一万年サステイナブルの秘密③食
とはいえ、どんなに「自然の声を聴け」ても、人間社会が豊かでないのでは「サステイナブル」とはいえません。なんといっても農耕のすばらしいところは、おいしくて栄養価の高い食物を、安定的に得られるという点です。たとえば、人間の虫歯は農耕時代を迎えてはじめて増えてくるものと考えられています。農耕によってはじめて、糖分摂取量を上げることができるからです。
しかし、縄文人はこの点においても、決して農耕民族に負けていません! 縄文人は、世界の狩猟民族に比べるとかなり虫歯が多かったといいます。・・・いや、「負けていない」のはもちろん虫歯の数だけではありません。ここでは、縄文人の現代人さながらの食へのこだわり、そして現代日本人の原点ともいえる、食物への考え方をご紹介します。
「縄文人の世界」秋の広場より(新潟県立歴史博物館)
「食の国日本」の原点! 縄文飯はクオリティが半端じゃない
縄文遺跡から出土する食用と見られる動物の骨類は、実に多種多様です。シカやイノシシにとどまらず、ウサギ、熊、ムササビ、テン、リスにキツネ、ニホンザルまで! もちろんこれに魚介類、山菜、また栽培による穀物類も加わるのですから、彼らの食生活は現代にも匹敵するかなり豊かなものだったと思われます。そしてどうやら縄文人は、豊富な食糧を「おいしく」「長く」食べられる方法も編み出していたようなのです。
まず、土器により煮炊きが可能になったことで、火を通せば食べられる毒性の強い食物が料理に加わります。また、各地の縄文遺跡で見つかる「水さらし場」跡は、アクの強いトチやドングリの渋みを取るために使われたと見られています。さらには、土地によってはクッキーやパンのような保存食や、燻製を作る設備、また塩漬けや煮干しを作った跡も見つかっているのです! 縄文人は現代に匹敵する貯蔵技術を持っていた、いやむしろ、「食の国ニッポン」の原点は縄文時代にあるといって間違いなさそうです。
縄文人の食卓(上野原縄文の森)どんぐりのお団子、牡蠣の蒸し焼き、イノシシの燻製・・・とってもおいしそうです。