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2025.11.06

徹底検証! 京都みやげの定番「ちりめん山椒」の奥深い世界

旅の締めくくりは、その土地らしいお土産を買うことにあり。食の宝庫である京都には〝おいしい土産〟がありすぎますが、定番中の定番、専門店でもデパ地下でも土産物屋でも京都駅構内の売店でも買える「ちりめん山椒」を深掘りしました。好みの一品を見つけてください!

台所から生まれた「家庭の味」が、いつしか「京都の味」に

「ちりめんじゃこ」とは、鰯の稚魚(じゃこ)を釜茹でして乾燥させたものを言います。
釜揚げしたばかりのものを「釜揚げしらす」、少し乾燥させると「しらす」、さらに乾燥させたものが「ちりめんじゃこ」。
絹織物の縮緬(ちりめん)に見られるしぼ(細かい凹凸)を思わせるからこう呼ばれているとか。
京都の人は親しみを込めて「おじゃこさん」とも言います。

このちりめんじゃこと実山椒を合わせて炊いたものが「ちりめん山椒」(「じゃこ山椒」や「山椒ちりめん」とも)。
じゃこのうま味と醬油の香ばしさ、爽やかな辛みを伴う実山椒の風味がご飯のおともに抜群!

京都みやげの大定番「ちりめん山椒」ですが、京都の人にとっては「うちで炊くもんやし」という一品だったとか。
日もちさせるためよく乾燥させたちりめんじゃこは、九州など遠方からのもの。和歌山や高知、そして京都の美山町(みやまちょう)でも栽培される山椒は、青物屋の店先を飾る初夏の風物です。

家庭でつくるおばんざいのひとつであるこのちりめん山椒は、ご近所さんや訪問者などにお裾分けするものでした。それが京都名物となったのは、現在東山区の宮川町に本店を構える「はれま」がはじまりです。
料理人の晴間保雄(はれまやすお)さんが、娘が山椒農家から譲り受けてきた山椒の実とちりめんじゃこを炊いてみた…という家庭料理だったとか。
それを親しい人に配っていたところ評判になり、のちに家族がその味を受け継いで家の玄関先で売ったことが、商売としてのちりめん山椒の発祥といわれています。昭和46(1971)年のことでした。

その「はれま」で約20年間修業したのが、「たきもの ゑびす」の晴間茂さん。
2011年に独立し、2020年に現在の上七軒(かみしちけん)に店を移転させました。
「鰹節と昆布、数種類の醬油を合わせた調味液で炊きますが、炊きあがった残りのだし醬油がうちの味の決め手になります」
じゃこのエキスが出たこの注ぎ足しだし醬油は、しばらく寝かせてから使うとか。
「ちりめん山椒が広まってからは、各家庭でもつくっていたと思います。実を摘んで枝から外すのは大変です。昭和のお母さんたちの手はよく働いたものですね」
「たきもの ゑびす」では実山椒を丁寧にあく抜きして使いますが、それでも「じゃまくさいです(笑)」と晴間さん。
おじゃこと実山椒が京都を代表する味のひとつになったのは、じゃまくさい(面倒くさい)ほど丁寧につくられているからなのです。

ちりめん山椒はこんなふうにつくられます

1(左)/九州産の小さなちりめんじゃこと、和歌山産の粒が大きいぶどう山椒を使用。2(右)/ふわっと手で混ぜ合わせたら、調味液が沸いた鍋へ。

3(左)/大きな木べらで混ぜながら3分ほど炊く。4(右)/ざるにあげて完成。大きいの小さいの、いろいろです。残った調味液がだし醬油となり、次の出番をしばらく待つことに。

取材にうかがったのは上七軒の「たきもの ゑびす」

北野天満宮の東側、お茶屋が並ぶ上七軒の一角に店を構える。「チリメン山椒」のほか、山椒ではなく塩ふき昆布入りの「咖喱(カレー)チリメン」も。「チリメン山椒」(45g)918円。

ご主人の晴間茂さん(左)と製造担当の梅原さん。炊き場の暑さにめげない作業で「おじゃこのうま味がたっぷりです!」

●たきもの ゑびす
住所:京都市上京区今出川通七本松西入真盛町743-1 
電話:075-464-0110
営業時間:11時~17時
休み:水曜
公式サイト:https://www.takimono-yebisu.jp/

※本記事は雑誌『和樂(2025年10・11月号)』の転載です。
※掲載価格はすべて税込です。
※価格や営業時間などは2025年10月現在のもので、変更される場合もありますので、あらかじめ公式サイトなどでご確認ください。
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和樂web編集部


撮影/伊藤 信 構成/小竹智子、鈴木智恵(本誌)
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