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2019.08.20

縄文人もミーハーだった!縄文中期の最前線トレンドは「信州ブランド」の黒曜石【長野】

この記事を書いた人

信州ブランドは何がすごいのか

村田さんは、八ヶ岳の黒曜石が「特別」であったとしたら、その理由はひとえに「質がいい」ことと、「色が美しい」ことの2点に限る、と言います。質がいい、というのは、混ざりものが少ないということ。黒曜石は天然鉱物ですから、黒曜石になりきれなかった「ただの石」や気泡がその中に混ざっている場合が多いのですが、「質がいい」黒曜石にはそのようなことが少ないといいます。純度が高い巨大な原石が採掘できれば加工もしやすく、加工がしやすければ様々な用途に応用できますから、縄文人が重宝したのも納得です。


星糞峠の黒曜石。(全て黒耀石体験ミュージアム蔵)手前の小さな原石は、質が悪いために縄文人が捨てたと思われる黒曜石。

しかし、良質な黒曜石が採掘できる主要産地は八ヶ岳だけではありません。日本最大の黒曜石鉱山を誇る北海道木古内でも、純度の高い黒曜石は豊富に採れたはずです。と、すれば、残された可能性はただ一つ、「見た目のよさ」です。


長野県産の黒曜石。(全て黒耀石体験ミュージアム蔵)


長野県外の黒曜石。(全て黒耀石体験ミュージアム蔵)

こちらは、各地で採掘された黒曜石を並べた図です。うん・・・? 漆黒の石が並べられている中、長野県産のもの、特に星ヶ塔や星糞峠のものだけ様子が違うのがおわかりでしょうか。黒曜石なのに黒くない、いやむしろ透明に近いのです。

ここで村田さんが、縄文人が長野県産の黒曜石で作った石鏃をみせてくれました。


縄文人製作の石鏃(全て黒耀石体験ミュージアム蔵)

いかがですか、この美しさ、この透明度・・・! 目に入った瞬間、思わずため息が出ました。黒曜石が「生活道具」である前に、まごうことなき宝石なのだと実感させられる美しさです。縄文人は、宝石で石鏃を作っていたのです。この、水晶のような神秘的な輝きに縄文人が見出していたであろう人智を超えたパワーや呪術性を垣間見た気がしました。少なくとも、これらがただの狩り道具ではなかったことは確実です。この透明度の高さ、幻想的な美しさが、縄文人を「狂わせるほど」夢中にし、信州産黒曜石を余所のものと一線を画する「ブランド品」にまで押し上げたのかもしれません。

書いた人

横浜生まれ。お金を貯めては旅に出るか、半年くらい引きこもって小説を書いたり映画を撮ったりする人生。モノを持たず未来を持たない江戸町民の身軽さに激しく憧れる。趣味は苦行と瞑想と一人ダンスパーティ。尊敬する人は縄文人。縄文時代と江戸時代の長い平和(a.k.a.ヒマ)が生み出した無用の産物が、日本文化の真骨頂なのだと固く信じている。