プライベートな声や音は、できるだけ聞かれたくないもの。それが性行為ともなると、聞くことも聞かれることもほとんどないでしょう。
しかし、江戸時代の吉原では「割床(わりどこ)」といって、屏風一枚隔てただけの大部屋で何組ものお客と遊女が行為に勤しんでいたのだとか。
現代では考えられない「割床」システムと、江戸時代における性行為のプライバシーについてご紹介します!
大部屋を屏風で仕切った「割床」システム
吉原は、幕府に公認された妓楼(性的サービスを行う場所)です。他の遊郭と比べ格式高く、洗練された美女が多いことで、観光地としても人気がありました。
そんないわゆる「高級」とされる吉原でも、サービスを受ける場所は個室とは限りませんでした。位の高い遊女以外は個室を持っていないことが多く、性行為を行うのは「割床」と呼ばれる大部屋。お隣とは屏風一枚隔てただけなので、当然声は筒抜けです。
割床では、そのプライバシーのなさからさまざまなトラブルが起こりました。
割床トラブルその1:間違って別の寝床に入る
客がトイレなどで席を外して戻ってくる際、大部屋ではどこが自分の寝床だったかわからなくなってしまいます。お酒も飲んでいればなおさらでしょう。
そのため、自分の寝床を間違える客が続出しました。屏風を開けると見知らぬ客が真っ最中! そんなときは「これは粗相」と言って退散したのだそうです。
割床トラブルその2:遊女が来なくて悶々と過ごす
遊女は「廻し」と言って、同じ時間帯に複数の客をとる「ダブルブッキング」をすることもありました。複数の客を行ったり来たりすれば、当然忘れられる客・時間や体力がなくて相手にされない客も発生します。
遊女が部屋に来ないことを「ふられる」と言ったそうですが、屏風一枚隔てたお隣では行為の真っ最中。これではまさに蛇の生殺し! 高いお金を払ったのに、悶々とした思いを募らせるだけの不毛な時間を過ごした客が、イライラして暴れたり文句をつけたりすることも多かったことでしょう。
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プライバシーという概念は新しい?
割床は吉原に限らず、他の遊郭でも一般的でした。また、江戸時代は長屋という共同住宅に住んでいる人が多く、現代のような防音性もなかったでしょう。このようなことから、そもそもプライバシーという概念すらなかったと想像されます。
それは江戸時代に限りません。平安時代は几帳という薄い布一枚隔てただけだったり、大名や将軍なら行為中に複数の付き人が侍っていたりすることもありました。
性行為は快楽を求めるものだったり、愛を確かめ合うものだったり、その目的は人によってさまざまです。しかし、本来は子どもをつくるための大切な行為。もしかしたら、過度に隠し恥ずかしがることではないのかもしれません。
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