CATEGORY

最新号紹介

10,11月号2024.08.30発売

大人だけが知っている!「静寂の京都」

閉じる

Craftsmanship

2024.09.25

情報にとらわれず、ただ美しいと思えるものを。民藝の原点を今も守る名店【民藝の息づく街を訪ねて・盛岡編その2】

民藝の息づく街を訪ねるシリーズ盛岡編、第2回は、今も民藝の原点を守り続ける名店「光原社」です。

「民藝の息づく街を訪ねて」シリーズ一覧はこちら

盛岡の「光原社」が今の時代でもなお名店であり続ける理由

左/中庭には、鉄のオブジェや大皿など、国内外の装飾があしらわれている。楽しいしつらえに囲まれながら、ひと休み。右/「光原社」向かいの「モーリオ」に並ぶのは、東北の民藝が中心。素朴な風合いにホッとする、会津のくるみ手提かご(参考商品)

店内に並んでいるのは、長くおつきあいのある作家や工房の作品が中心ですが、そのセレクト基準は、「どんな時代でも、いいものと思えるもの」。
それはつまり、産地や歴史、つくり手の名前にこだわらず、使いやすくて奇をてらわないデザインであるということ。また、日用品として使える価格であることです。

作家や工房が有名になり、一流ブランド化してしまうのは現代の民藝における矛盾ですが、名声や情報にとらわれず、素直に美しいと感じ、つくり手の姿勢に共感するものを選ぶ――。
それはまさに、民藝の原点ではないでしょうか。

また、柳宗悦の言葉にもある「健康で美しいもの」であることも、大事にしている点。つまり、作家や職人が作品をつくり続けていく中で、ムダが削ぎ落とされ、必然的に出てくる美しさ。
その清々しさを「健康」と呼ぶならば、民藝のあり方を守り続け、つくり手の思いを届けている「光原社」こそが、「健康で美しい店」と、いえるのかもしれません。

作家の思いが詰まったうつわに普段の生活が満たされて

左/秋田で作陶する中嶋健一の灰釉切立(きったち)鉢(参考商品)。店内のディスプレイには、随所に季節を感じさせる工夫があしらわれている。右/岩手の作家・小田中耕一の型染のれん(雨ニモマケズ 参考商品)は、宮澤賢治と深く関わる「光原社」における、象徴的な商品。

近ごろは、家にいる時間が長くなった人も多いと思います。そういった生活の中で、たとえば鉄瓶で湯を沸かしてみたら、いつものコーヒーが、さらにおいしく感じられて――。
民藝を通して、今まで気づかなかった小さな楽しみに、気づくことができそうです。

世の中の、たくさんのものが便利になっている時代において、「光原社」が提案するのは、少しだけ手間をかけることで愛着が生まれる、暮らしの道具たち。
そういったものを使っていくと、ゆっくり考える時間が増え、やがてそれが喜びに変わるのです。心に余裕が生まれたとき、素朴な美しさに気づいていただきたい――。
そう願って「光原社」は、今日も店を開けているのです。

中/「光原社」から通りを挟んであるのが別館の「モーリオ」。盛岡をはじめとする東北民藝や食品なども販売している。右/中庭にある喫茶室「可否館(こーひーかん)」は、取材時は休業中だったが、営業を再開。ていねいに淹れるオリジナルブレンドにファンも多い。

【店舗情報】光原社

こうげんしゃ
住所:岩手県盛岡市材木町2-18 
電話:019-622-2894
営業時間:10時~18時(冬期~17時30分)
休み;毎月15日(土・日曜、祝日の場合は翌平日休) 
※「モーリオ」「可否館」も同じ。

撮影/篠原宏明 構成/湯口かおり
※本記事は雑誌『和樂(2021~2022年12・1月号)』の転載です。
※表示価格はすべて税込価格です。掲載商品には1点ものや数量が限られているものがあり、取材時期から時間がたっていることから、在庫がない場合もあります。そのため、掲載商品の在庫がないもの、価格変更の可能性があるものは、「参考商品」と表記しています。※営業時間や休みなどが変更になっている場合があります。お出かけの前に最新情報を確認してください。

Share

和樂web編集部

おすすめの記事

かわいい日本建築を探して西へ! 大阪、京都で民藝をめぐる旅

和樂web編集部

タウトも柳宗悦も注目した東北農民の文化とは?【東京ステーションギャラリー】

浮世離れマスターズ つあお&まいこ

この発想はなかった!京都・茶筒の老舗「開化堂」×Panasonicのワイヤレススピーカー!?

和樂web編集部

これは買いたい! 産地が生んだニッポンのいいもの12選

和樂web編集部

人気記事ランキング

最新号紹介

10,11月号2024.08.30発売

大人だけが知っている!「静寂の京都」

※和樂本誌ならびに和樂webに関するお問い合わせはこちら
※小学館が雑誌『和樂』およびWEBサイト『和樂web』にて運営しているInstagramの公式アカウントは「@warakumagazine」のみになります。
和樂webのロゴや名称、公式アカウントの投稿を無断使用しプレゼント企画などを行っている類似アカウントがございますが、弊社とは一切関係ないのでご注意ください。
類似アカウントから不審なDM(プレゼント当選告知)などを受け取った際は、記載されたURLにはアクセスせずDM自体を削除していただくようお願いいたします。
また被害防止のため、同アカウントのブロックをお願いいたします。

関連メディア