Delvaux表参道ヒルズで優雅な幕開け
イベントは、表参道ヒルズにある「Delvaux 表参道ヒルズ」でスタート。Delvauxは、1829年創業のベルギー王室御用達メゾンであり、世界最古のラグジュアリーレザーグッズブランドとして知られています。参加者は、ブリュッセルと東京の架け橋をイメージして設計された、洗練された空間の中で、メゾンの歴史とクラフツマンシップの魅力に触れながら、数々のコレクションなどを堪能しました。
特に、この日は5月に発売予定の新作コレクションを特別に先行公開。遊び心に満ちたディテールと職人技が光るバッグや小物の数々が紹介されました。Delvauxの上質な世界観に触れた後は、専用バスで次なる目的地・文京区のKOISHIKAWA XROSSへと移動しました。
幻の若冲作品を現代で堪能
19時からのメインイベントでは、TOPPANが最新技術を駆使して開設した「デジタル文化財ミュージアム KOISHIKAWA XROSS®」に会場を移動。同所では、伊藤若冲の幻の大作「釈迦十六羅漢図屏風」のデジタル推定復元作品(写真下)が披露されました。
制作 TOPPAN株式会社
監修 山下裕二(明治学院大学教授) 荒井経(東京藝術大学教授)
この作品は、現在では焼失した可能性が高いとされるもので、残された数少ない資料であるモノクロの図版をもとに復元したもの。若冲の特徴の一つでもある「枡目描き」で描かれたこの作品を復元するため、12万もの枡一つひとつを再構築。1枡の大きさから色彩、図像を推定するとともに、特殊な印刷技術を用いて、立体感や質感までも忠実に再現したといいます。見る者を圧倒するスケールと精緻な再現度に、参加者たちは息を呑んで見入っていました。
また、KOISHIKAWA XROSSの施設自体も体験ツアーで堪能。中でも、全長20m、高さ5mのLEDカーブビジョンと床面・壁面へのイマーシブ投影で体験する映像など、多角的な視覚体験を可能にする先進的な空間設計は、“文化財を体感する”ための新たなプラットフォームとして「茶炉音(サロン)・ド・和樂」のメンバーにも大きな驚きを与えていました。
豪華ゲストによる講演とトークセッション
今回のイベントをさらに特別なものにしたのが、二人の著名な美術史家による講演とトークセッションでしょう。初めに登壇したのは、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品復元プロジェクトなどにも携わる池上英洋氏(東京造形大学教授。写真下)。西洋美術と東洋美術、それぞれの復元の在り方や意義を比較しながら、デジタル技術がもたらす新しい美術作品復元の可能性について語りました。
続いて、本復元プロジェクトの監修者であり、日本美術史の第一人者である山下裕二氏(明治学院大学教授)が登壇。若冲作品の歴史的背景や、その芸術的意義について詳細に解説しました。
その後の二人のトークセッションでは、山下氏と池上氏による軽快かつ知的な対話が展開。広島県の同じ高校を卒業したという”同郷”の二人による思い出話も織り交ぜながら、和やかな雰囲気の中で、ふだんはなかなか聞けない美術作品の復元の裏側や、美術にかける情熱に触れていました。
シャンパーニュと共に味わう“知の宴”
トークセッションのお供として振る舞われたのは、1829年創業の名門シャンパーニュ・メゾン「Bollinger(ボランジェ)」の逸品。英国王室御用達として140年にわたり愛され続けるその味わいは、まさに本イベントにふさわしい“文化とクラフトマンシップの象徴”といえるものでした。シャンパーニュ・ボランジェ アンバサダー新保知彦氏のプレゼンテーションも行われ、泡のきらめきとともに、参加者の心にも特別な記憶が刻まれたことでしょう。
“文化財を観る”から“体感する”へ——そんな時代の到来を実感させる今回の「KOISHIKAWA XROSS体験ツアー」は、日本文化の奥深さと最新技術の融合が生み出す、新たな感動のかたちを参加者に届けました。これからも『和樂』および『和樂web』は、「茶炉音(サロン)・ド・和樂」の皆さまと共に、伝統と革新が交錯する日本文化の魅力を発信し続けます。今後のイベントにもぜひご期待ください。