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2024.06.27

かえるは美しい? これを読めばあなたもきっとかえるが好きになる!【編集部スタッフが繋ぐ、日本文化の思い出】

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5月からスタートした「和樂web編集部スタッフがリレー形式で日本文化の思い出をつづるシリーズ」。鎌倉時代に生きている?ような、鎌倉に愛されている樽瀬川さん。彼女から回ってきたリレーエッセイ、8回目を担当するのは、旅をしながら生きていたい「女・寅さん」こと、くろりんです。そのお題は、なんと「かえる」。

「はて?」 私とかえるの共通点って何だ?

 

最近、ライターだけでなく、ツアコンのお仕事を始めた私は、そういえば「無事かえる」が口癖となっています。高速道路での事故などを見てしまうと、もう祈るような気持ちで、「無事かえる」を唱えてしまっているのです。

先日、三重県の夫婦岩で有名な二見浦(ふたみうら)に行った際、あちこちに蛙の置き物を発見! ここ二見浦は、龍神崇拝の精神により、雨を喜ぶという意味から蛙を献じたと言われているそう。ご利益は、「無事かえる」「お金がかえる」「物事がかえる」「貸したものがかえる」。やはり蛙に縁があった? 樽瀬川さんは、もしかして陰陽師なのか?

日本人はなぜ、蛙を擬人化するのか?

人とは似ても似つかない生き物なのに、昔から擬人化されてきた蛙。小学校の教科書にも出てくる、あの有名な「やせ蛙負けるな一茶これにあり」という句は、虚弱体質の息子を励ますために詠んだ句とも言われています。それにしても、見た目も違う蛙にどうして人間を重ねたんだろう。

和樂や和樂webでもおなじみの京都の高山寺に伝わる国宝「鳥獣戯画絵巻」にも「蛙」はたくさん描かれています。

鳥獣戯画とは?作者は誰?ミステリアスな国宝を徹底解説ッ!

こうして見てみると、日本人は蛙への親しみが強いことがわかります。

蛙の擬人化といえば、私の世代は、漫画やアニメの「ド根性ガエル」。主人公のひろしと一体化した蛙ですが、驚くのは転んだ時に潰されたはずの蛙がTシャツに生きたまま張り付くという設定。この奇想天外なアイディアは、今の時代であっても斬新! そして、私は、いつもうじうじと情けないひろしを助け、Tシャツに張り付くという不自由な状態にありながら、強く明るく生きるピョン吉によく涙していました~。

海外の擬人化は恐ろしい

じゃ、海外ではどうだろう? と考えたら、あった、あった、ありました! 私が幼い頃に読んだグリム童話「かえるの王子様」。あれは子ども心に怖いストーリーでした。蛙に姿を変えられてしまった王子様が、王女様を助ける代わりに、一緒に食事して、一緒のベッドで寝て~とお願いされるのです。拒絶してきた王女様が、蛙が王子様に戻ったとたん、王子様を好きになり、最後は結婚へというストーリーでしたが、私自身は、王子様だとわかっても、蛙だった王子様を受け入れられなくて。でも学校帰りに道端で、蛙に遭遇すると、もしこれがクラスの好きな〇〇君の変わり果てた姿だったら? と妄想し、好き?、嫌い? が頭の中をグルグルしたものです。妄想癖が強いのは子どもの頃からだったよう。

蛙が高尚な文学に

蛙を文学にまで展開させたのは松尾芭蕉でした。世界中で愛されるようになった「HAIKU」の代表作が、

「古池やかわず飛び込む水の音」

彼の才能にかかれば、その辺にいた蛙が、郷愁を誘う、池に飛び込む姿の美しい蛙へと昇華してしまうのです。確かに蛙の飛び上がった時の足の美しさは、他の動物を寄せ付けない均整の取れた美脚なのかも。やはり美の化身? 神社に奉納されるなどの神秘さもあいまって、蛙がなんだか崇高なものに思えてきました。もっと大事にしなきゃ! と今さらながら家にあるかえるの置き物を探してみると、かえるの表面はすべすべ、つやつや!

これだ! 今の私にもっとも必要なもの! 蛙は蛙でも「若がえる」。

お後がよろしいようで。

次のテーマは「瑠璃色」

リレーのバトンは、和樂webでコンサル業務を担当している、kojirooさん。よろしくお願いします!

アイキャッチ画像:『鳥獣戯画絵巻』(https://colbase.nich.go.jp/)