Culture
2020.09.09

9月9日「重陽の節句」とは?由来や楽しみ方、菊の花を使った料理レシピも紹介

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3月3日は桃の節句、5月5日は端午の節句、7月7日は七夕の節句。ではその次に来る、9月9日は何の節句でしょうか。
答えは「重陽の節句(ちょうようのせっく)」。他の節句に比べてあまり知られていないようですが、かつては邪気を払い、長寿や無病息災を願うための大切な日として広く認識されていました。

重陽の節句とは?

9月9日の重陽の節句は、中国から伝わったもの。中国では、奇数は縁起の良い「陽」の日と考えられており、奇数が重なる日を「おめでたい日」「いいことが重なる日」として愛でる習慣がありました。

1月、3月、5月、7月と続き、最後に来るのが9月9日。最も大きい陽の数字が重なることから「重陽」と呼ばれており、昔は一年を締めくくる節句として盛んに行われていたようです。

五節句とは?

1月から始まる計5回の節句は「五節句」と呼ばれています。平安時代は宮中の行事として行われていましたが、時代とともにこの風習が広がり、江戸時代には庶民の間でも五節句を祝うようになりました。

この五節句の制度は、明治時代に入って廃止されましたが、今でも季節の行事として人々の間で楽しまれています。

それぞれの節句には、託された願いや行事食などがあります。重陽の節句は、旧暦では菊の花が美しい頃と重なることから、別名「菊の節句」とも言われています。

・1月7日「人日の節句(七草の節句)」
七草粥を食べて、これからの一年が健康に過ごせることを願う。
・3月3日「上巳の節句(桃の節句)」
女の子の健やかな成長を願う。ひな人形を飾り、散らし寿司やはまぐりの吸い物などを食べる。
・5月5日「端午の節句(菖蒲の節句)」
男の子の健やかな成長を願う。こいのぼりや五月人形などを飾り、ちまきや柏餅を食べる。しょうぶ湯に入って、心身を清める。
・7月7日「七夕の節句(笹の節句)」
願いごとが成就するように祈る。願いを書いた短冊を笹に飾る。
・9月9日「重陽の節句(菊の節句)」
不老長寿を願い、邪気を払う。菊を使った料理やお酒などを楽しむ。

*1月1日は元旦なので別格として扱われ、「1月7日」が人日の節句とされている。

重陽の節句、どう楽しむ?

さてさて。もうすぐやって来る9月9日の重陽の節句(菊の節句)は、具体的にどのように楽しんだらいいのでしょうか。

まずは、定番のものとして「菊酒」があります。華やかな見た目の菊酒は、昔から長寿を願って飲まれてきました。

作り方は、蒸した菊の花に冷酒を注ぎ、半日~一晩置いて香りを移します。もっと手軽に試したい場合は、お酒の上に菊の花を散らすだけでもいいですね。

お子さんや妊婦さん、アルコールを控えている方などは、菊酒ではなく、普段の料理に菊の花を添えてみるのもおすすめ。菊の鮮やかな黄色が、食卓をパッと鮮やかにしてくれます。

炊き込みごはんの上に菊の花を添えれば、初秋らしい色合いの一品に。

菊花は、白和えにもよく合います。暑さが残るこの時期にもぴったりの一品です。

この他、菊の花を浮かべた「菊湯」や乾燥させた花を枕に入れた「菊枕」などもあり、邪気を払う習わしとして古くから親しまれてきました。

菊花の保存食を作ってみよう!

スーパーなどで食用菊を購入すると、お花がたくさん入っていますよね。時間が経つうちに香りや色もあせてしまうので、できるだけ早めに使うようにするのがおすすめです。

でも、菊酒や普段の料理に添えるだけでは、使い切れない!

そんな時に、私がよく作るのが「菊花の甘酢漬け」。1週間程度は美味しく冷蔵保存できます。ほのかな苦味と甘酸っぱさがあり、普段の料理に添えるだけでなく、酒の肴としても重宝しています。

菊花の甘酢漬け

〈材料〉
・食用菊 1パック(50g程度)
・A:煮切り酒 1/4カップ(日本酒を加熱してアルコール分を飛ばしたもの)
・A:酢 1/4カップ
・A:はちみつ 大さじ1
・A:自然塩 小さじ1/2

〈作り方〉
1. 菊花は、手で花びらをはずす。
2. 鍋にたっぷりの湯を沸かし、沸騰したら少々の酢を加える。1の菊花を入れて約1分間茹でて、ざるにあげて冷ます。冷めたら、水気をしっかりと絞る。
3. Aの材料をすべて混ぜて、甘酢をつくる。2の菊花を加えてさっと混ぜる。

そのまま少しずつ食べるのもいいですし、散らし寿司や和え物などに混ぜて使うのもよく合います。

青菜の和え物に、菊花の甘酢漬けを混ぜ込んだもの。少し加えるだけで、料理の色合いが華やかに!

目が疲れやすい方にもおすすめ「菊花茶」

ちなみに私自身が重陽の節句を意識するようになったのは、薬膳の勉強を始めた7、8年前。
薬膳では、菊花には「余分な熱を取る」「目の不調を改善する」働きがあるとされ、お茶としても日常的に飲まれています。

数個の菊花をカップに入れてそこに熱湯を注げば、「菊花茶」のできあがり。パソコンなどを使う機会も多く目が疲れやすい私自身も、このお茶を愛飲しています。

見た目が可愛らしくそのままでも美味しいですが、プ―アール茶などとブレンドしたり、クコの実を加えたりするのもよく合います。お茶用の乾燥した「菊花」が出回っているので、気になる方はぜひチェックしてみてくださいね。

栗や茄子(なす)で祝う、重陽の節句も

重陽の節句は、農作物の収穫期とも重なっています。そのため庶民の間では「栗の節句」と呼ばれることもあり、栗ごはんを炊いて祝うこともありました。

また、「焼き茄子」などの茄子料理で無病息災を願う地域もあります。

現在でも九州では「長崎くんち」や「唐津くんち」としてその名前が残っています。くんちというのは「9日」のこと。旧暦9月9日の重陽の節句に行われた収穫祭では「くんちに茄子を食べると、中風(発熱や頭痛など)にならない」と言われていたようです。

「いいことが重なる日」を愛でてみよう

先人の暮らしに思いを馳せながら季節を楽しむことは、心も身体も元気にしてくれます。

無病息災の願いが込められた、9月9日の重陽の節句。

長寿や菊酒などの菊を使ったお酒が定番ですが、甘酢漬けなどの手軽な菊花料理や、栗や茄子などの旬の食材をいただきながら、その日をゆったりと愛でてみてはいかがでしょうか。

書いた人

バックパッカー時代に世界35カ国を旅したことがきっかけで、日本文化に関心を持つ。大学卒業後、まちづくりの仕事に10年以上関わるなかで食の大切さを再確認し、「養生ふうど」を立ち上げる。現在は、郷土料理をのこす・つくる・伝える活動をしている。好奇心が旺盛だが、おっちょこちょい。主な資格は、国際薬膳師と登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。https://yojofudo.com/