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汁椀も自分好みのものに買い替え。「まずは飯碗を漆器に」
大量生産で安価な〝せともの〟が出回る江戸中期までは、漆器をはじめ木のうつわで飯も汁も食べてきた日本人。「やっぱり食事は漆椀がいい」と髙森さんが確信する理由とそのつくり手とは?
漆椀の形も進化しています
「ふだん用に正直につくられた漆椀であれば、素地は天然木。木製のうつわは熱を伝えにくいので、炊き立てのごはんを温かいまま口にすることができます。また木が適度に蒸気を吸収するのでベチャッとなりません。さらには漆の深みのある色が白いごはんを美味しそうに引き立ててくれる。汁椀よりも飯椀のほうが違いがわかりやすいんでしょう。『いつものごはんがこんなに美味しくなるなんて!』とお客様も喜んでくださいます」
そんな髙森さんが信頼する飯椀・汁椀のつくり手のひとりが福田敏雄さん。輪島塗の下地を習得した上で、輪島塗伝統の本堅地(ほんかたじ)という手法をとらず、漆を木地(きじ)に塗り重ねることで強度をもたせています。そのため価格も控えめ、つやも抑え、色も形も飽きがこない。食卓の上で主張しすぎず、ふだん使いに最適と髙森さんが太鼓判を押します。
「色と塗りの違いもふくめれば、約100種そろう福田椀ですね」
福田さんが最初につくった飯椀の形
飯椀の基本形を端反(はぞ)りにしたのは福田さんの好み。髙森さんも「汁椀と並べることを考えると飯椀はこの形がしっくりくるのね」と同意。
髙森寬子 たかもり・ひろこ
エッセイスト。婦人雑誌の編集者を経て、日本にあるさまざまな生活道具のつくり手と使い手をつなぐ試みを行う。東京・小石川の「スペースたかもり」を主宰し、漆の日常食器を主体に、年に5~6回の企画展を開催。著書に『美しい日本の道具たち』(晶文社)、『心地いい日本の道具』(亜紀書房)などがある。髙森さんの写真は著書『85歳現役、暮らしの中心は台所』より。
右の写真/ちらし寿司、炊き込みごはん、どんぶりなど盛り込む料理によって飯椀を使い分けている髙森さん。白飯に代表される、気どりのない食事の日はおのずと福田さんの飯椀に手が伸びるそう。
初春展「普段使いの漆の器/安比塗と輪島の漆」開催のお知らせ
2024年1月1日に発生した「令和6年 能登半島地震」により、髙森さんと交流がある輪島の作り手さんも皆被災されました。現在は作品完成の目途が立たない状況ですが、ギャラリーで輪島の作品を若干預かっていました。そこで今年初春の企画展は、少しでも応援につながるよう、当初予定していた安比塗(あっぴぬり)に輪島の作り手さん作品を加えて開催されます。
期間:2月16日(金)~3月2日(土)の金・土曜のみ開廊
時間:12時~18時(最終日は16時まで)
場所:スペースたかもり(東京都文京区小石川5-3-15 一幸庵ビル3階 ※企画展開催時のみ開廊)
電話:03-3817-0654
撮影/長谷川 潤 構成/藤田 優、後藤淳美(本誌)
※本記事は雑誌『和樂(2023年2・3月号)』の転載です。
※掲載商品の価格は2024年1月現在のもので、税込価格です。
※すべて手づくりのため、売り切れや、価格が変更になる場合があります。
※サイズはおおよその目安です。
■商品の問い合わせ先:「スペースたかもり」電話・ファックス:03-3817-0654 メール:space-t@ab.auone-net.jp