盆栽から着想を得た、“一から育てるデニム”
和樂web編集長・鈴木 深(以下、鈴木):今日は全身デニムな着こなしですね。
いつもはどこかにフェミニンなアイテムを投入して、さりげなくジェンダーレスな風情のスタイルが多いですが、今日はかなり男っぽいイメージです。

阿部顕嵐(以下、阿部):そうですね。
今日、お話を伺うのは盆栽の巨匠、小林國雄先生。盆栽は何十年と時間をかけていくと伺いました。そこからキーワードは「一から育てる」だと感じたんです。デニムはそれこそ、着る人が「育てていく」ものだと思うので、今日はこんな着こなしになりました。
小林國雄先生と対談した盆栽の記事はこちら
木の“死んだ部分”から、侘び寂びを表現…盆栽の奥深さを巨匠・小林國雄さんに聞いてみた。阿部顕嵐が語る「あらん限りの歴史愛」vol.25
鈴木:なるほど! 今日は「盆栽」に敬意を表したスタイルというわけですね。
まず気になるのは顕嵐さんのパンツです。“リーバイス501”のクラシックなシルエットですが、すでにダメージ感が出来上がっているというよりは、今まさしく顕嵐さん好みの風合いに育てているようにお見受けします。
阿部:はい。これは“リーバイス501 XX”のファーストタイプ。一番最初の(1890年)モデルの復刻版です。ノンウォッシュのタイプを買ってまだ3~4年で、色落ちもまだこれからですが、自分だけの形にしたくてずっと履いてます。
鈴木:最初からダメージの風合いが出来上がったデニムは簡単にかっこよさが手に入りますが、どこかチープ感が出てしまいます。さすが顕嵐さん、そんなお手軽なデニムスタイルとは一線を画しますね。
阿部:最初からダメージ加工されたデニムは僕だけのオリジナルとは言えません。
しわの入り方やこすれ方、剥げ具合など、自分でいちから育てていきたいんです。
――このとき、このやりとりを聞いていた取材先・小林國雄先生のお弟子さんが
「デニムも盆栽もヴィンテージに価値があるんです!」とコメント。
確かに。
鈴木:他にはない、自分だけのオリジナル感にこだわるからこそ、手間をかけて時間をかけてデニムを自分の好みに育て上げていくわけです。
これまでの連載での顕嵐さんのいろいろな着こなしを思い出せば、切れ味のいいシンプルなアイテムの上にウィメンズのコートをはおったり、全身黒のゆったりしたシルエットなスタイルにつばの大きな女性用ハットをかぶったり、まさしくオリジナルな着こなしを自由に楽しんでいました。
今回はそれとは違うアプローチで、「デニムのオリジナル感」を楽しんでいるのがよくわかります。思わず納得! 腑に落ちました。
マイケル・ジャクソンが履いていた上品なローファーを、Gジャンに合わせる面白さ
鈴木:そしてはおっているデニムジャケットは、これも“リーバイス”のファーストモデルですね。

阿部:はい、これもパンツに合わせて、ダメージ加工のされていないノンウォッシュタイプで、やはりファーストモデルの復刻版ジャケットです。
鈴木:この“リーバイス”のデニムジャケット、通称「ファースト」は、1936年に登場した「Gジャンの元祖」とも言われている大人気モデル。
上下で“リーバイス”ファーストモデルとなると、男くさいアメリカ臭がプンプンしそうですが、顕嵐さんの着こなしの印象はとても繊細です。
その秘密は小物合わせと着こなしシルエットにありそうですね。まずはパンツのシルエットですが、かなり長めにズルッと履いています。ついつい足元に目が行きますが、靴はまさかのローファーに白ソックスなんですね。

阿部:そうなんです。パンツ丈はかなり長めで、靴の上に大きなクッションができるくらいにしています。そうするとパンツのシルエットにモード感がでて、ワークウエアのイメージが払拭されます。
足元はごついブーツに流れるのではなく、あえてのローファー。しかもタッセルのついたおぼっちゃま風(マイケルジャクソンがステージで履いてたやつです!)をセレクトして、さらに白ソックスを合わせて奇麗めに仕上げました。ローファーはG.H.BASSのオーソドックスなものです。
名前の由来でもある、名優アラン・ドロンが愛用していたカルティエ
鈴木:アクセサリーについても教えてください。

阿部:ネックレスもブレスレットも、ネイティブアメリカンの定番アイテムが好きです。ベルトもシルバーでそろえました。時計はクラシックな雰囲気が気に入っている“ロレックス”のデイトナ。右手の薬指には2連リング。左手のピンキーリングはずっと大事にしている“カルティエ”のトリニティです。これは僕の名前の由来でもある、憧れの名優アラン・ドロンが愛用していたデザインなんです。
鈴木:なるほど!
手元も胸元もいろいろな個性がミックスされていますね。この自由なミックスぶりがアメリカ臭プンプンにならない秘訣だとわかりました!
阿部:今日お邪魔したのは盆栽の庭園でしたので、デニムであってもカジュアルになりすぎず、着こなしは「きちんと感」を意識しました。

今回取材を終えて、あらためて感心したのが顕嵐さん天性の着こなしバランスです。少しゆったりめのジャケットの手首をひと折してさりげなくアクセサリーを見せたり、ズルッと長めのパンツ丈で足元に大きなクッションをつくって全体のシルエットをモードによせたり、タフなデニムの上下にいたってベーシックな靴を合わせたり、そして仕上げは「何者?」と思わせるようなキャスケットの上品なかぶりかたです。
上下デニムでありながら、どこか無国籍感、かすかなジェンダーレス感、そして全身に漂うアーティスト感を自由に楽しんでいるのが、よくわかりました。
写真/篠原宏明
インタビュー・文/和樂web編集部
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