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2019.10.30

2019年は11月8日と20日開催!2020年の福をかっこみに、浅草「酉の市」へGO! 【霜月候】

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江戸ごよみ東京ぶらり 霜月候

“江戸”という切り口で東京という街をめぐる『江戸ごよみ、東京ぶらり
江戸時代から脈々と続いてきた老舗や社寺仏閣、行事や文化など、いまの暦にあわせた江戸―東京案内。昔も今もそろそろ暮れ気分が高まってくる霜月。今月は、江戸市民が年の瀬の福をかきこもうと詰めかけた「酉の市」についてのお話しを。11月を楽しむ東京ぶらりをご案内します。

2019年の酉の市は、11月8日と20日

11月の酉の日に執り行われる「酉の市」。2019年は、一の酉が11月8日(金)、二の酉が11月20日(水)です。酉の市にお詣りをして、熊手を片手に歩くひとびと姿は、年の瀬の風物詩。江戸のころの旧暦11月といえば相当に寒かったはずですが、商売繁盛や家内安全などを願う江戸市民で「酉の市」は大いに賑わっていました。

熊手を手にしたひとびとで賑わう酉の市の様子。「江戸自慢三十六興 酉の丁銘物くまで」/国会図書館デジタルコレクション

江戸の年中行事を記した天保9(1838)年刊『東都歳事記』には、酉の祭(酉のまち)とあり、酉のまつりの略であったと記されています。酉の市ともいう、と書かれていますが、江戸時代は酉のまちと呼んでいたようですね。また江戸時代に酉の市で知られた寺社仏閣は、現在の足立区花畑の大鷲神社、千住にある勝専寺(明治時代に閉鎖)、浅草の鷲神社の三カ所でした。大鷲神社を上酉、勝専寺を中酉、鷲神社を下酉と呼んでいたそうです。

景気のいい大きな熊手が出迎えてくれる鷲神社。写真提供/鷲神社

江戸の文化文政のころには、下酉とも新酉とも呼ばれた浅草の鷲神社がことさら賑わうようになってきます。それは目と鼻の先に吉原遊郭があったから。吉原目当てに酉の市へと出かける江戸っ子がさぞや多かったのでしょう。とはいえ酉の市には、男性だけではなく女性も吉原・仲の町を見物できたとか。この日の吉原は一段と景気がよかったとも言われています。

衝立そばに熊手がちらりと。酉の市帰りに吉原へ。「名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣」/国会図書館デジタルコレクション

幻想的な光景を楽しめる夜の酉の市へ

今では、浅草・鷲神社の酉の市が規模(熊手店約150店舗、露天約750店)や賑わいともに日本一を誇っています。景気のよしあしに関わらず、商売繁盛や家内安全、または来年への縁起かつぎにと参詣客は増えているとか。日中のほうが参詣客は少ないものの、時間に余裕があるならば夜がおすすめ。大鳥居や社殿にかかる提灯に灯りがともると、それはそれは幻想的な美しさ。日暮れが早くなる時期でもあるので、できれば社殿が灯りに照らされるころに訪ねてみてください。また鷲神社の隣にある長國寺でも酉の市を執り行っています。この日には長國寺のご本尊御開帳もあるので、いくつものご利益が得られるのが嬉しいですね。

毎年70万人~80万人の人出があるとか。本殿の参拝するまで1時間ほど待つときもあるので防寒対策も。写真提供/鷲神社

江戸市民の願いが生んだ、二の酉、三の酉

なぜ一の酉、二の酉と、何度も酉の市が執り行われるのか?本来は初酉(一の酉)だけの祭礼でしたが、江戸中期より賑わいが増すようになり江戸市民の願いもあってか次第に、二の酉、三の酉まで行われるように。ご利益は、どの酉の日でも変わらないので、ご都合にあわせて参詣を。昔から「三の酉の年は火事が多い」と言われています。諸説いろいろあるようですが、火事が大敵だった江戸時代、寒さも極まり火の出番が増える三の酉に火への戒めを喚起したという説、酉の市ついでに吉原へと出かける男たちに女房が「三の酉には火事が多い、夜遊びはほどほどに」と諫めた言葉から広まったという説も。空気が乾燥して風が強くなる11月、三の酉ではなくとも火の元にはどうぞご用心ください。

鷲神社の「鷲舞ひ」奉納。鷲の面を被った舞い手が右手に三種の神器をかたどった鈴、左手におかめの付いた熊手を持って勇壮に舞い、参拝者の邪気払う。酉の市では一日三回奉納する(0時、18時、20時)。写真提供/鷲神社

江戸のころから変わらない福をかっこむ縁起物

酉の市といえば、福をかっこむための熊手がつきもの。もともとは市の片すみで売られていた農具の熊手が、「福をかき込む」という意味の縁起物として担がれるようになったとか。江戸の風俗史をまとめた喜田川守貞の『守貞謾稿』には

「今日参詣の人。左図の物を買ひ、神棚などにこれを飾り家業繁盛の兆とす。これを表する物を、惣じて縁儀物と云うなり。青竹製のさらい(*)に宝船、米俵、金箱、包金、的矢、しめなわ、お福仮面、玉茎、戎大黒土像、鶴亀等の類を付する。…(中略)…小なるものにはお福仮面のみ付する。」

とあり、熊手の飾り「指物」(さしもの)は、今とほとんど変わらないようです。しかし指物のなかに玉茎があったことには驚き!?商売繁盛、子孫繁栄、夫婦和合の象徴として祀る神社は今でも見られますが、熊手にまでついているとはなんと大らかな江戸の人。『守貞謾稿』には「熊手を買う者は遊女屋、茶屋、料理屋…(中略)…芝居に関わる者等のみこれを買う」とも記されているので、商売繁盛のシンボルだったのでしょうね。
*熊手のこと

「いい!」と思った熊手が福をよびこむ

福をよぶ熊手選びも酉の市ならではのお楽しみです。明治時代から寺社仏閣の祭礼道具を商い、昭和10(1935)年より鷲神社で熊手屋台を出店する増田屋。四代目店主・横山彦一さんに熊手の買い方や酉の市の楽しみ方などを教えていただきました。

「一年に一度、酉の市でしか買うことができない縁起物が熊手です。毎年、東京近郊だけではなく新潟や北海道などの遠方から来られるお客さんもいます。うちで熊手を買うことを楽しみにしてくれている。毎年同じ顔に会えるのは、我々も楽しいし、お客さんも楽しいんじゃないかな。うちでの売れ筋は、大体2万円~5万円ぐらいです。選ぶコツ?そうだね、あんまり決めかねていると福が逃げちゃうから、パッとみていいな!と思った熊手を手に入れて欲しい」と横山さん。もちろんミニ熊手ならば、屋台によっては千円代からでもご用意があるのでご安心を。最近では小さな熊手をお正月飾りとして買っていく人も多いそうです。

景気のいい手締めは、酉の市ならではの光景。見ているだけで気分があがる。写真提供/鷲神社

定価で売られている熊手には必要ないけれど、立派な熊手を手に入れたいならば熊手屋との駆け引きが必要。どれだけ値切れるかは腕次第ですが、値切った分だけ「ご祝儀」とするのが粋な熊手の買い方。結局は言い値で買うことにはなりますが、ご祝儀を出すことでお大臣気分を、熊手屋はご祝儀で儲かった気分を、味わえるのがいい。最後は商い成立の手締めで景気よく商売繁盛を祈ってもらいます。

横山さんは「酉の市には来年への勢いややる気を携えて来て欲しいね」と言います。年の暮れ、新たな年への繁栄や繁盛を祈願するのが酉の市。「だから来年はよくなるかな?どうかな?なんて思わずに、絶対によくなるぞ!という気持ちでお詣りに来てください」とアドバイス。みなさんも来年はやるぞ!おー!と鼓舞しながら、酉の市にお出掛けくださいね。

おまけ二十四節気、11月は「立冬(りっとう)」と「小雪(しょうせつ)」

最後に江戸市民の暮らしに寄り添っていた暦・二十四節気(にじゅうしせっき)についてもご案内を。2019年の霜月、11月の二十四節気は11月8日の「立冬(りっとう)」と11月22日の「小雪(しょうせつ)」です。

一の酉でもある8日の「立冬」は、はじめて冬の気配が現れてくること。秋分と冬至の間となり、暦のうえではこの日から立春の前日までが冬となります。22日の「小雪」は、冷たい雨が雪に変わり始めるころ。山下達郎さんのあの歌のようですね。北国では、冬支度をはじめる時期だそうです。

年の瀬という言葉がそろそろ聞こえてくる11月、来年への縁起担ぎに「酉の市」へとお詣りを!

江戸的に楽しむ、11月の東京案内

酉の市おすすめ神社

鷲神社 
東京都台東区千束3‐18‐7
https://otorisama.or.jp

長國寺
東京都台東区千束3-19-6
http://torinoichi.jp/

大鷲神社
東京都足立区花畑7‐16‐8
http://ootori-jinja.or.jp/

大鳥神社
東京都目黒区下目黒3‐1‐2
http://www.ootorijinja.or.jp/

花園神社
東京都新宿区新宿5-17-3
http://www.hanazono-jinja.or.jp/

大国魂神社
東京都府中市宮町3-1
https://www.ookunitamajinja.or.jp/

書いた人

和樂江戸部部長(部員数ゼロ?)。江戸な老舗と道具で現代とつなぐ「江戸な日用品」(平凡社)を出版したことがきっかけとなり、老舗や職人、東京の手仕事や道具や菓子などを追求中。相撲、寄席、和菓子、酒場がご贔屓。茶道初心者。著書の台湾版が出たため台湾に留学をしたものの、中国語で江戸愛を語るにはまだ遠い。