Culture

2025.04.09

えっ、あの巨匠も!? 蔦重が見出した5人の有名人。大河ドラマ「べらぼう」を100倍楽しむAtoZ【R】

吉原に生まれ、自力で江戸の〝メディア王〟となった男・蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)の仕事からプライベートまでを、AからZで始まる26の項目で解説するシリーズ【大河ドラマ「べらぼう」を100倍楽しむAtoZ】。今回は「R=流行作家発掘の名伯楽」をご紹介します! Zまで毎日更新中! 明日もお楽しみに。

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蔦重AtoZ
R=流行作家を若いうちに見出していた名伯楽(めいはくらく)


歌麿や写楽を売り出してスター絵師に育てた蔦重は、若き日の北尾政美(きたおまさよし=鍬形蕙斎〈くわがたけいさい〉)や葛飾北斎(かつしかほくさい)にも仕事を依頼していました。

その眼力は絵師の発掘にとどまらず、有能な新人作家を見出すことでも超一流。代表的な存在が山東京伝(さんとうきょうでん)です。

盟友だった戯作者・山東京伝

人の心を読み取る話で、左上で講釈(こうしゃく)しているのが、京伝が扮した心学(しんがく)先生。『人心鏡写絵(ひとごころかがみのうつしえ)』  作/山東京伝 画/北尾重政 黄表紙 寛政8(1796)年 国立国会図書館デジタルコレクション

江戸深川(ふかがわ)生まれの京伝は、若いうちから吉原で遊び、浮世絵師を目ざして北尾重政(しげまさ)の門弟となり、政演(まさのぶ)の名で独立。
蔦屋の黄表紙の絵を描くかたわら、文章の執筆も手がけ、蔦重と組んで黄表紙や、遊郭を舞台にした洒落本(しゃれぼん)で一時代を築きました。

関連記事:山東京伝とは? 重い処罰を受け、吉原を愛したマルチクリエイターの生涯

蔦重の居候でもあった十返舎一九

蔦重にすすめられて書いた黄表紙3作のひとつで、飛躍のきっかけとなった。『心学時計草(しんがくとけいぐさ)』 十返舎一九 黄表紙 寛政7(1795)年 国立国会図書館デジタルコレクション

駿河国(するがのくに=静岡県)の下級武士の子であった十返舎一九(じっぺんしゃいっく) も蔦重のもとで修業時代を過ごし、蔦屋耕書堂の仕事を手伝ううちに作家となり、めきめき頭角を現したひとり。

巨匠となる前の滝沢馬琴は蔦重のもとで修業

『南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん)』『椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)』という大ヒット作を手がけた滝沢(曲亭)馬琴は蔦重が育てたといっても過言ではない。『北国順礼縁記(ほっこくじゅんれいえんぎ)』 曲亭馬琴 画・北尾重政 寛政9(1797)年 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/9893114 (参照 2025-03-23)

もうひとりが、江戸深川の下級武士の家に生まれた曲亭馬琴(きょくていばきん)。
若いころに父を亡くして生活苦に陥り、弟子入りを願った山東京伝に蔦重を紹介されています。
そうして生真面目(きまじめ)な努力家の馬琴は、蔦重のもとで人気作家への地歩(ちほ)を固めていったのです。

蔦重が見出した才能はほかにも・・・
かわいい動物画で知られる鍬形蕙斎

鍬形蕙斎は北尾政美を名乗っていた早い時期に蔦重のもとで絵を描いていました。鍬形蕙斎と改名した後に手がけたゾウやトラなどの略画が今注目を集めています。

『鳥獣略画式』 鍬形蕙斎 絵手本 絵手本 寛政9(1797)年 メトロポリタン美術館 The Metropolitan Museum of Art. Purchase, Mary and James G. Wallach Foundation Gift, 2013, 2013.771

あの葛飾北斎も駆け出し時代に世話になっていた!

『冨嶽三十六景』『北斎漫画』などで世界的に有名な葛飾北斎。数多くの画号を用いていたが、蔦重のもとでは北斎辰政と名乗っていました。これは江戸の名所を紹介するガイドブック的な本で、掲載したページには神田明神が描かれています。

『東都名所一覧』坤 北斎辰政(葛飾北斎) 寛政12(1800)年 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1286834 (参照 2025-03-23)

アイキャッチ画像:『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)』メトロポリタン美術館蔵

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和樂web編集部


構成/山本 毅 ※本記事は雑誌『和樂(2025年2・3月号)』の転載です。 参考文献/『歴史人 別冊』2023年12月号増刊(ABCアーク)、『蔦屋重三郎と江戸文化を創った13人 歌麿にも写楽にも仕掛人がいた!』車浮代著(PHP研究所)、『これ1冊でわかる! 蔦屋重三郎と江戸文化』伊藤賀一著(Gakken)
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