人と気楽に会話をするのって楽しいですよね。でも遠方にいる友人と会うのは中々難しい。趣味の話がしたいけど、近所では見つけられない。そんな人たちにとって有り難いSNSが登場しました。clubhouse(クラブハウス)は、インターネット上で音声による会話が楽しめるサービスです。2021年1月から爆発的な人気となり、利用者が拡大しています。
iPhone(アイフォン)やiPad(アイパッド)でclubhouseを起動すると、room(部屋)が表示されて、タップすると入室ができます。Moderator(モデレーター)とSpeaker(スピーカー)が話すのをラジオで聞くように楽しめますし、挙手ボタンを押してSpeakerとなって会話に参加することも可能です。
今までになかった画期的なサービスですが、「何を話したらいいのかわからない」「聞いていて会話がつまらない」という声も聞かれます。そこで、clubhouse寄席を開催して、テレビなどメディアで注目を集める上方落語家に、雑談の極意を聞いてみました! clubhouseって何? という方も、是非トーク力アップの参考にして下さい!
メンバー紹介
◆桂紋四郎(かつらもんしろう)
昭和63(1988)年生まれ。平成22(2010)年に三代目桂春蝶に入門。平成26(2014)年YouTube「桂紋四郎」チャンネル開設。令和2(2020)年12月、第15回繁昌亭大賞特別賞受賞。明るくて軽妙な語り口が人気。
◆笑福亭笑利(しょうふくていしょうり)
昭和58(1983)年生まれ。平成26(2014)年に笑福亭鶴笑に入門。令和2(2020)年12月、「若手噺家グランプリ」決勝進出。古典落語、新作落語、人形を使ったパペット落語など幅広い芸が特徴。
◆桂九ノ一(かつらくのいち)
平成7(1995)年生まれ。平成28年(2016)年に桂九雀に入門。令和2(2020)年12月、「若手噺家グランプリ」歴代最年少、最若手で決勝進出。古典落語の本格派と期待の星。
clubhouse寄席とは
令和3(2021)年1月に桂紋四郎さん、笑福亭笑利さん、桂九ノ一さんが「FM802」DJの樋口大喜さんとclubhouse上で出会って意気投合。その当日には、此花千鳥亭での落語会をclubhouseで同時配信の形で、初回開催を行います。落語会に出演の先輩落語家の桂雀太さんも、活動に共鳴して参加することになります。その後は22時より、それぞれの自宅から配信する「clubhous寄席」を2月末まで継続して開催。DJの樋口さんが進行するラジオのような新しい寄席スタイルが評判になり、テレビやラジオなどメディアで取り上げられました。
ミュートで合図を送れ!
ーー clubhouse寄席では、落語の合間に話す皆さんのトークが面白いです。つっこんだりもされてるし。会話が重ならなくて自然に聞こえますが、コツはありますか?
笑:会話と会話の間の隙間は見つけるようにしています。それから重ならないように、何人かはミュート※にしていたり。
紋:ミュートで合図を送ってるんですよ。
ーー と、言いますと?
紋: 例えば、九ノ一がチャチャ入れて、笑利が話を回すなと思った時は、そっちでやってくれよと、僕は参加せえへんから頼むでというサインですね。
九:それで、ミュートにしている紋四郎兄さんにも入ってもらいたいなと思ったら、「紋四郎兄さんどうですか?」って話を振るようにしています。
ーー 紋四郎さんが突然、歌を歌い始めた時があって、お二人の対応も面白かったんですが。
紋:ああ、19(ジューク)の曲ね(笑)。
九:もう一回歌わせたいなと思って、笑利兄さんと工夫したコンビプレーですね。
ーー そう言えば、二回歌われてました! 打ち合わせはしてないですよね?
紋:してないですね。お互いのことをよくわかっているのと、何となくこうなるやろうなという公式が入ってるので、できるところはありますね。
外部の人を入れるのも有効!
ーー clubhouseのroomで、身内の人だけで盛り上がったり、グダグダになったりとか多いみたいですが。
紋:外部の人を入れるというのも有効だと思います。clubhouse寄席だと、進行役の樋口さんの存在が大きいですね。落語の基本的なことの説明も、落語家同士で話すと硬い感じになってしまうし、面白くないと思います。
九:樋口さんが聞いてくれるから、自然な感じでわかりやすく説明できて助かっています。
ーー 最初に「レディースアンドジエントルマン」と樋口さんのかけ声から始まる独特のスタイルですよね。
笑:樋口さんはFMの生放送やってはる人なんで、落語はラジオで流す音楽のような扱いで、合間のトークをばしばし切ってくれるのでやりやすいです。僕らだけやったら、だらだら話してしまうと思います。
紋:「と、言うわけでございますが」と言われたら終わりなんだなとわかりますし。切ってくれるからかえって自由に遊べますね。
ーー 樋口さんは繁昌亭で落語を披露するほどの、落語好きなんですよね。プロとしての手さばきと共に落語愛も感じます。
喋ってすべってもいい!周りのフォローが大事!
ーー 話すのに勇気がいる人も多いと思います。すべったら、どうしようとか……。
紋:それは、フォローしてくれる人がいるかどうかですね。すべってる時に、「すべってるなあ」って言うだけでもいいんです。
九:笑い声が入るだけでも違います。
笑:とにかく、切り捨てないというか。
紋:すべることは、悪いことじゃないんです。だってすべってる人見るの、面白いじゃないですか。
ーー すべることは、悪いことじゃない! 名言ですね。
紋:すべってもいいんです。その後の助ける人が偉いんです。寄席の舞台でも多いですから。
笑:みんなすべってる経験もしてきてるし、すべるの怖いってわかってるから、組み体操を立て直すようにフォローするんです。みんな傷ついた経験してきてるから、助けたりとかができるんだと思います。
紋:支えへんことの方が腹立つんですよ。
九:めっちゃわかる(笑)
笑:支えへんかって変な空気になると、みんなが損するんですよ。寄席でも空気があったまってるのに、誰かがミスして知らん顔したら、また一から作らないといけなくなるし。
紋:おもんないなとかは、絶対言ったらだめですね。
落語のマクラは、奥が深い!
ーー 落語にはマクラ※がありますが、これは修行で習ったりするのですか?
紋:習ったりとかはしないですね。一門によっては、修行期間の3年はマクラを振ってはいけないと言われたりします。
ーー それは、どうしてですか?
九:マクラって難しいんですよ。落語の方が安心できたりします。
笑:マクラって人柄が出ますしね。
紋:寄席はトップバッターが失敗したら、次の人が処理しないといけないんです。年数の浅い若手は最初に出ますから、慣れるまでは落語から始める方が多いですね。
笑:その落語会を主宰している人に聞いて、一言だけ言って始めたりとかですね。
九:導入がきれいな方がお客さんが聞きやすいので、どんな風にやろうかと落語よりもよく考えてたりします。
ーー マクラって昔からあったのでしょうか?
紋:以前はこの落語にはこの小咄(こばなし)※をマクラにすると決まってたみたいですね。自由に落語家が考えて話せるようになったのは、戦後からなんです。
ーー マクラにも歴史があったとは! 奥深いものだったんですね!
サーバー落ちも乗り越える!上方落語のチームワーク力!
ーー 第7回clubhouse寄席で、紋四郎さんの落語『崇徳院(すとくいん)』※の途中で音声がとぎれた時に、素早く雀太さんがカバーされて感動しました。
紋:実は第5回で、もっとスゴいことがありまして。サーバーが落ちまくったんです。それで、僕らスピーカーがどんどんいなくなる現象が起こりまして。
ーー ええ!! 本当ですか!?
紋:とにかく、オチ言うまでやろうと、みんなで繋げたんです。
九:サーバーが落ちたら繋ぐっていう文化になったんです、僕ら。
紋:あの時は、集中しすぎて死にそうでした。いつ誰が落ちるかわからないから、死ぬ気で聞いて、このネタは僕ができる。あのネタは誰が出来るって考えて。
笑:あれは、しんどかった。その日は、終わったら朝まで眠れなかったですね。
ピンチの中で生まれたclubhouse寄席!
ーー コロナ禍で寄席公演の中止が続いた時期も、紋四郎さんは前向きに活動をされていたとか。
紋:ちょうど世間でテレワークという言葉が聞かれるようになった去年の2月ごろに、講談師の旭堂南龍(きょくどうなんりゅう)兄さんと、「僕らもテレワークやらなあきませんね!」って言い合ったんです。それで、すぐにYouTubeで『テレワーク落語会』の配信を始めたんです。そうしたらすごい喜ばれて。ピンチはチャンスだと思って、何かできることをやっていこうと思いました。それに一人で動くよりも、仲間とやった方が反響があるんですよ。やっている内に楽しいなあと思うようになって。こっちが楽しいなと思ったら、お客さんもついてきてくれるんです。clubhouse寄席もその流れですね。
九:一緒に面白いことやりたいって思えるから、後輩としてとても有り難いです。
笑:紋四郎兄さんが率先していち早くネット配信を始めたことが評価されて、繁昌亭大賞特別賞を受賞しました。兄さんが引っ張ってくれたお蔭で、繁昌亭YouTubeライブや、オンライン繁昌亭にも繋がったんです。これは、すごいことです。この賞は異例で、特別にもうけられた賞なんですよ。
ーー clubhouse寄席も新しい試みですが、落語に変化はありましたか?
紋:言葉だけなので、めちゃくちゃ鍛えられましたね。実はこの言葉は必要やったんやとか、めっちゃ立てなあかんなとか。落語の組み立てを、一から考えるようになりました。
clubhouse寄席をきっかけに、生の寄席へ足を運んで欲しい
ーー 質問コーナーで、参加者のお話を聞いていると、clubhouse寄席が落語デビューの人も多いみたいですね。
九:それは、一番のモチベーションになります。clubhouse寄席がきっかけで、落語に興味を持ったとか、実際に寄席へ行ってみたとか言ってもらえると、すごい嬉しいです。
紋:これがきっかけになって欲しいですね。
ーー やっぱり生の寄席へ行ってもらいたい気持ちが大きいですか?
九:そうですね。僕も生の寄席へ出演したら、お客さんが笑ってくれて、反応が返ってくることに、改めて感動しました。
笑:落語は、お客さんの笑い声があって、完結するものだと思います。是非、それを実際に体験して欲しいですね。
clubhouse寄席が進化して紅楽葉寄席に!
clubhouse寄席は、season1、season2で全16回の配信を終えて2021年2月でひとまず終了しました。3月11日には天満天神繁昌亭で初の落語会を開催します。
『天満天神繁昌亭 生クラブハウス寄席』
日時:2021年3月11日(木曜)19時開演(18時半開場)
会場:天満天神繁昌亭
料金:前売り2500円 当日3000円
『紅楽葉寄席(くらはよせ)』として活動することも決定しました。オファーがあれば、スタートアップメンバーを中心にして出向き、リアル落語会を開催します。clubhouseでも月に一度ほど配信予定です。どんどん進化していく新進気鋭の上方落語家たちの今後に、要注目です!
◎公演情報・オファーはこちらからどうぞ!