戦国武将が愛用していた兜は、どれも華やかでユニークなものばかりです。
なんでそんなのを付けたの? と聞きたくなるようなもの、うっとり見惚れてしまう格好いいもの、思わず笑ってしまうものなど、ファッションショーを見ているような楽しさです。
前田利家のものと伝わる兜には、「勝ち虫」と呼ばれる、ある昆虫をかたどったものがついています。その虫とは何でしょう?
答えはトンボ!
それは、トンボ。西洋では不吉なものと捉えられることもあるトンボですが、日本ではとても縁起の良い虫。
後退はせず、前にしか進まないことから、「勝ち虫」として武将にとても好まれました。兜や刀の鐔など、武具のデザインにトンボのモチーフがよく使われているのは、こうした理由によるものです。
古代日本では、本州を「秋津島(あきつしま・あきづしま)/秋津洲とも」と呼んでいましたが、「秋津」とはトンボのこと。本州の形がトンボが連なった形に似ている、と神武天皇(じんむてんのう)が言ったためとされます。
また、雄略天皇(ゆうりゃくてんのう)を刺したアブをトンボが捕食したというエピソードもあり、トンボは日本人に長く愛され続ける虫となりました。
本多忠勝の「蜻蛉切」
一方、そんな縁起のいいトンボを斬ってしまったという槍があります。戦国武将・本多忠勝(ほんだただかつ)愛用の「蜻蛉切(とんぼぎり)」です。
でも、それが不吉である、ということにはならず、大変に切れ味のよいものとして称賛されたのでした。
止まっただけでトンボ真っ二つ!?槍の名手・本多忠勝が愛用した蜻蛉切
トンボの他の「勝ち虫」
トンボのほかにも、「勝ち虫」とされた虫がいます。
それは、ムカデ。トンボと同じく前進しかできないため、こちらも武将に愛されたのです。伊達政宗の重臣・伊達成実(だてなりざね)も、兜のモチーフにムカデを選びました。
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アイキャッチ画像:歌川国芳『太平記英勇傳 堀本儀太夫高利』、メトロポリタン美術館より