▼どうしてこの場所に? と疑問に思った方は、こちらの記事をどうぞ!
竹本織太夫 神戸・岡本で突然の代役を振り返る【文楽のすゝめ 四季オリオリ】第3回
スタイリッシュな眼鏡と時計がアクセントに
この日、織太夫さんがカジュアルなファッションに合わせたサングラスは、アメリカ最古の眼鏡製造会社として150年以上の歴史を持つ『American Optical』のもの。同じ形の眼鏡もお持ちだったので、かけていただきました。「私はよく物をなくしてしまうので、このサングラスもその心配があるからと、長年お世話になっているソニア・パークさんが、スペアの眼鏡を作ってくださったのです」
ソニア・パークさんは、広告や雑誌でスタイリストとして活躍された経歴を持つ方。現在は、日本をはじめ世界中から選び抜いた作家や職人たちによる日常使いのクラフトを並べた店舗、「アーツ&サイエンス」を運営しています。織太夫さんは舞台やお稽古の合間に、よく店舗に顔を出すそうです。福井県鯖江(さばえ)市の職人によって仕上げられたこの眼鏡は、オリジナルのサングラスと共に、織太夫さんのファッションに欠かせないアイテムとなっています。
時計はご贔屓様からの贈り物で、機能性とデザイン性を兼ねた人気ブランド「スウォッチ」の黎明期を象徴するモデル『XXーRATED BLACK』。ダイナミックな“X”プリントに目を奪われますが、これには深い意味があるようで……。竹本織太夫は、大名跡竹本綱太夫の前名として位置づけられていて、襲名してから八代目綱太夫ゆかりの『孃景清八島日記(むすめかげきよやしまにっき)』日向島(ひゅうがじま)の段を師匠に稽古していただいて勤めた時に、いずれは十代目との思いを込めたものだそうです。
お天気の日限定・お気に入りリュックがおしゃれ!!
バッグは爽やかな初夏の季節に映えるリュックサックをチョイス。ドイツの『RACING ATELIER』のものです。革素材なのでお天気の日しか持てないのですよね」と織太夫さん。この日は青天に恵まれて、まさにこのバッグを持つのにぴったりな日でした!
ハイテク素材であるキューベンファイバーと革のコンビネーションが印象的なデザインです。世界限定25個の超希少バッグは、一生モノですね。
和樂web編集長のファッション解説!!
今回も、ファッション誌を歴任してきた和樂web鈴木深編集長が解説します! 洗練された神戸のキャンパスに合わせたコーデは、いかがでしょう? 皆様、本気モードの解説を、お楽しみください!!
今回も、織太夫さんのド変態的ファッション哲学を、分かる範囲で(なにせ太夫さまは常識では計り知れない深掘りをする御仁なもので、あくまでわかる範囲で)解説していきます。
今回のデニムジャケットにリュックのコーディネートは、なんなら甲南大学のキャンパスで学生たちに一見なじんでしまいそうなカジュアルスタイルに見えますが…実は…とんでもない着こなしです!!
ひと言で言うなら「キザの極み!」
一見フツーそうで、遠目にはおだやかでフレンドリーな着こなしに見えますが、実は一点一点の選びとサイジングのストイックさが半端ない!!です。
一見地味に見せておきながら、実はすべてがなかなか手に入らないアイテムのオンパレードって…「わかる人にしかわからないよ」っていう、“自己満”と“上から目線”と“ドMなナルシスム”が複雑に混ざり合ったカオスな美意識のなせるワザです。
こんな孤高のスタイルは、ふれるとケガする妖刀の風情です。うかつに近寄ってはいけません。
まず気になるのはアイウエア。これは老舗ブランド『American Optical』の伝説的銘品「1stウエリントン」です。
今でこそあらゆるブランドから出ている、ウエリントン型アイウエアですが、その原型となった‘50年代初頭の逸品がこちら。織太夫さんは、貴重なオリジナルの1stウエリントンを入手。さらにそっくりそのまま似せて作ったスペアのアイウエアを6本も!お持ちだそうです。
しかも前から見ると一見フツーのウエリントンに見えて、実はめがねフレームを黒セルと透明セルとを組み合わせている(横から見るとわかります)ド変態的なタイプをお持ちです。
いずれにしても「遠目ではフツー、近づくと超ストイック」という二面性を持つスタイルは、接近戦ですさまじい殺傷能力を発揮するキケンな着こなし、と言えます。うかつに近寄ってはケガしそう。
デニムジャケットはおそらく“リーバイス”の2NDモデル。これもオリジナルは‘50年代初頭に登場した銘品。イイ感じの経年変化で、身体にしっかりなじんでいます。
これに太夫さん大好物のモンキーパンツをあわせていますが、ブーツにふれるかふれないかという絶妙な丈は、あいかわらず一分のすきもありません。
中に着たネイビーTシャツは、米軍御用達の『アンダーシャツコットンサマー』。グリーンはマリンコーブス(海兵隊)、ホワイトはU.S.N(海軍)ですが、ここで織太夫さんが着ているネイビーは本来は存在しない色。織太夫さんの特注カラーなのでしょう。
チラリとのぞく青ベルトは、リュックと同じ『RACING ATELIER』のリボンベルト。リュックについている赤ベロと共に、ストイックな着こなしにほんのりと「お茶目な抜け感」を添えています(やるな~、これ。この抜け感があるから、ついつい「お友達になりたい」とか思っちゃうんですよね~。あぶないあぶない、ふれたらキケンでした)。
そして米軍のフィールドブーツは履き込んだ風情でありながら、見事な黒っぷり。クロームなめしは、使い込むと茶色やシルバーっぽくなってエイジングを楽しめないので、これは半年に一度、定期的に『Brift H』で黒く染め直しているからこそ、の色合い。さらに靴紐は従来の紐を30cmカットして紐の先をヴィンテージスティールでつぶしてあります。色の美しさと、靴紐をくるぶしにグルグルまかない潔さが、ガキどものミリタリーとは一線を画す必殺技です。
さらに…どうしても気になるのはこの『福禄寿』のソックス。ブーツの中でだぶつかないように、落ちてこないロングホーズ(ハイソックス)です。しかも白~ブルーのタイダイ柄。これは着ているデニムジャケットの着込んだ風情(経年変化)とそろえたのだと推察します。
以上、『和樂web』編集長の「勝手にファッション解説」でした。
これ以上やっていても終わらないので、今回はここまでにしておきます。
いや~、次回の織太夫さんは、どんなスタイルで現れるのかな~。気になって気になって、夜もおちおち眠れません。
取材・文/ 瓦谷登貴子
取材協力/ 学校法人甲南学園