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書、画、工芸でも才能を発揮!
魯山人は20代の初めに書の才能で注目されるようになり、20代の終わりには書や篆刻で生計を立てるようになっていました。それから、陶芸や絵画、工芸へと手を広げていくことになるのですが、それらはすべて「星岡茶寮」で客人をもてなす必要に迫られて始めたこと。
用途に応じた作品を自ら手がけるようになった魯山人は、書に通じる一流の才能をあらゆる分野でいかんなく発揮し、優れた作品を数多く残しています。
書においては、代表作である『いろは屛風 』をはじめ、扁額や染付でもその粋を味わうことができます。
魯山人は師について絵画を学んだことはないのですが、古美術や古い陶器に囲まれて暮らしている間に鑑賞眼を身につけ、独自に研究。乾山を手本にした琳派風の作品や、書と画を同居させた文人画などののびやかな作品は、専門の画家にはない魅力を放っています。
そして、工芸品では、使う立場から考えてつくられたものが多く見られます。
庭を美しく彩る行燈や、汁物を入れてこそ美しい塗の椀などを見ていると、魯山人が食を供する空間を何よりも大切に考え、知恵を絞っていたことをうかがい知ることができます。
これも魯山人の作だった!
琳派の美意識を継承
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日本美の究極の目利きだった!
魯山人が本格的に作陶に携わったのは、40歳を過ぎてから。陶芸家としては遅いスタートですが、魯山人は一切の妥協を許すことなく、熱心に古陶器や古美術を研究して確かな目を培っていたことから、先人に倣った見事な作品を次々に生み出すことができたのです。
魯山人が手がけた陶芸のジャンルは、有名な織部をはじめ、黄瀬戸や瀬戸、伊賀、染付、金銀彩、色絵など多種多様。自分が美しいと思ったものを分け隔てなく、率先して取り入れていくことができたのは、確かな目利きであったからにほかなりません。
もしも魯山人が従来の陶芸家の姿勢を踏襲していたら、このように自由に、たくさんの作品をつくり上げることは難しかったことでしょう。そこがまた、魯山人の特徴であり、魅力にもつながっているのです。
傲慢であったことを伝えるエピソードには事欠かず、敵対する人が多かったことから、ネガティブにとらえられるケースが少なくなかった魯山人ですが、昨今は再評価が進んでいて、その作品はMoMA(ニューヨーク近代美術館)にも所蔵されているほど。究極の目利きは、世界的な評価を受けているのです。
料理が引き立つものをつくる!
温故知新の心意気!
構成/山本毅、吉川純(本誌)※本記事は雑誌『和樂(2020年4・5月号)』の転載です。
シリーズ「魯山人の魅力」
「魯山人の魅力」シリーズ。下記リンクより他の記事もぜひお楽しみください!