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蔦重AtoZ
Q=「QCD」を先取りして、ヒットを連発!
現在、製造業やシステム開発で注目されているのが「Quality(品質)」、「Cost(コスト)」、「Delivery(納期)」の頭文字を並べた「QCD」。品質保持を図りつつ、コストと納期を客の要求や現場の対応力によって変化させる方法。この最先端の「QCD」を蔦重は江戸時代にすでに実践していたのです。
豪華本は絵の質にこだわり、世相をタイムリーに皮肉る黄表紙はスピード勝負。品質、価格、時間とタイミングに対するバランスが、多数のヒット作につながった。つまり、蔦重の成功の裏にはQCDの実践があったと考えられるのです。
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「機を見るに敏」そのもの!
主人公がいろいろな珍商売を始め、いずれも失敗に終わる黄表紙『本樹真猿浮気噺(もときにまさるうわさばなし)』。蔦重が初めてストーリーを作った黄表紙で、最終ページ(画像下)の右下には「蔦唐丸自作」の文字が。
11代将軍家斉と松平定信を茶化して大ヒット!
世間の不満を代弁するような内容の黄表紙を、人気作家・朋誠堂喜三二(ほうせいどう きさんじ)に依頼し、短時間で出版して大ヒット! しかし、実は上級武士であった喜三二は秋田藩主より執筆を禁止され、創作活動から離れることを余儀なくされる。
喜三二に続いて恋川春町も大ヒットを記録!
朋誠堂喜三二と同じく、武士でありながら戯作や狂歌に携わってきた恋川春町。『文武二道万石通』の執筆後に喜三二が断筆せざるを得なくなったことを受け、恋川春町が続編を受け持つことに。前作をしのぐ人気を得たが、松平定信に呼び出された春町はその後間もなく死亡。事件か自死か、真相はいまだ闇の中。