Art
2019.03.12

遠くて近い国の絢爛たる美「トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美」【2019年】

この記事を書いた人

サッカーの長友選手や香川選手が活躍していることで、トルコという国への注目度が高まっています。トルコと日本、この両国の間には非常に深い信頼と感謝の歴史があったことをご存じでしょうか?

遠くて近い国の絢爛たる美!「トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美」
東洋と西洋の間のボスフォラス海峡から見上げるトプカプ宮殿

トルコと日本の友好の歴史をひもとく

卜ルコと日本の正式な交流は明治6(1873)年にさかのぼります。開国したばかりの日本が対等な外交と、文化を学ぶため、明治政府が派遣した岩倉使節団のイスタンブル訪問がその始まりです。
それから、オスマン帝国の君主であるスルタンと天皇家との皇室外交、文民官民の往来など、アジアの東西両端に位置する両国の交流は、正式な国交が結ばれる前から絶えることがありませんでした。

そして明治23(1890)年、以後の両国の関係を決定づける事故が起こります。それは、オスマン帝国の軍艦エルトゥールル号の遭難。和歌山県の串本町沖で大破した軍艦と乗組員の救出のため、漁師をはじめとした串本町の人々は奔走。決死の活動によって救われた乗組員は、串本町民が修理した軍艦でトルコへ戻ることができたのです。

エルトゥールル号の遭難事故を機に友好を深めた両国は、明治37~38(1904~1905)年の日露戦争でさらに強く結ばれることになります。開国して50年程度の極東の小国日本が、大国ロシアへ戦いを挑み、東郷平八郎率いる連合艦隊がロシア・バルチック艦隊を撃沈。圧倒的勝利をおさめたニュースは、ロシアの脅威にさらされていたトルコ国民にとっても喜ばしく、感銘を受ける出来事だったのです。

トルコからの思いもよらない恩返し

時は過ぎ、イラン・イラク戦争中の昭和60(1985)年3月、イラクの大統領サダム・フセインは突如、「40時間後を期限に終戦までイラン上空を飛ぶ航空機はすべて撃墜する」と布告しました。
世界各国は迅速に退避させたのに対し、日本政府は対応が遅れ216名の日本人が空港に取り残されてしまいました。在イラン日本大使館が親交のあったトルコ大使館に窮状を訴えると、即座にトルコ航空をイランへ派遣。タイムリミットのわずか1時間15分前に216名の日本人を全員トルコ領空へ退避させてくれたのです。
このとき、トルコ大使は「あの時の恩を返す時が来た」と日本大使に告げたことが後日談として伝わっています。

人類史上最大級の地域を支配したオスマン帝国

遠くて近い国の絢爛たる美!「トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美」
トプカプ宮殿の華麗な建築装飾

このようにかたい友好関係で結ばれてきたトルコと日本ですが、地理的に離れていることもあって、歴史や文化を学ぶ機会は決して多くはありませんでした。

トルコが歴史上もっとも輝いたのは、1299年ごろから1922年まで栄えたオスマン帝国の時代。第7代スルタン・メフメト2世が西洋と東洋を結ぶ地であるコンスタンティノープル(現イスタンブル)を征服し、首都と定め、1478年に政治、軍事、文化の拠点となるべくトプカプ宮殿が完成しました。

その後、1520~1564年のスレイマン1世の治世下で法が整備され、宗教建造物や公共施設の建設などの大事業が推し進められます。それと同時に、対外的には地中海を制圧し、西はハンガリーなど中部ヨーロッパまで、東はイラン西部、北は南ロシア、南は北アフリカまで領土を拡大し、最高の権勢と繁栄を謳歌。世界最強国に数えられたオスマン帝国には富が集中し、支配者層は次々と壮麗なモスクを建造。そこには最高の技術が集められ、豪華な工芸文化が花開いたのです。

トプカプ宮殿の至宝を紹介する超贅沢な展覧会!

遠くて近い国の絢爛たる美!「トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美」
「トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美」チラシ表面

東西文明の十字路であるイスタンブルで育まれた、オスマン帝国の歴史遺産や財宝約170点を紹介する「トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美」が、東京の国立新美術館(3月20日~5月20日)と、京都国立近代美術館(6月14日~7月28日)を巡回します!

展示されるのは、トプカプ宮殿博物館が所蔵するオスマン帝国の栄華を今に伝える宝飾品や美術工芸品の至宝約170点。そのほとんどが初来日の作品で、トルコ国民がこよなく愛するチューリップの花があしらわれた宝飾品、工芸品、食器、武器、書籍などをとおして、悠久の歴史と多様な文化が育んだ華麗な美が紹介されます

遠くて近い国の絢爛たる美!「トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美」
「トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美」チラシ裏面

トルコ文化年2019
トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美

会期/2019年3月20日(水)〜5月20日(月)
会場/国立新美術館 企画展示室2E
開館時間/10:00〜18:00(金・土曜、4月26日〜5月5日は20:00まで 入場は閉館の30分前まで)
休館日/火曜(4月30日は開館)
お問い合わせ 03‒5777‒8600(ハローダイヤル)
公式サイト 
巡回情報 京都国立近代美術館 2019年6月14日(金)〜7月28日(日)