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2026.10.27

太田記念美術館の展覧会「葛飾応為『吉原格子先之図』夜景の系譜」をキュレーターがご案内!

最新の展覧会情報を網羅した、『和樂』本誌の連載企画「全国厳選! 美術展カレンダー」。人気コラム「和樂提携美術館キュレーターの“イチオシ!”展覧会」では、太田記念美術館で12月6日まで開催されている「葛飾応為(かつしかおうい)『吉原格子先之図(よしわらこうしさきのず)』夜景の系譜」をご紹介。展覧会名にある応為の人気作品をはじめ、“夜景”を表わした多彩な錦絵が一堂に会します。この展覧会の見どころを、担当キュレーターに教えてもらいました。

太田記念美術館 ~12/6「葛飾応為『吉原格子先之図』夜景の系譜」

私が担当します
太田記念美術館 上席学芸員 赤木美智(あかぎみち)さん


専門は江戸の絵画史。著書に『美人画で味わう 江戸の浮世絵おしゃれ図鑑』などがある。

応為の名品とともに情緒あふれる夜景表現をお楽しみください(赤木さん)

葛飾北斎(かつしかほくさい)の娘、応為の貴重な肉筆画『吉原格子先之図』が3年ぶりに展示される、注目の展覧会。

「『次はいつ見られますか』とお問い合わせをいただくことも多い、当館の所蔵品のなかでも非常に人気の高い作品です。
そもそも応為の作品というのが、残っているものがすごく少ないなかで、この『吉原格子先之図』は、彼女の持ち味である光と影の表現が特に印象的な、代表作といっていい存在だと思います。
一見、遊廓の情景を写実的に描いているようですが、歴史的に検証してみると、正確なわけではないようなんですね。
光と影の関係性も同じくで、たとえば画面中央左、女性と子供がそれぞれ灯(あか)りを持っていますが、光源がふたつもあるのだから、格子の奥の遊女の顔には光が当たっているはず。それなのに、真っ黒に描かれている。
おそらく応為は、『夜の遊廓』がもつイメージを突き詰め、誇張して、観る者の想像力を搔き立てる物語を絵に込めたのではないかと思います。
単なる風俗画ではない、なんとも言えない情緒を感じますよね」

今回はこの個性的な名画を軸に、「夜景」をテーマにして、鈴木春信(すずきはるのぶ)から明治時代末ごろまでの浮世絵版画を紹介します。

「夜景を描いた作品は、明和2(1765)年に錦絵が登場したころから少しずつ増えていきます。多色摺(たしょくずり)によって色の表現が広がったこともきっかけになったと思います。
1830年代に入って発色のいいベロ藍が使われるようになると、グラデーション表現が進化します。そこで頭角を現したのが歌川広重(うたがわひろしげ)。夜景を量産していきます。
そして、明治初期になると、小林清親(こばやしきよちか)が西洋絵画の陰影表現を踏まえた光線画(こうせんが)と呼ばれる作品で人気を集めます」

夜景を描いたものは、海外向けのお土産品としても人気でした。

「現代を生きる私たちが見ても郷愁を覚える、日本ならではの夜景表現をたっぷりご覧ください」

応為の傑作肉筆画からノスタルジックな版画まで

Curator’s Eye|“正確”ではないけれど、だからこそ“リアル”!

光と闇で描き出す遊廓の姿

葛飾応為 『吉原格子先之図』 紙本着色 1幅 26.3×39.4cm 文政~安政(1818〜1860年)ごろ 太田記念美術館

「葛飾北斎の三女、応為は、晩年の北斎の代作を手がけていたと考えられていますが、本人の作品は稀少。なかでも本作は、陰影表現が非常に印象的で、人気があります。紙に描かれており、実際に見るとその質感にもなんとも言えない味わいがあって、いつまでも見入ってしまいます」

Curator’s Eye|夜空はどんな色だったでしょう?

当時はもっと青かった!

鳥居清長 『大川端楼上の月見』 大判錦絵3枚続 天明(1781~89年)後期ごろ 太田記念美術館【後期展示:11月7日~】

「隅田川近くにある料理茶屋で、スラリと美しい女性たちがお月見の準備中。対岸には満月が浮かんでいます。鳥居清長(とりいきよなが)のころは、青は植物性の染料だったので、空の色はすでに退色していますが、当時は暮れきる前の空が美しい青で表現されていたのではと想像します」

Curator’s Eye|広重の夜景、今回多めに展示されています

広重ブルーで夜景を量産!

歌川広重 『名所江戸百景 猿わか町よるの景』 大判錦絵 安政3(1856)年9月 太田記念美術館【前期展示:~11月3日】

「ベロ藍(プルシアンブルー)が日本に伝わったことで、浮世絵の表現は大きく飛躍しました。なかでも広重は、ベロ藍によるグラデーションを生かして夜景を量産します。江戸はもちろん、京都や大阪、日本各地の夜景を描いています」

Curator’s Eye|縦長の画面を生かしたドラマチックな構図も魅力

幻想的な雰囲気が郷愁を誘う

小林清親 『開化之東京 両国橋之図』 絹本着色 1幅 114.3×36.2cm 明治中後期(1877~1909年)ごろ 太田記念美術館【前期展示:~11月3日】

「小林清親の肉筆光線画。両国橋とそこを行き交う人々、隅田川を渡る船と船頭の姿が、空の薄明かりや家の窓の明かりに黒いシルエットとなって浮かび上がります。構図が似る、イギリスの画家、ホイッスラーの油彩画からの影響が指摘されています」

Curator’s Eye|9点しか確認されていない謎の絵師も紹介

作者も作品もミステリアス!

小倉柳村 『湯島之景』 大判錦絵 明治13(1880)年 太田記念美術館【前期展示:~11月3日】

「小倉柳村(おぐらりゅうそん)は明治の絵師ですが、活動時期はたった2年、確認されている作品も9点しかない、謎の人物です。石段の上から町を見下ろすふたりの男性。月明かりと人工の光の対比にも味わいが」

太田記念美術館 DATA(和樂提携美術館)

住所:東京都渋谷区神宮前1-10-10
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:30~17:30 ※入館は17:00まで。
休館日:月曜日(ただし月曜日が祝日の場合は開館、翌日休館)、展示替え期間、年末年始
公式サイト:https://www.ukiyoe-ota-muse.jp/

◆『和樂』「全国厳選! 美術展カレンダー」とは?

『和樂』本誌では、発売期間中に全国で行われている展覧会を、作品情報とともに紹介しています。掲載しているのは全国の著名な美術館・博物館。お目当ての展覧会を見に、また旅先での美術館巡りなどで、ぜひともご活用いただきたい【和樂 提携美術館】の優待券を毎号お届けしています! 詳細は本誌でご確認ください。

【和樂 提携美術館】

山形「土門拳写真美術館」、茨城「笠間日動美術館」「徳川ミュージアム」、群馬「原美術館ARC」、千葉「千葉市美術館」、東京「永青文庫」「太田記念美術館」「菊池寛実記念 智美術館 ※11月13日まで展示室修繕のため休館」「五島美術館」「サントリー美術館」「泉屋博古館東京」「東京ステーションギャラリー」「パナソニック汐留美術館」「三井記念美術館」「三菱一号館美術館」「森美術館」「山種美術館」、神奈川「岡田美術館」「川崎浮世絵ギャラリー ~斎藤文夫コレクション~」「ポーラ美術館」、長野「軽井沢千住博美術館」「サンリツ服部美術館」「日本浮世絵博物館」、静岡「MOA美術館」、京都「泉屋博古館」「福田美術館」「細見美術館」、奈良「松伯美術館」「大和文華館」、和歌山「高野山霊宝館」、兵庫「芦屋市立美術博物館」、島根「足立美術館」(都道府県別・五十音順)

※本記事は雑誌『和樂(2026年10・11月号)』の転載です。

 

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和樂web編集部


構成/剣持亜弥、鈴木智恵(和樂)
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