メゾンの真髄を語る二大ウォッチコレクション
■「トンダ PF」コレクション
マニュファクチュールの美学をピュアなデザインで表現
メゾンのウォッチメイキングの理念である「プライベート・ラグジュアリー」を、最もシンプルに、それでいながらエレガントに体現している「トンダ」。その名前の由来は、イタリア語で円形を意味する「トンド」で、ルネサンス期の画家が大作を描く円形のキャンバスがこう呼ばれていました。
「この丸形の文字盤は、メゾンの美学をいろいろな角度から描き出すための、いわば未使用のキャンバスのようなものです」というミシェル・パルミジャーニ氏の言葉どおり、時分のみを表示する「二針(にしん)時計」から、ストップウォッチ機構を備える「クロノグラフ」、そして「トゥールビヨン」といった非常に高度な複雑機構を搭載したコンプリケーションまで、実に豊富なバリエーションを展開しています。
多くのモデルの文字盤には、メゾンを象徴する「バーリーコーン(麦の穂)」モチーフのギョウシェ装飾が施され、その繊細な色彩とともに唯一無二の表情に。手元にさりげなく洗練をもたらします。
■「トリック」コレクション
メゾン創業と同時に誕生したクラシカルモダンウォッチの傑作
ミシェル・パルミジャーニ氏が初めて設計を手がけた腕時計であり、1996年の創業と同時に発表されたのが「トリック」。クリエイションのモチーフは、古代ギリシャの建築様式を象徴する「ドーリア式」の柱で、建築にも造詣(ぞうけい)が深いパルミジャーニ氏の知識や知性をデザインに投影。オリジナルモデルのベゼルに施された2種類の伝統的な手彫り装飾で表現されていました。
そんなエポックメイキングなクリエイションに再解釈が加えられ、モダンに進化したのは2024年のこと。エレガントでタイムレスな美しさはそのままに、クラシカルな重厚感をほどよく引き算。シンプルに研ぎ澄まされた文字盤には、新たに「PF」のロゴをあしらったオーバルモチーフの装飾が加えられました。また、色彩を単なる後づけの装飾ではなく、造形との一貫性を追求し続けるメゾンの美学が投影された色使いも、なんとも洒脱。どこか〝和〟の趣も漂い、静寂でありながら強い個性を手元に授けます。


天才時計師が手がけたメゾン、30年の歩みと未来
修復不可能とされていた希少なアンティークウォッチの数々を甦(よみがえ)らせ、〝神の手をもつ〟修復師・時計師と讃(たた)えられてきたミシェル・パルミジャーニ氏。100年、200年も前につくられ、時を止めていた複雑な機械式時計には、設計図はもちろん、なんの手がかりも現存していません。それらに再び命を吹き込むことは、魔法、あるいは奇跡──しかし彼は機械式時計という芸術を後世へ伝えていくという使命感のもと、眠りについていた複雑な機械式時計と対峙(たいじ)。研究と研鑽(けんさん)を重ねながら、多くの歴史的な作品の修復に成功しました。

【中上】ムーブメントの組み立ては高度な技術力と豊かな経験をもつ時計師の手仕事で行われている。
【中下】メゾンの母体であるサンド・ファミリー財団が有する「ホテル パラフィット」。洗練を極めたラグジュアリーな世界観は、「パルミジャーニ・フルリエ」の時計と共通する。
【下】ミシェル・パルミジャーニ氏が修復を手がけたオートマタ作品。
「時をつくるということは、魔術に似たものがあります。動かない部品を製造し、それらを組み立てて永久の運動を生むことは、生命のない素材に命を吹き込むことであり、決して止まることのない脈動を生み出すということです」──ミシェル・パルミジャーニ
そんな彼の才能に感銘し、自らのメゾンを立ち上げる背中を押したのが、スイスの著名な財団である「サンド・ファミリー財団」。非常に希少価値の高いアンティークウォッチを多く所有している「サンド・ファミリー財団」は彼の顧客であり、スイスの機械式時計製造の伝統を継承していくという使命感を共有。その支援を受け、1996年に、スイスの時計産業の聖地のひとつであるフルリエという町で、自らの名前とその地名を冠した「パルミジャーニ・フルリエ」というウォッチメゾンをスタートさせたのです。
以来30年の間、一貫して堅持(けんじ)し続けているのが「プライベート・ラグジュアリー」という理念。一般的な評価や既存の価値観に左右されることなく、真価が宿るもの(=ラグジュアリー)を、自分の目で見いだし、尊ぶ(=プライベート)という哲学を、ウォッチメイキングに投影してきました。
機械式時計を愛し、機械式時計に愛された彼は、75歳を迎えた現在もフルリエのアトリエで、後進の育成にあたりながらクリエイションに向き合い続けています。

【中】メゾンの主軸コレクション「トンダ PF」の文字盤に施されるギョウシェ装飾は、希少な手動旋盤(せんばん)が使われている。
【下】ミシェル・パルミジャーニ氏が復活させた文字盤の伝統的な装飾技法「グレイン仕上げ」。酒石英(しゅせきえい)とパウダー状の海塩、シルバーを混ぜたペーストを文字盤に塗り、ブラシをかけ、繊細な模様を施している。
©Parmigiani Fleurier
撮影/池田 敦(CASK)
構成・文/岡村佳代、吉川 純(和樂)
問い合わせ
パルミジャーニ・フルリエ
pfd.japan@parmigiani.com
https://www.parmigiani.com/ja/
※この特集での価格表記は、すべて税込価格です。
※本文中のPTはプラチナ、RGはローズゴールド、SSはステンレススティールを表します。
※本記事は『和樂』2026年8・9月号の転載です。

