編集部厳選!2019年3月に見逃したくないオススメ美術展10選

編集部厳選!2019年3月に見逃したくないオススメ美術展10選

目次

いよいよ3月になって春の展覧会ハイシーズンが近づいてきましたね。毎年桜が咲く入学式・卒業式の季節からゴールデンウィークにかけて、各美術館・博物館ではその年前半に開催される美術展の中で最も力を入れる展覧会をぶつけてくる傾向にあります。

そんな中、特に3月は東京以外の地方で開催される美術展の中に、キラリと光るハイクオリティで個性的な展示が多い印象。季節も良くなってきましたし、旅行やグルメとセットで是非楽しんでみてくださいね。

それでは今月のオススメ展覧会10選、行ってみましょう!

オススメ展覧会1 「伊藤若冲展」(福島県立美術館)

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東日本大震災からの復興を祈念して、大コレクター、ジョー・プライス氏のコレクションを核として2013年夏に「若冲が来てくれました」展が開催されて以来、福島県立美術館にて6年ぶりに再度若冲の傑作群が大集結。今回も「百犬図」「老松鸚鵡図」「象と鯨図屏風」(展示期間:4月16日~5月6日)などの傑作を始めとして、国内外から約100点の作品が集結します。

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「百犬図」絹本着色 一幅 個人蔵/画面上はまさに犬づくし。辻惟雄氏が若冲の絵画に観る「増殖」のイメージはこの作品を観ると一番しっくりくるかもしれません。

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「老松鸚鵡図」絹本着色 一幅 個人蔵/「奇想の絵画展」にも出品されていない若冲全盛期に描かれた傑作。

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「象と鯨図屏風」紙本墨画 六曲一双 MIHO MUSEUM蔵 展示期間 4月16日~5月6日/巨大な生き物対決!クジラの吹きあげる水しぶきの中に「穴」が空いているのは若冲ならでは?!

1788年の「天明の大火」によって自身も自宅やアトリエ、作品の数々を失い、大阪・西福寺での避難生活を余儀なくされた時期の若冲が復興への願いを込めて描いたとされる「蓮池図」(展示期間:3月26日~4月15日)にも要注目です。復興への思いを重ね合わせながらじっくり鑑賞するのも良いですね。

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「蓮池図」重要文化財 紙本墨画 六幅 西福寺蔵 展示期間:3月26日~4月15日

展覧会名 「東日本大震災復興祈念 伊藤若冲展」
場所 福島県立美術館
会期 2019年3月26日(火)~5月6日(月)
公式サイト

オススメ展覧会2 「江戸の奇跡・明治の輝き-日本絵画の200年」(岡山県立美術館)

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日本絵画史において激動の時期となった江戸後期~明治時代の200年を代表して、まず展示前半では江戸後期に京都や江戸で活躍したスター絵師たちの作品が一挙登場!

東京都美術館で4月7日まで開催中の「奇想の絵画」展でも特集されている伊藤若冲、曽我蕭白らはもちろん、迫真の写実力で円山四条派の祖となった円山応挙、文人画の最高峰・池大雅、西洋絵画の遠近法を取り入れて独自の絵画スタイルを築いた司馬江漢、写実的な人物画が国宝にも指定されている渡辺崋山といったスター絵師が続々登場。

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伊藤若冲「花卉双鶏図」個人蔵

展示の後半では、狩野芳崖、菱田春草、横山大観、下村観山、竹内栖鳳ら明治期に活躍した巨匠たちを一挙特集。明治維新後、怒涛のように流入してきた西洋美術に対抗すべく日本画の革新を掲げ、岡倉天心らが主導した東京美術学校~日本美術院の流れを汲む画家や、ここ数年一気に知名度が高まり、その実力が改めて見直されている京都画壇で活躍した代表的な絵師が登場します。

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竹内栖鳳「アレ夕立に」明治42(1909)年 髙島屋史料館

重要文化財16件を含み、2019年に開催される江戸絵画~明治絵画を特集した展覧会の中では最大規模となる約180件を展示する本展は、日本画好きにはたまらない凄い展覧会になりそうです。歴史に名を残した巨匠たちの作品をたっぷり楽しみながら、日本美術史における近世~近代の日本画の系譜を俯瞰できる素晴らしい展覧会。奇想の絵画展で本格的に江戸絵画にハマったなら、今度は岡山に遠征必至です!

展覧会名 「江戸の奇跡・明治の輝き-日本絵画の200年」
場所 岡山県立美術館
会期 2019年3月15日(金)〜4月21日(日)
公式サイト

オススメ展覧会3 「トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美」(国立新美術館)

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1453年、メフメト2世によるコンスタンティノープル(現イスタンブル)征服後、ボスフォラス海峡とマルマラ海、金角湾に囲まれた丘に建設された、オスマン帝国を象徴するトプカプ宮殿。1924年、トルコ共和国建国時に博物館となり、9万点近い美術品と建築でオスマン帝国の栄光の歴史やスルタンたちの生活をしのぶことができる宮殿博物館トルコ・トプカプ宮殿博物館として生まれ変わりました。

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「立法者スルタン・スレイマン1世」 『トルコの皇帝肖像画集(ヤング・アルバム)』、ロンドン 1815年 トプカプ宮殿博物館蔵/オスマン・トルコの最盛期の皇帝・スレイマン1世の肖像画です。

展覧会では、同館が所蔵する歴史遺産・財宝約170点がズラリ。オスマン・トルコ時代の全盛期を彷彿とさせる豪華絢爛な宝飾品や武器・工芸品を楽しめます。

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「儀式用宝飾水筒」16世紀後半 トプカプ宮殿博物館蔵

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「スルタン・メフメト4世宝飾短剣」1664年頃トプカプ宮殿博物館蔵

また、本展では特にトルコ国民が愛する「チューリップ」に着目。チューリップの柄があしらわれた宝飾品、工芸品、食器、武器、書籍などを通して、悠久の歴史と多様な文化が育んだ華麗な美が紹介されます。

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《スルタン・スレイマン1世のものとされる儀式用カフタン》16世紀中期 トプカプ宮殿博物館蔵

大規模展としては約12年ぶりに開催されるオスマン・トルコ時代の宝飾や工芸品をテーマとした展覧会です。そのほとんどが初来日となる、約170点の「トルコの至宝」を通して、スルタンたちのトプカプ宮殿での暮らしぶりや美意識を感じとることができるでしょう。

展覧会名 「トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美」
場所 国立新美術館 企画展示室2E
会期 2019年3月20日(水)~5月20日(月)
公式サイト

オススメ展覧会4 特別展「国宝 東寺-空海と仏像曼荼羅」(東京国立博物館)

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金碧に輝く仏像群が美しい、密教美術の最高峰である東寺・講堂「立体曼荼羅」。これを構成する全21体の仏像中、過去最高の15体(国宝11体、重要文化財4体)が東京国立博物館にお目見え。史上最大規模の仏像曼荼羅が出現します。

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仏像曼荼羅イメージ 東寺蔵

特に国宝の11体に関しては360度方向から観られるように展示される予定。講堂内ではなかなか見ることができない角度・目線から仏像群をじっくり鑑賞できる非常に貴重な機会です。

それ以外にも、彫刻、絵画、書跡、工芸など東寺が約1200年にわたり守り伝えてきた至宝が数多く登場する予定。かつて平安京の羅城門に安置されていたとされる国宝「兜跋毘沙門天立像」(とばつびしゃもんてんりゅうぞう)や、密教の灌頂(かんじょう)儀礼で用いられた現存最古の彩色両界曼荼羅図とされる国宝「両界曼荼羅図(西院曼荼羅[伝真言院曼荼羅]」、空海が最澄に宛てた直筆の書状・国宝「風信帖」(ふうしんじょう)など見どころたっぷりです。

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国宝 兜跋毘沙門天立像 中国 唐時代・8世紀 東寺蔵

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国宝 両界曼荼羅図 (西院曼荼羅[伝真言院曼荼羅])のうち金剛界
平安時代・9世紀 東寺蔵 [展示期間:4月23日(火)~5月6日(月・休)]

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国宝 風信帖(第一通) 空海筆 平安時代・9世紀 東寺蔵[展示期間:3月26日(火)~5月19日(日)]

2019年上半期最大の仏教美術展の一つである本展は、仏教美術好きにはたまらない展覧会になりそうです!

展覧会名 特別展「国宝 東寺-空海と仏像曼荼羅」
場所 東京国立博物館 平成館
会期 2019年3月26日(火)~6月2日(日)
公式サイト

オススメ展覧会5 特別展 「明恵の夢と高山寺」(中之島香雪美術館)

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高山寺の開祖・明恵上人(みょうえしょうにん)と、高山寺に伝わる数々の寺宝を特集した、非常に力の入った特別展です。展覧会では、数々の魅力的なエピソードに満ちた明恵上人が19歳~58歳までに自らが見た夢について書いた「夢記(ゆめのき)」に着目。夢、夢想、夢感など、生涯の大部分にわたる夢の記録から、明恵上人の人物像や人生を振り返ります。

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夢記 鎌倉時代、13世紀 村山コレクション 全期間

また、高山寺の寺宝として本展では美術ファンから広く愛され、屈指の人気を誇る国宝「鳥獣戯画」全4巻や、不思議な修行風景を描写した国宝「明恵上人像」なども展示。国宝ファンにも楽しみな展覧会です。

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国宝 鳥獣戯画 甲巻(部分) 平安時代、12世紀 高山寺 前期: 2019.3.21~4.14

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国宝 明恵上人像 (樹上坐禅像)鎌倉時代、13世紀 高山寺 後期: 2019.4.16~5.6

また、中之島香雪美術館は2018年3月にオープンして、まだ開館1周年を迎えたばかりのピカピカの美術館。朝日新聞社の創業者・村山龍平の収集した美術品を公開しています。同氏について特集した最新鋭の映像設備や大型年表、解説パネルなどが充実した常設展示「村山龍平記念室」や、国指定重要文化財「旧村山家住宅」に建つ茶室「玄庵(げんなん)」を、建物だけでなく庭まで原寸大で再現した茶室「中之島玄庵」も要注目です!

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中之島香雪美術館 村山龍平記念室

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中之島香雪美術館 茶室「中之島玄庵」

展覧会名 特別展 「明恵の夢と高山寺」
場所 中之島香雪美術館
会期 前期 3月21日(木・祝)~4月14日(日)
後期 4月16日(火)~5月6日(月・振休)
※展示替えあり
公式サイト

オススメ展覧会6 「ラファエル前派の軌跡展」(三菱一号館美術館)

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「近代画家論」を著し、西洋美術史に大きな影響を与えた19世紀イギリス・ヴィクトリア時代を代表する美術批評家ジョン・ラスキン。本展では、彼の生誕200年を記念して、ラスキンの絵画研究を軸に、生前彼と交流が深かったターナーやラファエル前派(ロセッティ、ミレイ、ハントら)、バーン=ジョーンズ、ウィリアム・モリスら、ラスキンと同時代の作家たちの作品を展示します。

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ジョゼフ・マラード・ウィリアム・ターナー「カレの砂浜――引き潮時の餌採り」1830年、油彩/カンヴァス、68.6×105.5 cm、ベリ美術館 ©Bury Art Museum, Greater Manchester, UK

1848年、英国の芸術家養成機関・ロイヤル・アカデミーの保守性を批判し、真実味のある人間感情の表現が可能となるラファエロ以前の芸術に回帰する必要性を訴えた7人の若き芸術家集団は、自ら「ラファエル前派」と名乗って活動を開始しました。彼らを高く評価し、活動を後押ししたのがラスキンだったのです。展覧会名が示すとおり、本展での最大の見どころは、ラファエル前派に所属した有力な画家、ロセッティやミレイ、それに続くバーン=ジョーンズらの名作です。

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ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ「ウェヌス・ウェルティコルディア(魔性のヴィーナス)」1863-68年頃、油彩/カンヴァス、83.8×71.2 cm、ラッセル=コーツ美術館 © Russell-Cotes Art Gallery & Museum, Bournemouth

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ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ「ムネーモシューネー(記憶の女神)」1876-81年、油彩/カンヴァス、120.7×58.4cm、デラウェア美術館、サミュエル&メアリ・R・バンクロフト・メモリアル、1935年 ©Delaware Art Museum, Samuel and Mary R. Bancroft Memorial, 1935

また、展示は油彩画だけにとどまりません。水彩画や素描、ステンドグラス、タペストリ、家具など、様々な芸術品を通して、ラファエル前派の精神的指導者となった美術批評家・ジョン・ラスキンの評論活動が美術史に与えた影響を探っていきます。

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モリス・マーシャル・フォークナー商会(1875年以降はモリス商会)「3人掛けソファ」1880年頃、クルミ材・毛織生地、96.2×221×77.2 cm、リヴァプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー ©National Museums Liverpool, Walker Art Gallery / 三菱一号館の瀟洒な洋館と相性抜群な19世紀イギリスの家具なども展示!

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ジョン・ラスキン「モンブランの雪――サン・ジェルヴェ・レ・バンで」1849年、鉛筆、水彩、ボディカラー、25.1×38.4 cm、ラスキン財団(ランカスター大学ラスキン・ライブラリー)©Ruskin Foundation (Ruskin Library, Lancaster University) /ラスキンは美術批評家としてだけでなく、自らも画家として美しい水彩画などを手がけました。

海外の所蔵先に幅広いコネクションを持つ三菱一号館美術館らしく、英米の美術館から集めた約150点の充実展示で、ラファエル前派の活動をはじめ、ラスキンが研究・批評した19世紀イギリスで花開いた様々な芸術運動を楽しむことができる展覧会です。

展覧会名 「ラファエル前派の軌跡展」
場所 三菱一号館美術館
会期 2019年3月14日(木)~6月9日(日)
公式サイト

オススメ展覧会7 「幸若舞曲と絵画—武将が愛した英雄たち」(海の見える杜美術館)

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幸若舞曲は戦国武将に人気のあった物語に節をつけて語る「語り物」というジャンルの芸能で、室町時代から江戸時代初期にかけて流行しました。その演目の中で三十六曲の台本を絵入りの読み物にした「舞の本」が江戸時代のはじめに出版され、この版本をもとに贅を尽くした絵巻や絵本が制作されました。

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「舞の本絵本」 47冊 江戸時代 17世紀 海の見える杜美術館

幸若舞曲での演目としては、源平合戦のエピソードや、源義経を主人公とした「義経物」、曽我兄弟の仇討ちの顛末を伝える「曽我物」など、平安時代~鎌倉時代にかけての武将の活躍を語る演目が多く、織田信長をはじめとする戦国武将たちに盛んに愛好されました。展示では、大名道具として江戸時代に盛んに制作された、幸若舞曲を描いた絵巻や絵本、屏風を楽しむことができます。

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「平家物語扇面画帖」 2帖 江戸時代 17世紀 海の見える杜美術館

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「曽我物語図屏風」 右隻 六曲一双 桃山時代 16世紀 渡辺美術館 撮影者:吉岡由哲

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「曽我物語図屏風」 左隻 六曲一双 桃山時代 16世紀 渡辺美術館 撮影者:吉岡由哲

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「夜討曽我絵巻」9巻 江戸時代 17世紀 海の見える杜美術館

本展で新しいのは、桃山時代から江戸時代に隆盛したこの「幸若舞曲」に関する様々な絵画作品をひとつのジャンルとしてとらえようとする試みです。16世紀~17世紀に制作された非常に価値ある作品が勢揃いした本展で展示される贅沢で華やかな物語絵の世界をじっくり楽しめる良い展覧会です!

展覧会名 「幸若舞曲と絵画—武将が愛した英雄たち」
場所 海の見える杜美術館
会期 2019年3月2日(土)〜5月12日(日)
公式サイト

オススメ展覧会8 「へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで」(府中市美術館)

編集部厳選! 2019年3月に見逃したくないオススメ美術展10選

私達は日本美術を鑑賞する時、絢爛豪華な屏風絵や超絶技巧な美の極致と言えるような工芸作品、叙情性たっぷりの風景画など、様々な美しさをそこに見出しますが、その一方でなぜか不格好なものや不完全なものの中にも「美」を見出す感性を持っています。そんな日本人の「へそまがりな感性」に着目し、中世の水墨画から現代のマンガまで、変な造形・構図やゆるさ・素朴さが感じられる絵画作品を大特集し、「へそまがり」をキーワードに日本美術史を俯瞰してみよう、という非常にユニークな展覧会です。

たとえば、変な絵を手がけることにおいては江戸時代No.1とも言える長沢蘆雪が描いた、「ズルさ」満点の”まったくかわいくない”猿。木を登って来る小猿に見えないように柿を手で隠して知らんぷりするずる賢い表情は絶品です。

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長沢蘆雪「猿猴弄柿図」個人蔵

若冲だって負けていません。展覧会特設サイトでの紹介キャッチフレーズ「おでこの余白は自由にお使いください」が笑ってしまうほど、まるで宇宙人のようにおでこが長く引き伸ばされた「福禄寿図」などは、ゆるい禅画などに通じる「きもかわいい」雰囲気があります。

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伊藤若冲「福禄寿図」個人蔵

また、平和な江戸時代は将軍や大名のお殿様も、お付きの狩野派絵師たちに絵を習い、自ら絵筆を取って作品を残しましたが、ゆるさとヘタさ(?)として格別なのが3代家光が残した「兎図」「木兎図」といった作品群。プロでは到底ありえない独特のゆるさ、ヘタさがたまりません。

徳川家光-兎図
徳川家光「兎図」個人蔵

もちろん、変な作品だけでなくレアな大作も出陳されます。たとえば、コミカルな龍の表情がかわいい海北友雪の大作「雲龍図襖」。春日局菩提所として知られる妙心寺塔頭・麟祥院の方丈に設置され、特別公開時以外は原則非公開となっている非常に貴重な作品が、府中市美術館のゆったりした展示空間にて観ることができるのは嬉しいですね。

海北友雪
海北友雪「雲龍図襖」麟祥院(京都市)蔵

展示期間が短い日本美術なので、期間中は大規模な展示替えが予定されていますが、なんと本展はリピーター向けに、1回目の半券をチケット窓口で提示すれば、2回目の来館者の鑑賞料金は「半額」に!これは嬉しいですね。是非前後期併せて138点と大ボリュームで出品されるへそまがりな江戸絵画の「ヘタウマワールド」をがっつり堪能してしまいましょう!

展覧会名 「へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで」
場所 府中市美術館
会期 2019年3月16日(土)〜5月12日(日)
前期 3月16日(土)~4月14日(日)
後期 4月16日(火)~5月12日(日)
※展示替えあり
特設サイト

オススメ展覧会9 「扇の国、日本」(山口県立美術館)

編集部厳選! 2019年3月に見逃したくないオススメ美術展10選

2019年で開館40周年を迎える山口県立美術館との共同企画として、昨年冬にまずサントリー美術館で開催された「扇」をテーマとした日本美術の展覧会です。そのバラエティに富んだキュレーションと展示のクオリティは目の肥えた上級者をもうならせました。INTOJAPANでも尾上右近さんによる「サントリー美術館の「扇の国、日本」展|尾上右近の日本文化入門」レポートを書かせて頂きました。

展覧会では、本格的な作例としては現存する最古の扇である平安時代の桧扇の展示に始まります。

屏風の中で美女が舞い踊る「舞踊図」、扇流しが描かれ、「はかなさの美」が風流に表現された屏風絵「扇面流図(名古屋城御湯殿書院一之間西側襖絵)」、源氏物語や伊勢物語、合戦ものや寺社縁起まで、扇の中に物語絵を描き込み、それを屏風に多数貼り集めた「扇面貼付屏風」まで、様々な大型の屏風絵展示は圧巻。

編集部厳選! 2019年3月に見逃したくないオススメ美術展10選
「舞踊図」(六面のうち) 江戸時代・17世紀 サントリー美術館蔵

また、展覧会では「扇」に描かれた絵画作品だけでなく、扇をかたどったかたちが美しい桃山茶陶・織部焼や、扇をかたどった吉祥文様が美しいデザインの着物など、ジャンルを越えて様々なかたちで古来から日本人に愛された「扇」の日本美術をたっぷり堪能することができます。

サントリー美術館では惜しくも見逃してしまった!という方は、思い切って山口県立美術館に遠征してみるのもありですね。写真や絵画の所蔵品・47点で特集された「ヌードの魅力」や、同館が収集に力を入れる香月泰男の作品をじっくり観られる「シベリア・シリーズⅢ」など、同時期に開催されている同館のコレクション展も見応えがあります!

展覧会名 「扇の国、日本」
場所 山口県立美術館
会期 2019年3月20日(水)〜5月6日(月・祝)
公式サイト

オススメ展覧会10 「旅する画僧 金谷-近江が生んだ奇才-」(草津市立草津宿街道交流館)

編集部厳選! 2019年3月に見逃したくないオススメ美術展10選

現在、リニューアル整備休館中のため、他の県内施設で美術館の活動と館蔵品を紹介する「県内移動展示事業」を実施中の滋賀県立近代美術館。本展は、東海道と中山道の合流地点として江戸時代に栄えた「草津宿」本陣を再現した歴史観光スポットに併設された「草津市立草津宿街道交流館」で開催されます。

特集されるのは、現在の草津市下笠町出身で、与謝蕪村に私淑して「近江蕪村」とも言われるなど、文人画を得意とした画僧・横井⾦⾕(よこいきんこく)です。⾦⾕は、⼤坂、江⼾、京都、名古屋と各地を転々と放浪する中で、あるときは謹厳な僧侶として⽣活に苦しむ⼈々を救済し、あるときは破戒僧として悪所に通い、あるときは⼭伏として⼤峰⼊りし、またあるときは絵師として筆を執った非常にユニークな経歴の画僧でした。

その見どころとなる作品は、修理が完了して初お披露目となる「洛東春興図」や同じく修理後初公開となる「梅花書屋図・雪景⼭⽔図」

編集部厳選! 2019年3月に見逃したくないオススメ美術展10選
横井金谷「洛東春興図」滋賀県立近代美術館蔵

編集部厳選! 2019年3月に見逃したくないオススメ美術展10選横井金谷「梅花書屋図・雪景山水図」のうち梅花書屋図、滋賀県立琵琶湖文化館蔵

また、金谷が交流を深めた尾張の文人画作家との関わりや、リスペクトしてやまなかった蕪村に関連する作品、全国各地を旅して回った金谷が描いた「旅する人々」の姿が印象的な作品など、バラエティに富んだ作品約30点を展示。

編集部厳選! 2019年3月に見逃したくないオススメ美術展10選
横井金谷画・井上士朗賛「水草図」草津市・中神コレクション蔵/尾張で活動した俳人・井上士朗とのコラボ作品

江戸時代の画僧といえば、白隠と仙厓の二人が圧倒的に有名ですが、それ以外にも先日、名古屋市立博物館で大きく特集された月僊や、本展での横井金谷など、全国的には知名度は低いもののまだまだ魅力的なを作品を残した個性派の画僧はいっぱいいるのですよね。これを機に、是非金谷和尚の魅力を楽しんでみてくださいね。

展覧会名 「旅する画僧 金谷-近江が生んだ奇才-」
場所 草津市立草津宿街道交流館
会期 2019年3月16日(土)〜5月12日(日)
公式サイト

力の入った大規模展からユニークな切り口の個性派展覧会まで、3月は盛りだくさん!

編集部厳選! 2019年3月に見逃したくないオススメ美術展10選

いかがでしたでしょうか?伊藤若冲展や江戸~明治期にかけての美術史におけるメインストリームを飾る主力の人気絵師たちが活躍する展覧会から、カエルやネコたちが画面を走り回るゆるさ満点の鳥獣戯画や、個性派の画僧や風変わりな絵画ばかりが楽しめる展覧会まで、まさに百花繚乱。今回紹介させて頂いた展覧会以外にも、まだまだ沢山の面白い展覧会が全国各地で開催されています。是非、自分なりに面白そうな展覧会をチェックしてみて、気軽にお出かけしてみてくださいね。

文/齋藤久嗣

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