Craftsmanship

2026.07.07

【101年目の民藝】「変わらないもの。これからも続いていくもの」もやい工藝店主・久野さんに伺う民藝の原点とは

「民藝」という言葉が生まれて100年の節目として、展覧会やイベントで盛り上がった2025年。101年目となる今、民藝はどこへ向かっているのでしょうか。新しい“何か”を探しに、民藝の現場を訪ねてきました。しめくくりは、鎌倉の工芸店「もやい工藝」の店主である、久野民樹さんのお話です。

「101年目の民藝は“変わらないもの。これからも続いていくもの”」(久野民樹さん)

ものごころついたときから、父(『もやい工藝』を設立した故・久野恵一さん)が全国を巡って集めたものたちと一緒に育ったので、「民藝」という言葉を意識したことはなく、自分にとってはいつもそこにあるもので、好きでも嫌いでもなかったんです。
ところが父が急逝し、まったく違う分野で働いていた私が、突然継ぐことを決断してしまいました。

各地でものを見たり、本を読んだりして学び直したのはそれからです。
たとえば、小鹿田焼(おんたやき)のうつわは、小さいころにつくり手さんたち(今は故人)に遊んでもらったこともあって、特に身近に感じていたものです。
あたりまえのように使っていましたが、古今を問わずいろいろなものを見たり、現場を見て回ると、「民藝」が無意識のうちに自分の感覚に染み込んでいることを実感しました。

長野・松本民芸家具の創業者・池田三四郎が製作したニセアカシアの椅子(生産終了品)には、岩手・蟻川工房のノッティングが。大皿は沖縄・金城次郎(きんじょうじろう)さん。すべて久野さんの父、恵一さんの愛用品。

民藝は、特別な人によって研ぎ澄まされたものではなく、普通に暮らす人々の手で、歴史とともに積み上げられてきた方法によってつくられてきたもの。
101年目を迎えてもその原点は変わらないと思います。
名声やブランドといったきらびやかなラベルはなくても、確かな安心感が宿っている。
情報過多な現代、そういうところが人々の共感を呼んでいるのかもしれません。

端正な手提げかごは鹿児島・尾崎利一(おざきりいち)さん(故人)作。無名だが、鹿児島の竹細工名人だった尾崎さんのかごは美しい編み上がりと、実用に耐える強さを併せもつ。「もやい工藝」久野さん宅で撮影。

今回、「101年目の民藝ってなんだと思いますか?」と聞かれて思い出したのは「民藝とは、つくられた道具のなかで美しいもののことです」という父の文章です。
大量生産・大量消費の先に求められるのはそういったものでしょう。
私がそうであったように、これからの世代の人にも、静かに浸透していくのではないでしょうか。

101年目も、民藝は「変わらないもの。そして、これからも続いていくもの」だと思います。(久野さん談)

「つくられた道具のなかで美しいもの。次世代にも静かに浸透していくのでは」(久野さん)

左/秋田・横手市であけび蔓細工を製作する中川原信一(なかがわらしんいち)さんの丸平かごは、美しい編み地と丸みが愛おしい。「あけび蔓丸平かご」25,300円。
右/藤田歩(ふじたあゆみ)「ノッティング」Sサイズ 23,500円。

左/シャープかつ優美な造形が印象的な沖縄の焼きもの「渡名喜瓶(となきびん)」は、やちむんの道具のひとつで祭祀用の酒瓶。読谷山焼北窯(よみたんざんやききたがま)・松田共司(まつきょうし)さん作。「渡名喜瓶」14,300円。
中/読谷山焼北窯 松田共司作「やちむん 唐草紋7寸皿」5,720円。
右/琉球ガラスの歴史が育んできたアイテムのひとつ、沖縄・奥原(おくはら)硝子製造所の名作「ペリカンピッチャー」。独特な注ぎ口は氷や中に入れたフルーツなどをとどめる役割も。「ペリカンピッチャー」12,650円

大分・小鹿田焼 坂本浩二(さかもとこうじ)窯の紅茶碗皿と、秋田・中川原信一さんのあけび蔓のかご。テーブルランナーは、新潟・長岡で制作する佐藤多香子(さとうたかこ)さんの裂織(さきおり)。すべて「もやい工藝」の先代・久野恵一さんの愛用品。久野さんのご自宅で撮影。

久野民樹さんprofile

くの・たみじゅ 1981年生まれ。2015年、鎌倉の工芸店「もやい工藝」の2代目に。現在は「もやい工藝」のほか、東京・三鷹で工芸店「手しごと」も営む。

●もやい工藝 DATA

住所:神奈川県鎌倉市佐助2-1-10
電話:0467-22-1822
営業時間:10時〜17時
休み:火曜(祝日除く)
公式サイト:https://moyaikogei.jp/

※本記事は雑誌『和樂(2026年6・7月号)』の転載です。
※掲載している価格は、すべて税込価格です。
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和樂web編集部


撮影/鈴木静華 構成/田中美保、鈴木智恵(和樂)
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