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Art

2025.07.10

波の絵で有名な北斎に“美人”ばかり描いていた時代があった!?│浮世絵師・葛飾北斎を知るAtoZ【S】

約70年にわたって活躍した浮世絵師・葛飾北斎。ただひたすら絵を描くことに執着し続けた北斎の人生は、波乱万丈にして奇想天外! 破天荒な絵師・北斎の人生をAからZの26の単語でご紹介します。今回はS=【宗理(そうり)】。北斎の知られざる一面をご覧あれ!

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北斎AtoZ
S=【宗理】春朗から画号を改め、美人画に傾倒


寛政6(1794)年に勝川派を破門された北斎は、30歳になる翌年正月から「宗理」という新たな画号で作品を発表し始めています。

宗理とは、桃山時代末期に俵屋宗達(たわらやそうたつ)や本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)らによって形づくられ、江戸時代に尾形光琳(おがたこうりん)が私淑という形で画風を引き継いだ〝琳派〟に基づく画号。
琳派の絵画様式を目ざし〝俵屋〟と称した一門の頭領(とうりょう)が用いた名で、北斎が名乗った宗理が3代目になります。

錦絵にちゃっかりと美人を描き加え

浅草庵市人の序がある狂歌絵本『柳の糸』の一図。司馬江漢の「江の島図」から洋風表現を学んだことが、構図と山や波の描写から見て取れる。『江島春望(えのしましゅんぼう)』葛飾北斎 寛政9(1797)年 東京国立博物館 出典:ColBase (https://colbase.nich.go.jp)

その一方で、浮世絵とはまったく趣の異なる画派に転じた理由については、いまだ明らかになっていません。
しかし驚くべきは、襲名までわずか数か月で、二代宗理から教えられた作画様式を身につけてしまったことです。

勝川派の画風から脱し、長足の進歩を遂げる

独り立ちの美人画ではないが、女性のプロポーションの美しさには目を見張る。右下の署名が「宗理画」。『職人三十六番(しょくにんさんじゅうろくばん)』葛飾北斎 1802年 メトロポリタン美術館 The Metropolitan Museum of Art, The Howard Mansfield Collection, Purchase, Rogers Fund, 1936

それ以後、勝川派で描いていたような錦絵の作品はほとんど見られなくなり、当時流行していた狂歌の世界とのかかわりを深め、優美な狂歌絵本の挿絵や肉筆画といった分野に進出。またたく間に新境地を開拓していきました。

肉筆の浮世絵美人画も意欲的に

『Beauty (美人画)』葛飾北斎 江戸時代・18~19世紀 クリーブランド美術館 The Cleveland Museum of Art, Kelvin Smith Fund 1987.150

このころの画業で特筆されるのが、肉筆画による美人画で、その顔立ちは瓜の種のように白くて面長な瓜実顔(うりざねがお)で、日は小さく、おちょぼ口。背が高く、スラリとしたプロポーションで描かれた女性たちは「宗理美人」と称され、一時代を築きました。

希少価値が高い、宗理美人の大首絵

北斎には珍しい大首絵。宗理美人の錦絵の代表的名画。『風流無くてなゝくせ』葛飾北斎 1798年 メトロポリタン美術館 The Metropolitan Museum of Art, Rogers Fund, 1922
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和樂web編集部


構成/山本 毅 ※本記事は雑誌『和樂(2017年10・11月号)』の転載・再編集です。 アルファベットに用いた葛飾北斎の絵は、『戯作者考補遺』(部分) 木村黙老著 国本出版社 1935 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1874790 (参照 2025-06-04)
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