Culture
2022.05.26

ルーツは疫病除け?京都「祇園祭」歴史や豆知識を3分で解説

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京都の夏の風物詩、祇園祭(ぎおんまつり)。2022年は、感染対策を徹底しつつ、祭りの目玉となる山鉾巡行(やまほこじゅんこう)を3年ぶりに開催する方針が発表されました(2022年5月現在)。もともとは疫病除け祈願のために始まったとされる祇園祭の歴史をひもといてみましょう。

疫病をなんとかしたいという想いは、今も昔も変わらないのですね。

祇園祭は1カ月続く八坂神社の祭り

祇園祭は、八坂神社(やさかじんじゃ、京都市東山区祇園)に伝わる夏の祭礼です。

広重『諸国名所百景 京都祇園祭礼』 国立国会図書館デジタルコレクション

毎年7月1日、祭りの無事を祈願する最初の神事「吉符入り(きっぷいり)」から、31日の「疫神社夏越祭(なごしさい)」という締めくくりの行事まで、1カ月にわたって行われます。

長~~い!!

最大の見せ場となるのが、さまざまな装飾が施された山鉾の巡行。真木とよばれる木(松)が立っている「山(やま)」と、金属製の依り代が立っている「鉾(ほこ)」を総称して「山鉾(やまほこ)」と呼びます。

先頭に並ぶのが「長刀鉾(なぎなたほこ)」。鉾先きに疫病邪悪を祓う大長刀をつけているためこのように呼ばれる。長刀鉾は毎年必ず巡行の先頭に立つ
『皇都祇園祭礼四條河原之涼』五雲亭貞秀,貞秀 国立国会図書館デジタルコレクションより

昭和40年以前は神幸祭と還幸祭が別の日程で行われ、神幸祭を前祭、還幸祭を後祭といい、それぞれ担当の山鉾に分かれていましたが、昭和41年に統合されてから巡行は7月17日のみになりました。
しかし、近年再度前祭後祭に分けて催されるようになり、先祭りは10日~鉾建て、17日巡行、後祭りは18日鉾建て、24日巡行となっています。前祭には長刀鉾、月鉾、函谷鉾、菊水鉾など、後祭は南・北観音山、大船鉾などが見られます。

ユネスコの無形文化遺産に

山鉾巡行を見ようと毎回大勢の人が集まります。山鉾巡行の順番は「くじとり式」で決まります。これは500年以上も昔の応仁の乱以降に始まったことなのだとか。先陣争いを避けるためにできた独自の行事と、伝えられています。

そんな昔から!!

このように、独自の伝統文化に彩られた祇園祭。2009年、「京都祇園祭の山鉾行事」としてユネスコの無形文化遺産に単独で登録され、2016年には日本各地の山車の巡行を中心とした祭礼行事33件を取りまとめた「山・鉾・屋台行事」の一つに含まれる形で、改めて登録されました。

祇園祭の歴史は平安時代から

祇園祭の歴史をたどれば、さすが古都・京都だけあって、ルーツは平安時代までさかのぼります。869年、全国で疫病が流行したため、八坂神社の主祭神である素戔嗚尊(すさのおのみこと、牛頭天王<ごずてんのう>とも称する)の祟りであるとして、勅命により全国の国数に準じて鉾66本を立て疫病退散を祈ったことが始まりとされています。しかしながら、これとは別の説もあり、詳しいことはわかっていません。

病気の原因となるウイルスや細菌などが知られていなかった時代には、「疫病は悪霊のしわざである」「疫病退散のために祭りを執り行う」などと考えられていたわけです。

目に見えない敵と戦う怖さは、今も昔も一緒だなぁ。

アイキャッチ画像:
『諸国名所百景 京都祇園祭礼』 国立国会図書館デジタルコレクション

主な参考文献:
デジタル版『国史大辞典』
デジタル版『日本大百科全書(ニッポニカ)』
デジタル版『角川類語新辞典』
公益財団法人祇園祭山鉾連合