快適で安全、楽しいドライブをかなえるプレミアムカー。そんな輸入車のディーラーとして100年以上の歴史をもち、日本での販売実績も200万台に迫るヤナセのクルマで美術館をめぐる企画。第2回は、華やかな工芸品や武具など、百万石加賀藩の宝物を多く所蔵する金沢の石川県立美術館です。いくつもの美術館や観光名所がある広坂エリアから金沢港へも、クルマならすぐ。今回は駅前のレンタカー店で高級車を借りて走る、そんな提案と情報をご案内します。
美意識の街金沢を体験し、工芸美品に出合う旅
香林坊からの美しい道のり
香林坊の交差点を背にして、百万石通りを兼六園へ向かう。その通りは市内の目抜き通りだから、渋滞していることが多い。広坂交差点で止まったら、左手をちらりと眺めてほしい。いもり堀と鯉喉櫓台の背後には金沢城公園が広がる。城の石垣、森、抜けるような青空…。3つのコントラストが美しい。一幅の絵という表現はこの場所のこの風景を言うのではないか。広坂交差点から兼六園、県立美術館などがある本多の森公園へは上り坂になっている。香林坊からは歩くより、車で行った方がはるかに楽だ。
写真/金沢城公園内の五十間長屋。文化6(1809)年に再建された形に復元されたもので、両脇には菱櫓と橋爪門続櫓も。県営の兼六駐車場にクルマを停め、土産物屋などを覗きつつ、石川橋から重文の石川門へと続くアプローチが気持ちいい。
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さて、金沢市内にはおよそ30館の美術館、博物館がある。人気の筆頭は金沢21世紀美術館だ。だが、同館を見た人が次に足を運ぶのは石川県立美術館だという。同館が所蔵しているのは郷土に伝わる美術工芸品、および地元ゆかりの芸術家の作品だ。学芸第一課長の谷口出氏は「所蔵作品の中心は前田の殿様が集めた文化財が基礎になっています」と言った。「江戸時代、外様だった加賀藩前田家は幕府に恭順の意を示すために美術工芸品を全国から集めました。戦意はないことを証明するため文人墨客を抱え、美術工芸品の制作を奨励した。そのため、前田家の文化財を管理する財団の国宝が30点近くもあります」
写真/ミュージアムショップで見つけた秋草の意匠の小箱。所蔵の漆工芸品のなかの、桃山から江戸の名品をもとにデザインされたもの。
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いつ行っても見ることのできる国宝
常設の特別展示室にあるのが国宝の色絵雉香炉。並んで展示されている色絵雌雉香炉は重要文化財。いずれも野々村仁清作の陶芸品だ。雉の姿を写したもので、大きさは等身大。重さはそれぞれ約2キロ。野生の雉はオスのほうが青緑色で目立つのに対して、メスは茶褐色でずんぐりした様子をしている。ふたつの香炉は雉を忠実に再現している。ガラス越しに香炉を見ながら、わたしは仁清が制作した順番を考えてみた。まず彼はつがいの雉を観察する。おそらくスケッチもしただろう。下図ができたら、陶土で雉の形を作り、彩色して焼く。焼き物は焼成した後に体積が30パーセントは少なくなる。むろん、仁清はそのことも想定して、大きめに作っていただろう。また、オス雉の尾っぽは長くぴんと張っている。焼く時には、尾っぽの下に支えを置いて窯に入れたのではないか。
工芸品を見る場合、美しさを感得するだけでは足りない。制作の様子を思い浮かべると、作家が苦心した部分に目がいく。谷口課長は「そうですね。仁清は細部に工夫を凝らしています」と言った。「オス雉の羽根を見てください。細かい臙脂色の線を浮き立たせるために、さらに細い金彩が施されています。それで全体が輝いて見える。また、よく見ると、雉の眼球のふちも金色に彩色されています。とても細かい技術です」展示室の壁には鑑賞のポイントとして4つが掲げられていた。「気迫を生む顔の表情」「造形力を最大限に発揮」「優雅な雰囲気の色絵付」「裏側はどうなっているの?」ポイントを読んでから眺めると、制作過程と細部を鑑賞する手がかりになる。
工芸品を鑑賞するために
仁清作のふたつに限らず、同館には加賀蒔絵、古九谷をはじめとする数々の工芸美術品が所蔵されている。陶磁器、漆工、染織、刀剣、甲冑、木竹工芸と、種類は多い。加えて、さまざまな技法を使った作品が並べられている。陶磁器では色絵、青手、染付、赤絵、金襴手。漆工では蒔絵、螺鈿、沈金、乾漆…。こうした技法について、わからない人には皆目、見当がつかない。「本を読んで、技法、様式などを勉強してから美術館へ行けばいい」専門家は誰もがそう言う。しかし、美術書における技法の解説文はPC操作のマニュアルに似ている。非常に難解だから、読む気力が続かない。わたしはわからない人のひとりとして谷口学芸課長に相談してみた。すると…。「美術の技法は現物が目の前にあるとわかりやすいと思います」谷口氏は展示してあった乾漆稜々盆(寺西弥生作/1993年)を指さしながら、乾漆という技法を語り始めた。
写真/石川県立美術館で見つけた、九谷焼のフリーカップ。古九谷の所蔵品を模したもので、蕎麦猪口や湯飲み、小鉢などとして利用可。
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「乾漆とは簡単に言えば、麻布に漆を塗って形を作っていくこと。塗ったり、乾燥させたりの繰り返しです。手間のかかる技法で、漆がたくさん取れる国だからこその技です」美術の専門書にも確かに、その通りのことが書かれている。しかし、目の前に現物があると、「なるほど。木の器に漆を塗ったのではなく、麻布だから、自在な形になっているんだな」とわかる。また、谷口氏は蒔絵と沈金という技法についても、簡単に教えてくれた。「蒔絵とは漆が乾かないうちに上から金粉をまいて模様をつける。沈金は漆に線を彫り込んで、金粉もしくは金箔をすり込みます」線を強調したい場合は沈金という技法を用いるのだとわかる。工芸に関する知識ゼロのわたしには、文章を読んでも蒔絵と沈金の違いはよくわからなかったが、目の前に両方の作品があれば、違いは一目瞭然だ。
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JR金沢駅から雨に濡れずに行け、アクセスが便利な金沢営業所。レンタル料金は今回の車両で24時間18,900円(税込・キャンペーン料金)から。
住所/石川県金沢市広岡1-9-25 地図
営業時間/8時~20時30分(12月31日~1月3日は9時~18時)
定休日/無休
アクセス/JR金沢駅金沢港口(西口)より徒歩約3分、空港バス停留所前
●問い合わせ先/ヤナセ www.yanase.co.jp/
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–撮影/永田忠彦 構成/小竹智子 文/野地秩嘉-