそのコントロールを気にし過ぎてテンポが遅くなってしまい、焼印がみるみる冷めていくのです。そうなると焦りから、ますます乱れる手元。毎日大量のきよめ餅を作っている方々の冴えわたる技を体験し、どれほど大変かが痛いほど身に沁みました。

気合いを入れて作った30個の『きよめ餅』。これらは初挑戦の記念として、お土産にいただきました!

その生産数が人気の証!正月三が日も休まず稼働

毎日大量に作られているというきよめ餅ですが、実際にはどれくらい作られているのか尋ねてみると……。

「熱田神宮前という立地もあり、参拝客の数が購買数に比例します。初詣のある1月は、1年間でもピークです。平時でも1日に約7000個のきよめ餅を作っているのですが、年明けから三が日は、約45000個を生産します」と尚子さん。

見た目にもその柔らかさが伝わるきよめ餅。その味わいは深く、とろけるような口福感に包まれます

それだけ熱田神宮参拝ときよめ餅は、切っても切れない関係にあるのだと言えます。毎月行われている熱田神宮の献茶会でも、きよめ餅が提供されているそうです。

「戦後の復興としてのお茶会の立ち上げから初代が手伝わせていただいたという歴史があります。それ以来、お茶会のお菓子にはきよめ餅を使っていただいているんですよ」。

伝統を守り、受け継ぎ、そして新たな挑戦もして、次世代に繋げていく

きよめ餅総本家では、伝統の味を守りながら、より幅広い年代の方に楽しんでもらうための様々なアプローチもしています。いわゆるプレーンなこしあんのきよめ餅だけでなく、季節限定のフレーバーも登場。今の時期は桜味が並んでいます。また、暑さの厳しい夏には、爽やかなレモン味を作ったり、秋には季節の味覚として栗を使ったりと、きよめ餅を通じて四季の移ろいを感じることもできます。

更に昨年は『きよめぱん』という商品がSNSで話題となり、きよめ餅総本家の名をグッと高めました。中日ドラゴンズの井上監督が、北海道日本ハムファイターズの新庄監督にプレゼントしたことが火付役となり、話題になったのです。

「戦後の混乱期にはきよめ餅総本家が、配給用のパンを作っていた時代がありました。その名残も含めつつ、復活させたいという思いがあり、小麦粉にもち粉を入れ、もちもちの食感に仕上げた生地に粒あんを入れる形で新たな『きよめパン』を作りました。もともと人気商品でしたが、井上監督と新庄監督のおかげで更に広がりました」と徳生さん。

伝統を守る努力と、新たな可能性を探る努力。この両輪で走るエネルギーがきよめ餅総本家の強さと言えるのかもしれません。

取材を通して学んだこと

こだわりを持って作られた美味しさが、時代を経ても変わらず味わえる幸せ。愛され続ける所以がよくわかりました。名古屋名物『きよめ餅』を大切に繋いできてくれた方々に、地元市民としては感謝の気持ちがあふれんばかりです。熱田神宮の隣で今日も『きよめ餅』が作られている、そんな名古屋の当たり前がいつまでも続いていきますように。

若い世代にとって和菓子は、どこか遠い存在になってしまっていることが危惧されがちな今日この頃ですが……。一度食べたら世代を超えて、おいしさの魅力が心に届くはず。近頃重視されがちな“見た目のかわいさ”と“食感の個性”も『きよめ餅』は持ち合わせていることですしね! とにかくみんな、いっぺん食べてみやあ!

きよめ餅総本家

名古屋市熱田区神宮三丁目7番21号
電話:052-681-6161
営業時間:8時30分~18時(年中無休)

「ボイメン本田剛文、いざ参る!」記事一覧はこちら

取材・構成/黒田直美 Photo/松井なおみ

Share

本田剛文

東海圏を中心に活躍するBOYS AND MEN(ボーイズ・アンド・メン、通称ボイメン)のメンバー。 実家は江戸時代から続く仕出し料理屋。高校では弓道部に所属(弓道弐段)。日本舞踊を西川流で学び、舞台劇「名古屋をどりNEO傾奇者」で4年連続で女形出演! 日本で生まれた文化を多くの方に発信するべく、日本伝統文化検定取得(2級)し、伝統文化の語り部を目指している! NHK「うまいッ!」食材ハンターとして出演している他、東海テレビ「スイッチ!」レギュラーリポーターとしても活躍中!
おすすめの記事

浄暗に響く、神職の笑い声。熱田神宮の奇祭「酔笑人神事」に託された思いとは

Dyson 尚子

今、男性アイドルが日本舞踊の舞台に立つ理由。「BOYS AND MEN」本田剛文、三十の手習い

黒田直美

弓道を通して己を磨く「BOYS AND MEN」 本田剛文。自分を見失わない技と心の整え方とは?

黒田直美

寄席ってどんなところ?「ボイメン」 本田剛文が名古屋・大須演芸場に体当たり取材!

黒田直美

人気記事ランキング

最新号紹介

2,3月号2025.12.27発売

これぞ国宝! 坂東玉三郎

※和樂本誌ならびに和樂webに関するお問い合わせはこちら
※小学館が雑誌『和樂』およびWEBサイト『和樂web』にて運営しているInstagramの公式アカウントは「@warakumagazine」のみになります。
和樂webのロゴや名称、公式アカウントの投稿を無断使用しプレゼント企画などを行っている類似アカウントがございますが、弊社とは一切関係ないのでご注意ください。
類似アカウントから不審なDM(プレゼント当選告知)などを受け取った際は、記載されたURLにはアクセスせずDM自体を削除していただくようお願いいたします。
また被害防止のため、同アカウントのブロックをお願いいたします。

関連メディア