INTOJAPAN

MENU
若冲水墨画

ART

若冲は水墨画も凄かった!「寿老人・孔雀・菊図」で徹底検証してみました。

様々な様式に独自の美意識を表現した伊藤若冲。「動植綵絵」「鳥獣花木図屏風」「仙人掌群鶏図障壁画」など、数多くの名作を描いています。ド派手な超絶技巧ばかりが目立つ若冲ですが、実は若冲の想像力と技術の高さが融合されているのが水墨画。そこで水墨の名作の一つ、水墨画「寿老人・孔雀・菊図」から若冲の驚きの筆力に迫ります。

繊細かつ大胆な筆さばきが沍える水墨画「寿老人・孔雀・菊図」

丹念に綿密に描かれた超絶技法の彩色画とともに、自由で遊び心に溢れた水墨画もまた若冲の絵の魅力を端的に表すものです。

このように自由な表現ができたのも、若冲が作画の師につかず、ほとんど独学で絵を追求したからにほかなりません。狩野派などの画派に属していると、手本に忠実に描くことが求められて、自由な表現にトライするなど論外。しかし、若冲は無党派。思いつく限りのアイディアを実行し、絵師として自由に冒険することができたのです。

特に水墨画に関しては、即興で描くことが多かったとされ、そのため若冲独自のテクニックやユーモアに満ちた作品がいくつも見られます。ことに、老境に差しかかり、斗米菴(とべいあん)という号を用いるようになったころには、その名のとおり米と水墨画を交換するために、たくさんの作品を残しています。

若冲水墨画「寿老人・孔雀・菊図」 紙本墨画三幅 各110.1×29.4㎝ 江戸時代・宝暦(1751~1764年)中~後期 千葉市美術館

そんな若冲の水墨画の魅力を体現しているのが「寿老人・孔雀・菊図」です。三幅対で描かれた構図の面白さはもとより、伸びやかでいて巧みな筆致や、デフォルメを極めた寿老人の姿などは、絵師として脂が乗り切っていたことを感じさせて余りあるほどです。

若冲水墨画

中でも注目したいのが、クジャクの首から胴、菊の花弁の描き方。若冲はそこに筋目描きというテクニックを用いています。

筋目描きとは、中国でつくられた吸湿性が強くて墨がにじみやすい画仙紙という書画用の紙の特性を生かした、若冲オリジナルの技法。画仙紙ににじんで広がる墨は決して混ざり合うことがなく、乾くと境界に白い筋目が残るのです。

この筋目描きは、即興の場で大いにもてはやされ、やがて若冲の水墨画の最大の特徴となり、多用されるようになりました。何気なく描いているようで、実は卓越した技巧に裏打ちされた水墨画は、若冲の技量の高さを物語るものでもあるのです。

緩急自在に筆を操り、驚異の技術もさりげなく

若冲水墨画

濃、中、淡の3段階の濃さの墨を用いて描いた水墨画は、ただ単に大胆で勢いがあるだけでなく、筋目描きなどの繊細な描写が配されていて、ドラマチックな世界が描き上げられています。

若冲の水墨画の筆力がわかる!3つのポイント

1.にじみ
筋目描きの技法で浮かび上がった繊細な花弁

若冲水墨画

たとえば琳派の「たらし込み」のように、若冲が画派に属さず流派にとらわれなかったからこそ編み出し得た技法に、墨と紙の特性を生かした筋目描きがあります。ひと筆ずつ墨をのせながら、乾いたところで線が浮き出てくるという描き方は偶然性に左右される部分が少なくありません。しかも、優れた画力がもとめられるとあって、ほかの絵師には敬遠されていたとか。それがかえって若冲の水墨画を際立てる結果となったのです。

2.カリカチュア
簡潔な線で特徴を表現する表現力

若冲水墨画

人物の特徴を誇張して描くことをカリカチュアといいます。このカリカチュアのテクニックを、若冲は即興的に描いた水墨画にたびたび用いていて、ユーモラスな味わいのある作風のポイントとなっています。

寿老人は別名、福禄寿。はげて上に伸びた頭頂部に特徴がある七福神の神さまも、若冲の手にかかるとこんな姿に。それでいて、寿老人であることがなんとなくわかるのですから、若冲の描写力には驚かされるばかり。

3.筆勢
即興性を重んじ、自在に筆を操った結果

若冲水墨画

丁寧に慎重に筆を運んだ彩色画と違って、若冲の水墨画は即興性を重んじていました。それはすなわち書き直しや修正がきかないことであり、見事な筆勢を示した水墨画を見ると、思いきりよく筆を運んでいた若冲の姿が思い浮かびます。

しかも画題の特徴を見事にとらえ、味わい深く仕上げているところは若冲ならでは。軽やかに見える水墨画は、実は若冲の画力の凄さを代弁するもの。優れたユーモアのセンスも見事の一語です。

あわせて読みたい

最新の記事