ただいま「御城印(ごじょういん)」集めがブームのきざし。といっても、「御城印って何?」という方が多いかもしれませんね。
御城印とは、日本国内の城を訪れた際に1枚数百円で購入できる、いわば御朱印のお城版。現在では、津々浦々約200城もの城で購入することができ、配布枚数に限りがある限定御城印だと、それを求めて長蛇の列ができるほどの人気があります。
今回は、今注目の御城印について概要を紹介しましょう。
配布する城が増えたのはつい最近
御城印を初めて提供し始めたのは、現存する最古の五重天守を持つ国宝・松本城(長野県)とされています。それは30年ほど前で、当時は御城印という一般的な名称はなく、「天守登閣記念朱印符」と名づけられていました。今も松本城管理事務所で、1枚300円で入手することができます。
これほど前から御城印を提供していた城は少なく、増え始めたのはここ数年のことです。大きな理由は、御朱印集めがブームとなり、これを目的の1つして神社仏閣を訪れる人が増えたこと。これにならい、観光客誘致の一環として御城印をデザインし販売する城が方々で出てきました。
そして令和への改元を機に、御城印の提供を始める城が急増。正しい数は不明ですが、2018年暮れには70城前後に達し、2019年後半には200城に届こうとしています。この中には、天守閣を備えた、「お城」と聞いて想像するような城ばかりでなく、石垣などの遺構があるだけの「城跡」も数多く含まれています。
一例を挙げると、以下は三原城(広島県)の御城印です。
三原城は、戦国時代には小早川隆景によって整備が進められ、当時は瀬戸内海の水運をおさえる海城として威容を誇りました。今は三原城跡歴史公園として本丸中門跡の石垣などが遺っており、国指定史跡そして続日本百名城の1城として知られます。
ここが御城印の提供を始めたのは、2019年11月。後発でありながらそのデザインは、他の大半の御城印と同様、オーソドックスなものです。つまり、寺社の御朱印と同サイズの用紙に、幾つかの朱印(花押や家紋)が捺され、城名が大きく墨書されています。販売価格は300円。
「城跡なのに、どこで入手できるのか?」という疑問があると思いますが、JR三原駅構内にある「うきしろロビー観光案内所」で手に入れることができます。城跡や規模の小さな城の御城印は、そばの観光案内所や博物館で入手できることが多いので、城に行かれる際は公式サイトなどで事前にチェックしておく必要があります。
収集欲をそそる仕掛けと工夫が続々
昔は朱印を押すだけであったお寺の御朱印が、ブームが到来したことで、イラストが入ったり、カラフルになったりなど、さまざまな工夫が凝らされたものが増えました。それと同じように御城印も、城好きの収集欲をそそる仕掛けが盛り込まれたものが出始めています。
例えば、上田市、沼田市、水上町、東吾妻町の長野・群馬4市町は、真田氏ゆかりの上田城、沼田城、名胡桃(なぐるみ)城、岩櫃(いわびつ)城の全御城印を集めると、「真田領四城攻城記念御城印」を無料で配布するというキャンペーンを行っています。こう言われたら、是が非でも4城をコンプリートしたくなりますね。
また、御朱印を収める御朱印帳があるように、御城印専用の「御城印帳」も何種類か出ています。実はほとんどの御城印は、既に用紙に印刷済みのものが提供されるので、既存の御朱印帳をそのまま使うのは不便。そのため、御城印帳は透明のポケットホルダーに入れる、あるいは開きやすい蛇腹式で、そこに糊やテープで貼り付ける形式が主です。
実際に御城印をもらいに登城
自分は根っからの城好きというわけでなく、姫路城と大阪城しか訪れたことがありません。ですが、御城印の存在を知ってから俄然城に興味が湧き、機会があればどこかへの城へ赴き、御城印も入手してみたいと思っていました。
その最初の機会は小田原城(神奈川県)。新デザインの枚数限定の御城印が配布されると聞き、早朝から1時間ほど行列に並んで入手しました。この御城印はあまりの人気で、1週間くらいで在庫がなくなったそうです。
そしてこのたび訪れたのが、勝龍寺城(京都府)。廃城となって久しく、跡形もなかったのが、発掘調査を経て1992年に復元されたものです。
この城は、織田信長が家臣の細川藤孝に命じて作らせたもので、京都の防御拠点の1つとしての役割がありました。築城から何年かして、藤孝の長男の細川忠興(ただおき)は、明智光秀の娘の玉(たま)と結婚し、二人はこの城で新婚時代を過ごします。
しかし蜜月は、長くは続きませんでした。光秀が主君の信長を討ち、その直後の山崎の戦で、光秀は勝龍寺城の近くに陣を構えますが、羽柴秀吉軍に敗北し没してしまいます。玉は、逆臣の娘ということで、丹後国の地に幽閉。やがて細川家の屋敷のある大坂に移りますが、キリスト教に目覚め、ガラシャと洗礼名を受けます。勝龍寺城は、江戸時代に山城長岡藩主の居城となりますが、間もなく廃城となりました。
このように勝龍寺城は、明智光秀、細川忠興・ガラシャゆかりの城として、多くの人が訪ねる場所となっています。
御城印の話に戻りますが、勝龍寺城の御城印は、実はここでは配布していません。長岡京市観光情報センターなど3か所で求めることができます。
JRで来たのであれば、長岡京駅そばの長岡京市観光情報センターが便利です。受付の人に「御城印をください」と言えば、地元飲食店のクーポンと一緒にすぐに手渡してくれます。
下の写真が勝龍寺城の御城印です。これとは別に、細川藤孝の書状から書き起こした限定版が毎月第2日曜日に販売されているそうです。
城は、16万寺社あるという神社仏閣に比べれば数は少なく、おいそれと方々を巡るのは難しいかと思います。ですが、御城印集めは、まとまった休日をとって何か所かの城を訪れるモチベーションになることでしょう。城に興味のある方は、御城印集めにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
勝龍寺城 基本情報
住所: 京都府長岡京市勝竜寺13-1
電話: 075-955-9515(長岡京市役所商工観光課)
時間: 9:00~17:00(4~10月は18:00分まで)
休館日:12月28日~1月4日
観覧料:無料
御城印の販売場所:長岡京市観光情報センター(JR長岡京駅西口バンビオ1番館2階)、長岡京市観光案内所(阪急長岡天神駅西口)、長岡京@Navi(阪急西山天王山駅東口)