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2019.12.13

甲冑モチーフのサムライバッグ「NAOMASA」が超クール!プロデュースは京人形伝統工芸士の三宅啓介さん

この記事を書いた人

戦国武将というと、立派な鎧を装着して先陣を切って指揮を取ったイメージがあります。そんな凛々しい戦士の身を守る甲冑を、モチーフにしたバッグがあるのをご存知ですか?スタイリッシュで斬新なデザインが評判を呼び、日本国内だけでなく海外でも人気が広がっています。

その名もサムライバッグ!!

甲冑鞄=サムライバッグ。そしてこのリュック型バッグには「NAOMASA」の名前が。戦国武将ファンならわかりますね!そう、徳川家康に仕えた名将、井伊直政からのネーミングです。NHK大河ドラマ「女城主直虎」では、人気俳優菅田将暉が演じていたのが記憶に新しいことでしょう。このバッグで通勤したら、周囲の注目を集めそうですね!

プロデュースは京人形伝統工芸士だった!!

このサムライバッグ誕生のお話が聞きたくて、京都府宇治市にある工房とショールームを訪ねました。プロデュースしているのは、京人形伝統工芸士の三宅啓介さんです。父の三宅玄祥さんは、京都府伝統産業優秀技術者「京の名工」で、叙勲「瑞宝単光章」受章の名高い京人形司。親子で京人形の伝統を守ってきました。「20年ぐらい前から、少子化や住宅事情の変化もあって、雛人形や五月人形の需要が低迷してきて、先行きに不安を感じるようになったんです」と三宅さんは率直に話します。連綿と受け継がれてきた技術を絶やしたくないと、応用した商品が作れないかと考えたそうです。

三宅啓介さん (C)SABURO YONEYAMA(Signal)

手始めに五月人形と同じ手順でストラップを作ったところ、武将たちの活躍するアクションゲーム「戦国BASARA」の影響もあって好反応が得られました。そこで和雑貨が売れると考えて、「甲冑の技術を応用して革製のパソコンケースが作れないか」とひらめいたそうです。デザインからパーツの製作、組み立てまで全て1人で行い、試行錯誤を繰り返しますが、商品化までには結びつきません。4年もの年月が経過した中、行政の協力でパリと上海の展示会で出典のオファーが舞い込みます。「何とかしなければいけないと思って、相談に乗ってもらった中小企業基盤整備機構近畿本部からの紹介でエントリーしたお蔭で掴んだチャンスでした」。

最初の挑戦だったストラップ

伝統の技とデザインとのコラボレーション

この海外での展示会の出展によって、商品開発が急速に進みます。紹介された工業デザイナーからは、海外でも評価されるためにと、甲冑の伝統的な紐の結び目ではなくもっとシンプルな形で、プレートも革ではなく金属がいいと具体的な提案がされたといいます。京都の伝統工芸士という高い技術を持つ職人として葛藤はなかったのかと、つい不躾な質問をぶつけてしまいました。「鞄作りは全く初めてのことなので、抵抗はなかったですよ。信頼している人から『職人は自分の技術を見せたがるが、技術を全面に出すのではなく、皆が商品を手にとってくれるようなデザインを優先するべきだ』とアドバイスを受けていたのも大きいですね」。その後、1点ずつ作りながら改良を重ねていき、海外のホテルや国内の有名百貨店などで展示販売を行い、徐々に認知されていきました。2019年9月からは大阪城の敷地内にある複合施設、「ミライザ大阪城」で常設販売を行っています。

(C)SABURO YONEYAMA(Signal)

年齢や性別を選ばない甲冑の赤と黒の魅力

武士が身につけた甲冑は、刀や銃などの攻撃から見を守りました。サムライバッグは、金属や皮革の板状のパーツを紐で編み込み、繋ぎ合わせてシート状の素材にして鞄に加工しています。この外装をすることで、内容物を保護する意味合いもあるようです。甲冑が赤と黒を使用していたことから、サムライバッグのラインナップも赤と黒の2色。20代の男性から80代の高齢の女性と幅広い年齢層の人達から支持をされています。「男性が和装の時に持つのに便利だと言ってくれたり、ずっと海外のブランドバッグを持っていた女性が気に入ってくれたりと、コアな戦国時代が好きな人がユーザーかと思ったら、そんなことはなくて、多くの人が使ってくれるのが嬉しいですね」。このバッグを海外の出張で持っていったら、現地で注目されて嬉しかったというコメントを伝えてくれたお客様もいたそうです。

2020年にふさわしいこのバッグは、「MITSUHIDE」。金属プレート面の片面仕様になっています。ちなみに「NOBUNAGA」は、金属プレート面が両面仕様。明智光秀が謀反を起こしたことから、裏と表で違う2面性がある洒落と、織田信長は天下統一を目指していたからとか。遊び心を感じますね。

同じデザインで赤色もあります。

こちらは「CHACHA」。パーティの主役になれそう!

使ってくれる人の思いが込もる商品の、品質を落としたくない

本業はあくまでも京人形の伝統工芸士と話す三宅さん。「雛人形や五月人形を作る時には、子どもの成長を祈る両親や祖父母の思いを託すツールとして作業をします。ですから、品質を落としたくないという気持ちは強いですね」。京都では分業で技術を守ってきた歴史があり、雛人形に使われる色鮮やかな衣装は、西陣織が使われています。この精神はサムライバッグにも活きていて、紐は京都の組紐屋に特注で用意してもらった紐を使い、バッグの横の部分は京都の鞄メーカーが手縫いで仕上げたりと、丁寧な手仕事にこだわっています。「元々の目的が技術を残したいという思いで始めてますから、大量生産は目指していません。長く気に入って使ってもらいたいですし、このバッグをきっかけに雛人形や五月人形にも興味を持ってくれる人が増えたら嬉しいですね」。

京人形み彌け製作の五月人形と雛人形。雛人形は天皇皇后両陛下の黄櫨染御袍束帯と、十二単のお着物を再現した「御即位礼のお雛様」

京人形み彌け基本情報

住所:京都府宇治市小倉町南堀池103ー53
営業時間:10時~19時(12月~4月)10時~18時(10時~18時)
電話番号:0774-22-5008
サムライバッグ公式ウェブサイト

書いた人

幼い頃より舞台芸術に親しみながら育つ。一時勘違いして舞台女優を目指すが、挫折。育児雑誌や外国人向け雑誌、古民家保存雑誌などに参加。能、狂言、文楽、歌舞伎、上方落語をこよなく愛す。十五代目片岡仁左衛門ラブ。ずっと浮世離れしていると言われ続けていて、多分一生直らないと諦めている。