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Culture
2021.02.05

縄文界に新アイドル誕生?北本土偶「きたもっちゃん(仮)」愛用の呪術アイテムも紹介!

この記事を書いた人

近頃、ミステリアスな祈りの女神に心を奪われる人が続出中。その正体は縄文時代の土偶です。
「きたもっちゃん(仮)」は、埼玉県北本市の神社前の遺跡から見つかった巫女土偶。可愛くって、目が合うと癒されちゃうかも!

縄文人の祈りのシンボル、土偶

縄文時代の遺跡から発掘される土偶は、胸があって腰が張っていて、お腹に正中線があったりして、妊娠した女性のような姿形のものが多く見つかっています。煮炊きをする土器のような生活用品ではなく、儀式や祭祀をするのに使われた道具とみなされ、縄文のヴィーナス(女神)と呼ばれることもあります。

でも実は、その姿形は作られた時代によっても、見つかった場所によってもいろいろ。中性的な体つきの土偶や、お面をかぶっている土偶もあります。
何のために作られたのか、どのように使われていたのか? その真実は、いまだ多くの謎に包まれているのです。

土偶は縄文人の精神文化の到達点ともいわれます。
長い間、縄文時代は狩猟と採集の時代とみなされてきました。ところが最近の研究では、縄文の人々が植物を栽培し、漆を生活に利用するなど、高度な技術を持っていたことが明らかになっています。
自然のなかで戦争のない社会を1万年以上も維持した彼らは、何を祈り、どのような文化を生きていたのでしょうか。

神社生まれの巫女土偶「きたもっちゃん(仮)」

北本市の宮岡氷川神社前遺跡から見つかった土偶があります。妊婦というよりは少女のような体つき。耳飾りをつけていて、首元には二重線で襟もとが描かれています。もともとは赤いベンガラの漆塗り、体にはうっすらと朱の色が残っています。
お顔は鼻筋がとおって、笑っているのでしょうか? なんとなく優しい表情をしています。北本生まれだから、「きたもっちゃん(仮)」と呼びましょう。

宮岡氷川神社前遺跡から出土した土偶の「きたもっちゃん(仮)」 北本市教育委員会『きたもとの縄文世界』より

きたもっちゃん(仮)は、縄文後期の祭祀アイテム。
北本市には縄文時代の遺跡が密集しているのですが、住居跡には深型土器が炉に据えられ、集落の近くにはクルミやトチノキ、大豆や小豆などを栽培していたあとがあります。豊作を祈る儀式も行われていたようです。つまり、人々が土地に定住して、安定した生活を営んでいたとわかるのです。
きたもっちゃん(仮)のおだやかな表情は、もしかしたら当時の人々の暮らしが落ち着いたものであったことを象徴しているのかもしれません。

きたもっちゃん(仮)愛用、呪術アイテムいろいろ

土偶は、縄文時代に儀式や祭祀を行った人物を模して作られたという説もあります。当時、そうした仕事を務めたのは女性でした。はるか昔、きたもっちゃん(仮)のように優しく微笑む巫女が実在したのでしょうか?
宮岡氷川神社前遺跡からは、他にも朱塗りの土板や石冠、土製の耳飾り、ヒスイ製の小玉など、呪い(まじない)の道具が数多く見つかっています。

縄文時代の人々が祭祀を行った場所が、現在は由緒ある神社になっているというのも興味深い点。呪いの道具に使われている朱色は、神社の鳥居や巫女が身につける袴の色と同じです。

小玉と垂飾(たれかざり)=ペンダント 北本市教育委員会『きたもとの縄文世界』より

 

朱を塗った土製の耳飾 北本市教育委員会『きたもとの縄文世界』より

左:異形土器出土状況 右:土製耳飾出土状況 北本市教育委員会『きたもとの縄文世界』より

縄文時代から祈りは続くよ、いつまでも

ところで「人形が持ち主に代わって悪いことを引き受けてくれる」という伝承を聞いたことはないでしょうか? 節句人形も、もともとはそういう考えから広まったようです。

実は、きたもっちゃん(仮)には足がありません。もともと壊された状態で、土器片を枕に寝ている姿で出土しました。
土偶の体をわざと壊すのは、病気やケガの身代わりになってほしいという祈りからだと考えられます。

戦争のない時代に祈ったことは、豊作、つまり自然災害や異常気象に見舞われずに植物が実りますように。子孫繁栄。家族が健やかでありますように、病気やケガにおそわれませんように。きっとそんな内容だったのでしょう。驚くほど、今のわたしたちと同じですね。
ずっと祈り続けるように、わたしたちの文化もまた縄文から今日へと続いてきたのかもしれません。

【連載 全11回】縄文と雑木林のまち、北本

自然とともに暮らすまち、埼玉県北本市。独自の縄文文化と豊かな自然を入り口に北本の暮らしの魅力を考えてみました。

第1回 都心から50分!人に一番近い自然ってなんだ?を埼玉県北本で考えた
第2回 感度の高い縄文人が集う、埼玉県北本。1万年前からずっと住みやすいまち「縄文銀座」で銀ぶらしてみた
第3回 100年に1度の大発見?関東最大級の環状集落「デーノタメ遺跡」は縄文のタイムカプセルだ!【埼玉】
第4回 縄文界に新アイドル誕生?北本土偶「きたもっちゃん(仮)」愛用の呪術アイテムも紹介!
第5回 デーノタメ遺跡で貴重な発見!なぜ北本縄文人たちは「オニグルミの土製品」を作ったのだろう?
第6回 縄文VS現代!災害リスクの低いまち、埼玉県北本市「どっちが住みやすいの?」対決
第7回 艶やかな七宝ジュエリーにドキドキ!作家・近藤健一さんが北本にアトリエを構える理由【埼玉】
第8回 埼玉県北本市に、今こそ行きたい店がある。日々の小さな幸せが見つかるgallery&cafe yaichi
第9回 人も、自然を構成する一部。縄文文化の根付く埼玉県北本市に聞いた「雑木林」の今
第10回 貴重な動植物の楽園!埼玉のまほろば、北本雑木林散歩が楽しい
第11回 ここは地上の楽園か?鷹やキツネ、希少な植物も育つ「トンボ公園」が教えてくれること【埼玉】
アイキャッチ画像:北本市教育委員会『きたもとの縄文世界』より

書いた人

岩手生まれ、埼玉在住。書店アルバイト、足袋靴下メーカー営業事務、小学校の通知表ソフトのユーザー対応などを経て、Web編集&ライター業へ。趣味は茶の湯と少女マンガ、好きな言葉は「くう ねる あそぶ」。30代は子育てに身も心も捧げたが、40代はもう捧げきれないと自分自身へIターンを計画中。