Culture
2018.05.14

没後七回忌追悼 写真集「女優 山田五十鈴」は情熱がつまった珠玉の一冊!

この記事を書いた人

女優・山田五十鈴の膨大な舞台写真をはじめ、山田五十鈴と交流のあった演劇人50人へのインタビュー、さらに行きつけの店や舞台年譜まできっちり収録された豪華写真集「女優 山田五十鈴」が出版されました。じつはこの本、高知の呉服店「ごふく美馬」の店主である美馬勇作さんが5年半かけて責任編集した自費出版本なのです。

浮世絵そのままのうりざね顔、総身に粋を纏った着物姿…。

山田五十鈴扉には、山田五十鈴のサインと、「粋」を纏った着物姿。

「編者あとがき」のページを捲ってみると、この本の生い立ちが記されています。美馬さんが山田五十鈴の魅力に目覚めたのは小学生の頃だったそうです。「浮世絵そのままのうりざね顔と、総身に“粋”を纏った着物姿、他の追随を許さぬ貫祿と玄人っぽさに強く惹かれて以来、その虜となった」とあります。やがて、高校1年で生まれて初めて上京し、山田五十鈴の楽屋をたずねたときのエピソードは、まるで歌舞伎の「籠釣瓶花街酔醒」のようで八ツ橋花魁に魂を抜かれた次郎左衛門のよう…。それから15歳の少年は寝ても醒めても五十鈴恋しの毎日で、芝居通いが始まります。当時のお宝写真がありました。

山田五十鈴南座屋上の鳥居前で、山田五十鈴さんと高校生の美馬さん。このころから美馬さんの追っかけ人生が始まったのでした。

追っかけ道を極めた
愛情溢れる一冊!

山田五十鈴によって美馬さんは日本女性の着物美に開眼し、それを生業として生きる人間として、その舞台姿を「本朝女優鑑」として残しておかなければならないという思いから自ら出版した写真集。山田五十鈴の18歳〜84歳の最後の舞台までの膨大で着物の参考本としても持っておきたい一冊です。また、松本白鸚、中村吉右衛門、片岡仁左衛門、坂東三津五郎はじめ、交流のあった演劇人50人のへインタビューは口調も生き生きと描かれており、読み応えがあります。追っかけ道もここまでくれば立派です! 出版に携わる者として、美馬さんの情熱には頭が下がる想いで読ませていただきました。

山田五十鈴現在の美馬勇作さん

東京で展示会があります。美馬勇作さんに観劇用の1枚を見立てていただきましょう。

さて、「ごふく美馬」といえば、今や歌舞伎俳優や梨園の奥様方御用達の呉服店として有名です。和樂2016年1・2月号の「晴れやかなきもの新春の舞台に出かけましょう!」という着物特集においては、美馬さんに観劇のための着物選びの極意をお聞きしました。

山田五十鈴和樂2016年1・2月号では「晴れやかなきもの新春の舞台に出かけましょう!」より。

山田五十鈴一度は見立てていただきたい、センス抜群の美馬勇作さん。

山田五十鈴

■没後七回忌追悼 写真集「女優 山田五十鈴」
美馬勇作 責任編集/集英社インターナショナル
定価:本体8,000円+税 A4上製/416ページ 発行所

ごふく美馬