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美の都・京都で出合う うるわし、工藝

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2026.04.24

お腹が空くほどリアルで楽しい「美を味わう一懐石のうつわと茶の湯」 【静嘉堂@丸の内】

お茶会の器の美しさと、懐石を食べてお茶を喫する喜びに溢れた展覧会が始まりました。静嘉堂@丸の内の「美を味わう― 懐石のうつわと茶の湯」展です。6月14日まで開催。

三菱第二代社長岩﨑彌之助とその息子小彌太が蒐集(しゅうしゅう)した東洋古美術品、およそ6500点を所蔵している静嘉堂文庫美術館。有数の茶人として知られた彼らの卓越した茶道具を展示する企画は様々あったものの、同じく茶会に登場する「懐石のうつわ」を中心に取り上げる展示は、意外なことに美術館開館以来初だそうです。

改めて懐石とは?

懐石(かいせき)とは、正式な茶会である茶事の中で、抹茶を喫する前に出される、もてなしの料理のこと。お茶会と聞くと、抹茶を菓子と共にいただく場面を思い浮かべがちですが、そのような濃茶・薄茶をおいしく味わう前の懐石の時間もとても大事。岩﨑家のお茶会では、どのような器を使ってどのようなお料理でおもてなしをしたのかが、今回まざまざと伝わってきました。

展示する器に料理を盛った!

お腹が空いてくるほどライブ感に満ちた展示が実現したのは、美術館による大胆な工夫があったから。今、目の前に展示されているこの器たちに、懐石で振る舞われるであろうお料理を実際に作って盛り付けてみたそうなのです!その盛り付けの写真と、お料理の名前と、作品が一緒に展示してあるので、器として使われたときの作品の魅力が五感にバリバリ響いてきました。その様子をいくつかご紹介したいと思います。

貝形の向付には何を乗せる?

「向付(むこうづけ)」は、懐石の最初に出される器で、膳の上で飯椀、汁椀の「向こう側」に置かれる器です。盛られた料理をいただいた後も取り皿として用いるため、幾度も手に取られて間近に鑑賞されます。今回特にこの向付の展示が充実していました。まずは《古染付海老文貝形向付(こそめつけえびもんかいがたむこうづけ)》。海老の絵が描いてあるので、「甘エビのお刺身でも盛ったのかな?」くらいの発想でいると、いえいえ、そんな単純なものではございませんでした(笑)。

《古染付海老文貝形向付》 景徳鎮窯 十客 中国・明時代(十七世紀前半)

作品の後方に、「さよりと赤貝 真砂和え(まさごあえ) 山葵(わさび)」という盛り付け写真が飾ってありました。

魚卵のプチプチをまとった赤貝の淡いオレンジ色と山葵(わさび)の緑をバックに、「さより」の透明感のある白が上品。貝の形にぴったりな魚介料理です。
「お酒に合いそうだなぁ」と思って見ていると、瓜型や金襴手(きんらんで)の洒落た銚子が出てきました。
やった! 懐石では、食事とともに、積極的にお酒が振る舞われるのですね。

《祥瑞写松竹梅文瓜形銚子》 永樂保全 日本・江戸時代(十九世紀)

《金襴手雲龍文銚子》 永楽和全 日本・江戸〜明治時代(十九世紀)

舟形の向付も活躍

舟の形をした可愛らしい向付も登場。何をどうやって盛るのでしょう?

《鋳絵舟形向付》 日本・江戸時代(十八世紀)

「鱧(はも)湯引 梅肉 花穂(かすい) 山葵」が麗しく盛られていました。器と同系色の鱧が品よく積み上げられ、紫蘇の花の紫がワンポイントとなって粋です。初夏に舟遊びをしながら食べてみたい!

派手な鉢に乗せる料理は?

焼き物などを乗せる「鉢」も豪華です。《織部草花文角鉢(おりべそうかもんかくばち)》は、緑色の釉薬と草花の模様が華やか。これは、白身のカレイでも乗せるのかな? と思いきや……。

《織部草花文角鉢》日本・桃山〜江戸時代(十七世紀前半)

「ます塩焼 木の芽酢」が盛られていました。なるほど! 緑色の補色となる赤身の「ます」を持ってきて、よりインパクトを出したのですね。「ます」にかけてある木の芽酢がまた緑色で、釉薬の緑色と共鳴する心憎い演出。山椒のピリリも「ます」を引き立てて美味しそうです。

野々村仁清による珍しい鉢

今回最も印象に刻まれたのは、江戸時代の陶工である野々村仁清による《白釉輪花透し鉢》でした。野々村仁清は、仁和寺(にんなじ)門前に御室(おむろ)窯を開き、華麗な色絵作品を焼いたことで知られています。仁清の作品として食器類は少ないものの、水玉や菊花形の透しを入れた向付や鉢が数点知られているそうです。《白釉輪花透し鉢》は、花びら型の輪状の透かし彫りがなんてエレガントなんでしょう。

《白釉輪花透し鉢》野々村仁清 江戸時代(17世紀)

何を盛り付けて出すのかしら? 会場に答えはありませんでした。私だったら、お花の天ぷらを乗せたいかな。去年庭で咲いたズッキーニの黄色い花を天ぷらにしたらとてもおいしかったので、それがいいかもしれません。

ズッキーニの花を揚げて作った天ぷら(2025年)

豊臣秀吉ゆかりの茶道具がすごい!

さて、懐石をいただき、空腹が和らぎ、心身が整ったところで、抹茶を喫する時間がやってきます。展示室 Gallery 4は「懐石から茶へ―千利休と豊臣秀吉ゆかりの茶道具」となり、懐石の後の茶席をイメージした展示となっています。大坂夏の陣で大破したものの、塗師・藤重父子の見事な修理を経て今日の姿に甦った茶入が眼に入ってきました。それは信長から秀吉、徳川家康と天下人の手中にあったことでも知られる《唐物茄子茶入(からものなすちゃいれ)》。国宝《曜変天目(ようへんてんもく)(稲葉天目)》など名品揃いですのでお見逃しなきよう!

《唐物茄子茶入 付藻茄子》 南宋~元時代(13 ~ 14世紀)前期展示

国宝 《曜変天目(稲葉天目)》建窯 南宋時代(12~13世紀) 通期展示

展覧会基本情報

タイトル:美を味わう ― 懐石のうつわと茶の湯」
会期:2026年4月7日~6月14日
会場:静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)
住所:東京都千代田区丸の内2-1−1 明治生命館1階
開館時間:10:00~17:00(第4水曜日の4月22日、5月27日は〜20:00、6月12日、13日は〜19:00)(入館は閉館30分前まで)
休館日:月、5月7日(ただし 5月4日は開館)
観覧料:一般 1500円 / 大高生 1000円 / 中学生以下 無料
URL:https://www.seikado.or.jp

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菊池 麻衣子

アート&グルメライター。日本で社会学、イギリスの大学院で映画論とアートを学ぶ。「人生は総合芸術だ!」と確信し、「おいしく、楽しく、美しく」をテーマにアートとして生きる(笑)。そんなアートライフに、無くてはならないのが美食と美酒。独特な美学と文化を発信するアートなグルメ体験をシェアします!
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※『和樂』2026年4・5月号 美術展カレンダーに誤りがありました。P.224で紹介しました、福岡県・久留米市美術館で開催中の「美の新地平ー石橋財団アーティゾン美術館のいま」の入館料は、正しくは一般1,500円となります。お詫びして訂正いたします。
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