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染める!織る!女性きもの作家の工房を訪ねて
四季があり、豊かな自然があるこの国では、古来、実にさまざまな染めと織りの技法が育まれ、伝えられてきました。
絣(かすり)、型染(かたぞめ)、染織(せんしょく)――。いつかそでを通してみたくなる、心ときめくきものをつくる注目の女性作家の仕事と作品を拝見しに、工房へ。
彼女たちは、何を思い、どこを見つめて、きものをつくるのか。その手仕事には、それぞれの人柄や人生があらわれていました。
津田千枝子さん「型染」
それだけで十分に美しい布と、自分の染めが響き合うように
型彫(かたほり)、糊置(のりおき)、色差(いろさし)といった、昔ながらの技法でつくられる津田千枝子(つだちえこ)さん の型染(かたぞめ)。
懐かしさと新しさが混じり合うその文様と色は、大人の女性の乙女心を強く揺さぶります。
「作品づくりは、生地を選ぶことからはじまります。私が使う生地は、糸の段階から人の手の〝つくる力〟がこもった天然素材。それだけで十分に美しいものばかりです。その生地がもつ魅力を損なうことなく、一体感をもった布になるように心がけて、表面に模様をつけるのが、私の仕事」
津田さんのその言葉どおり、工房の一角の棚には、日本、インド、中国、ラオス、フィリピン、ミャンマーといった世界各地の手仕事の布がぎっしりと詰まっています。
ほとんどが生成(きなり)のそれらの生地は、糸の種類も太さも、布の色も風合いも異なって、実に個性豊か。
「これだ! と思う生地に出合ったら、とにかく手に入れておきます。だから私は、いつでも白生地(しろきじ)貧乏なんですよ」
自由な発想とらわれない技法でつくりあげる文様
きもの作家のほとんどが、弟子入りや工房で働く経験を通して仕事を身につけるのとは違い、津田さんには〝修業〟の経験がありません。顔料(がんりょう)の使い方の基本を習得したのは、藝大で日本画を専攻した学生時代。技術は、興味をもったり、必要になったとき、その都度、教えてくれる場所や職人を探して身につけていきました。
津田千枝子さんの作品と出合うには
KATAZOME CHIEKO TSUDA https://chiekotsuda.com/
撮影/篠原宏明 構成/氷川まり子 ※本記事は雑誌『和樂(2015年11月号)』の転載です。