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2025.06.13

今春グランドオープンしたリーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクション。その心地よさは〝水〟にあり!

創業90周年を迎える2025年、約1年間を経て全面改装したリーガロイヤルホテル大阪は、4月1日に「リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクション」と名称も新たにグランドオープン。堂島川と土佐堀川に挟まれた中洲に立つ老舗ホテルは、今回のリニューアルで客室やロビーにも〝水辺の景観〟を取り入れました。目にするあらゆるものが心地いい――その一部をご紹介します。

ホテル名も新たに、時代を超えて愛される空間へ

行政、経済、そして美術館など文化施設が集中する大阪市北区の中之島。水と緑豊かなこのエリアに、リーガロイヤルホテル大阪の前身である新大阪ホテルが開業したのは昭和10(1935)年のこと。

大阪政財界からの「賓客のための近代的ホテルを大阪に」という要望に後押しされて誕生したホテルでした。以来多くの国賓を迎え、皇室にも利用され、名実ともに〝大阪の迎賓館〟であり続けてきました。大阪・関西万博の会場視察と開会式に臨席するため大阪を行幸された天皇皇后両陛下も、グランドオープンしたばかりの当ホテルを宿泊先として選ばれています。

経済と文化の中心都市としての大阪は、河川を利用した水運に支えられてきました。明治のころには「水の都」と呼ばれていましたが、中国大陸や諸国との交易拠点として栄えた歴史は飛鳥時代にまでさかのぼります。

そして21世紀を迎えた大阪では、川が都心部をロの字にめぐる世界でも稀な地形という水の回廊を中心として、水辺の空間や船着場の整備、護岸や橋梁のライトアップなど、「水の都」「水都大阪」というフレーズにふさわしいプロジェクトが進行中です。

今回のリニューアルに際し、リーガロイヤルホテル大阪は90年という歴史やアイデンティティを継承しながら、周辺に広がる〝水〟の魅力との融合を図ったのだとか。IHG ホテルズ&リゾーツのコレクションブランドのひとつ「ヴィニェット コレクション」という称号がホテル名に加わったことに、唯一無二の滞在を提供するという心意気や自信が見て取れるのです。

たとえば、東西ふたつの棟で1039室あった客室は、一部、2部屋を1室に改装して全1001室に。これは客室の快適さを優先させた結果です。そしてすべての客室インテリアとレセプションカウンターを刷新。和樂はここに注目しました。

立体織物による屛風がロビーでお出迎え

快適なホテル滞在になるか否か――それはチェックイン時に受ける印象でおおよそ予想できます。ロビーという公共の場はそのホテルの魅力を凝縮したものであるべきで、レセプションは迎えてくれるスタッフを含めてホテルの顔なのです。今回のリニューアルによる心地よさを最初に感じるのは、一新されたレセプションのカウンターでしょう。チェックイン・アウトの手続きを担うスタッフの背景に、美しい織物による屛風が設置されたのです。

カウンターの背景には14隻、クラブフロア専用のレセプションには6隻の、ドラマチックにライトアップされた西陣織の屛風が出迎えます。

この屛風を制作したのは、京都・西陣の老舗織物屋である「HOSOO」の細尾真孝氏。
「水をテーマに、躍動感と静けさが共存するような華やかさを意識しました。柄は連続性のなかに多様な表情が生まれるよう構成しています」(細尾氏、以下同)

連続性と多様性、これはホテルにとって重要なキーワード。HOSOOは江戸時代の1688年に本願寺より「細尾」の苗字を受け、西陣織物業として創業。西陣織は約1200年前の平安時代に貴族や武士階級、裕福な町衆の支持を受け、育まれてきた織物です。そんな歴史を背景に、HOSOOは和装をはじめインテリアや小物などの生活織物から建築物、世界的なハイブランドとのコラボなども。近年目覚ましいこの多様な活動は、西陣織の技術だけではない芸術性の高さと、HOSOOの哲学を物語っています。

1隻ごと互い違いに角度を変え立たせて設置する屛風。リーガロイヤルホテル大阪でゲストを迎えるにあたり、西陣織の伝統技法のひとつである「ふくらし織」が採用されました。
「見る角度や光の加減によって表情が豊かに変化する点が、ふくらし織の大きな魅力です。屛風という立体的な構造によって角度がつくことで、織物のテクスチャーが生み出す立体感はより際立ち、光の当たり具合で多彩な表情を見せてくれるのです。この屛風でふくらし織の魅力を最大限に引き出せたと思います」

立体的なふくらし織の表情が重なることで、とどまることのない〝水〟を表現したデザインがさらに魅力的なものに。

日本の立体織物の卓越した技術を用い、西陣織がもつ豊かな質感を現代的なデザインに応用することで、世界から注目を集めているHOSOO の細尾真孝氏。

世界のテキスタイルの標準である150cmという幅は、日本の織物の伝統的な基準よりはるかに大きいものですが、世界基準で西陣織を制作することができる織機をHOSOOが開発。その技術は今回の屛風にも生かされています。実際にカウンターの前に立って眺めると上品な華やぎのなかに躍動感があり、ホテル滞在という非日常への期待感も高まるのです。

ヘッドボードがアートピース!?

今回のリニューアルコンセプト「伝統美と水の融合」を最も間近に感じられるのが、客室ベッドのヘッドボード。全室の全ベッドに設置された〝芸術品級のインテリア〟です。

携わったのは川尾朋子氏。空中を移動する筆の軌跡を可視化した「呼応シリーズ」や、人が文字の一部になる作品「HITOMOJIシリーズ」など、アグレッシブな制作活動を続けて人気の書家です。古典を重んじながら多角的に〝書〟を捉える現代的な作品は、国内外で高く評価されています。

「川の流れと過ぎゆく美しい時間の重なり。変化する水面の光に乗せて浮遊する心。水面の光と心が融合するイメージをもって制作しました。サンライズ、デイライト、サンセット、ムーンライトと、一日の流れを水面に映る4つの光で表現しています」(川尾氏、以下同)

客室のカテゴリーに関わらず、全室に設置された川尾氏によるヘッドボード。澄んだ水面を思わせるブルーグリーンが、心地よい眠りと爽やかな目覚めをもたらしてくれそう。

その川尾氏の作品を、特殊な加工が施された織物で表現してヘッドボードに。上品なカラーも、見たことのないマテリアルも、きらめく水面をイメージさせます。実際に設置された客室で、川尾さんはこのような印象をもったと語ります。
「織物の質感がとても美しく、窓から入る光や照明によって表情が変わるのが新鮮です。空中での筆の軌跡を墨の滴りにより可視化したわたしの作品と、織物の糸が交差しているような仕上りにも惹きつけられます。部屋の中での作品の存在感や家具との調和など、繊細で美しいインテリアデザインに心が躍りました」

ロイヤルグリーンを基調とし、西洋のクラシックな様式を取り入れた建具を活かしたインテリア。

6歳から書を学んだ川尾朋子氏。古典を重んじながらさまざまな角度から捉えた〝現代の書〟を制作。JR京都駅前の「京都」や寺院の石碑など、シンボリックな揮毫も多数。

川尾氏の作品によるヘッドボードは全1001室に。このほか、グランド以上の客室には日本の伝統工芸である「箔」を用いたリビングアートも。客室にいながらアート鑑賞も楽しめるというわけです。

ホテルを起点に、アート探訪や万博会場へも

川に挟まれた景観豊かなエリアでの滞在を、心ゆくまで楽しみたくなるリーガロイヤルホテル大阪 。ここでの時間は南北に望む川のようにゆったりと流れているようです。

梅田や道頓堀などからは少々距離がある中之島に立つホテルですが、各方面からのアクセスも整えられています。JR大阪駅とホテル間には無料シャトルバスが用意され、京阪電車の中之島駅とは地下で直結。ホテル前には大阪・関西万博会場への直通バスの停留所があり、宿泊者限定で利用できるユニバーサル・スタジオ・ジャパンへの無料バスも…と、とっても便利。

今回のリニューアルに際し、数ある飲食店のうち、「レストラン シャンボール」や「オールデイダイニング リモネ」などは新たな装いに。一方で、柳宗悦らの民藝運動にもかかわりの深い陶芸家、バーナード・リーチの着想を再現した「リーチバー」や、地下のショッピングエリアは姿を変えず今も健在。また、ここを訪れるたび「グルメブティック メリッサ」でホテルブレッドを購入して帰るのが楽しみ…という和樂スタッフも! ちなみにメリッサの人気No.1は、軽いクリームを挟んだミルクフランスとか。いまなら、江戸末期に大阪高麗橋で創業した老舗和菓子店「鶴屋八幡」とコラボしたあんぱんも気になるところです。

滞在中一杯でもグラスを傾けに行きたい「リーチバー」。日本民藝のコレクションがさりげなく飾られています。

ホテルメイドのグロッサリーからパンやスイーツなど、種類豊富な品揃えの「グルメブティック メリッサ」。ホテル外から買い物だけに訪れる人もいるとか。

創業90周年の節目に、ホテル滞在という楽しみをさらにアップデートしたリーガロイヤルホテル大阪。ここでの宿泊を目的にした大阪旅行があってもいい――そう思わせてくれるホテルです。

リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクション

住所:大阪府大阪市北区中之島 5-3-68
電話:06-6448-1121
宿泊料金:2名1泊¥40,000~(諸税・サ別)
公式サイト:https://www.rihga.co.jp/osaka

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小竹智子

フリーの編集・ライター。 サーファーガールのファッション誌やアイドル誌、情報誌を経て、まったく畑違いの和樂に誘っていただき早や18年! ここのところ、50歳を過ぎての初ひとり暮らし(失笑)が楽しくて仕方なく、パンを焼いたり梅干漬けたり、パンを焼いたり味噌仕込んだり、パンを焼いたりキムチ漬けたり、パンを焼いたり塩麹つくったり、、、な日々。
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