突然ですが【あるなしクイズ】!!
ぶらんこにあって滑り台にない、しゃぼん玉にあってけん玉にないもの、なーんだ?
ぶらんこにあって滑り台にないものとは?
ヒント! ぶらんこと滑り台、しゃぼん玉とけん玉以外にはこんな例があります。
〇ある | ×ない |
---|---|
ぶらんこ | 滑り台 |
しゃぼん玉 | けん玉 |
風船 | 輪ゴム鉄砲 |
遠足 | 修学旅行 |
風車 | 水車 |
凧(たこ) | ドローン |
雉笛 | リコーダー |
わかりましたか?
答え:「〇ある」は春の季語になっているでした!
喜びにあふれた春の季語あれこれ
暖かくなってくると子供たちは家でじっとしていられず、外で歓声をあげて遊ぶようになりますね。これらの季語にも春の喜びが満ち溢れているように感じます。
キラキラとまぶしい春の季語をご紹介します。
ぶらんこ・鞦韆(しゅうせん)・ふらここ・ゆさはり・半仙戯(はんせんぎ)
唐代の中国では寒食の節(冬至から105日目)に宮嬪(きゅうひん、宮中の女官のこと)たちが鞦韆(しゅうせん、ぶらんこのこと)に乗りました。漢詩には春の景物として詠まれています。蘇東坡(そとうば)の「春夜」の詩は次の通りです。
春宵一刻値千金 しゅんしょういっこく あたいせんきん
花有清香月有陰 はなにせいこうあり つきにかげあり
歌管楼台声細細 かかんろうだい こえさいさい
鞦韆院落夜沈沈 しゅうせんいんらく よるちんちん
さらにさかのぼると古代ギリシャのアイオラという豊穣を祈る農耕儀礼や、紀元前2000年ごろのインドの冬至の日の農耕儀礼でぶらんこに乗ったそうです。
今は公園や学校に設置され一年中子供たちの遊具となっていますが、ぶらんこが春の季語とされているのは上記に由来しています。
鞦韆は漕ぐべし愛は奪ふべし 三橋鷹女
鞦韆に腰かけて読む手紙かな 星野立子
鞦韆の月に散じぬ同窓会 芝不器男
しゃぼん玉・水圏戯(すいけんぎ)
しゃぼん玉にはぶらんこのような謂れはないようですが、しゃぼん玉がふわふわと飛ぶのにふさわしいのはやはり春の空のように思います。
江戸時代のしゃぼん玉は無患子(むくろじ)の実を溶いた液を麦藁で吹くもので、江戸時代にはしゃぼん玉売りが売り歩いたそうです。
姉ゐねばおとなしき子やしやぼん玉 杉田久女
しやぼん玉どの子も瞳大きかり 小澤克己
しやぼん玉追へばまぶしき空のあり 三瀬教世
何捨てて大人になりししやぼん玉 森茉明
風船・紙風船・ゴム風船・風船売
風船もまた春の季語です。ヘリウムガスを入れた風船、息をふきこんだゴム風船、五色の紙を貼り合わせた紙風船。のどかな春にふさわしい風情があります。
もう飛ばぬ風船を蹴飛ばしてをる 依光陽子
公園の風船売りも帰りたり 越智 郁
紙風船つけばへこみて我に似る 新明紫明
風船のふくらむ息と無駄息と 後藤比奈夫
遠足
俳句では遠足は春の季語になっています。「野遊び」「磯遊び」「青き踏む」も春の季語なので、それに準じたものでしょうか。
小学生のころ、春は徒歩遠足で秋はバスに乗って社会科見学だった記憶があります。友達と車座になって食べるお弁当は楽しかったですね。帰ってからは、やれ作文を書けとか絵を描けとか、楽あれば苦ありを身をもって学びました。
灯台の胴遠足に取り巻かる 田中白夜
道ゆづりゐて遠足をまぶしめり 松沢白楊子
遠足や園児はたえず点呼され 矢野百合子
遠足の列に昔の我がをる 髙橋将夫
風車
風をうけてくるくるまわる風車もまた春の季語です。かざぐるまと読みます。ふうしゃと読むとドン・キホーテが向かって来る巨大なものになり、季語とはなりません。
風車売りを最近はあまり見かけません。私が最後に風車をみたのは、とある寺の水子地蔵に供えられたものでした。この世に生を享けることのなかった子供に原色の鮮やかな風車が音をたてて廻っていました。
さらさらと聞えてまはる風車 中村汀女
としよりが売るゆゑ買ひし風車 大牧広
風車淋しくなりて止まりけり 西村和子
凧・凧揚げ・奴凧(やっこだこ)・紙鳶(いかのぼり)・絵凧
凧は正月に揚げるものという思い込みがあったのですが、凧は春の季語になっています。凧を揚げる季節は地方によって違うそうで、長崎は四月に凧揚げ(はたあげ)大会が催されます。浜松の中田島砂丘では五月の浜松まつりで凧揚合戦が行われます。以前浜松に行ったときに凧揚げの練習をしているところに出会いました。波が打ち寄せる浜辺から空高くあがった凧の向うに富士山が見え、印象深い景色でした。
凧きのふの空のありどころ 与謝野蕪村
洋凧と云ふが血走る目を持てり 相生垣瓜人
凧の糸青天濃くて見えわかぬ 山口誓子
雉笛(きじぶえ)・駒鳥笛(こまぶえ)・雲雀笛(ひばりぶえ)・鶯笛(うぐいすぶえ)
それぞれの鳥の鳴き声を模した音が出る笛。玩具であり、また鳥に聞かせて鳴かせようとしたり、音でおびきよせて捕らえたりするためのものでもありました。江戸時代にはさまざまな工夫がされて盛んだったようです。江戸時代の名もなき職人さんが作っていたものを見てみたいですね。
老の指鶯笛にあてがひて 角川源義
雉笛や丹波一国竹の湧く 小島千架子
雲雀笛弱音は吐かず背伸びせず 藤原明美
蛇足ですが、「麦笛」「草笛」は夏の季語、両掌を組んで鳩の鳴き声を模す「鳩吹く」は秋の季語になります。
今回は子供の遊びの季語からあるなしクイズにしてみました。皆様もたまには童心にかえってみませんか。
参考文献
『カラー図説日本大歳時記 春』講談社
『新歳時記 虚子編』三省堂
『基本季語500選』山本健吉著 講談社学術文庫
アイキャッチ画像
La Mode Illustrée, 1867, No. 29: Costumes d’Enfants アムステルダム国立美術館