最近では冬ギフトとも呼ばれる「お歳暮(せいぼ)」。年末の贈り物のことです。
お歳暮って、いつ、誰に、何を贈ればいいのでしょう。
結婚したら実家には贈る? それより仕事の上司に贈るべき? おつきあいの形は人それぞれで、一概には言えませんが……。お歳暮の歴史をたどってみると、答えが見つかるかもしれません。
「もらっても食べきれないよ!」 というアイテムが実はお歳暮の定番だったという驚きの事実と、その理由にも迫ります。
お歳暮はいつ贈る?
お歳暮という言葉には「年の暮れ」、つまり「年末」という意味があります。
いつから年末というかはっきりした決まりはありませんが、12月13日(地域によっては8日)が「正月事始め」といって、すす払い(大掃除)をしてお正月の準備を始める日にあたります。
現在でもお歳暮は、年末ムードが高まってくるそのあたり、12月13~20日ごろに届けるのがよいとされています。
ただし、関東ではもっと早くなってきていて、11月下旬~12月上旬に贈ることも増えているのだとか。お歳暮を贈りあっているうちに、相手より早め、早めにとなっていったのかもしれませんね。
お歳暮は誰に贈る?
もともとは親や親戚へ、大晦日またはお正月に食べる物を届けたのがお歳暮のルーツ。
現在では日ごろお世話になっている人へ、お礼として贈ります。
例えば仕事でお世話になっている人というのは、親方と弟子のような関係をイメージすると分かりやすいかもしれません。日々、仕事を教えてもらっている指導者などがあたります。
その場合、どちらかが異動や転勤になったら、そのタイミングでお歳暮を贈るのをやめるのが一般的です。お世話になってから3年、7年などを区切りのいい年数として、やめることもあります。
また、お歳暮はお祝いではなくお礼なので、相手が喪中でも贈ることができます。
仕事の取引先などへ年末のご挨拶として贈る場合もありますが、最近はコンプライアンスでお歳暮を受け取らない企業もあるので、少し注意が必要です。
お歳暮は何を贈る?
お正月のごちそうを年末に贈ったのが始まりなので、今でも食べ物を贈ることが多いです。お酒、ジュース、お菓子、ハム、冷凍のお肉などが定番。
特に東日本では鮭、西日本では鰤(ぶり)を「年取り魚」、「正月魚」と呼んで年越しに食べたことから、お歳暮には新巻鮭(あらまきじゃけ)や塩鰤を贈る伝統もあります。
新巻鮭というのは内臓を抜いて塩漬けにした鮭のことで、荒縄を巻いて干すことから、荒巻鮭とも書きます。
お正月に「なまぐさもの」を食べるのは、においが魔除けにもなると考えられていたから。また、凶事にあたって身を慎み、肉や魚を食べない「精進」の期間ではないということであり、「ハレの日」の証でした。
こうした歴史を考えれば、年末に手土産を持って実家に帰省するのも、お歳暮のうちと言えるのかもしれません。
なぜならお歳暮は「ともに同じものを食べる」ことに意味があったからです。
かつてお歳暮の定番だった新巻鮭は、「もらっても食べきれない」と思いませんか。実はそれも大事なポイント。
お歳暮の新巻鮭はどこへ?
親もとを離れてからも、お正月くらいはと帰省をする人が多いのではないでしょうか。一緒に食事をして、「冷凍庫に入らないから」と断っているのに、帰りにたくさんのお餅を持たされたりして。
「同じ釜の飯を食う」ということわざがあるように、人は同じものを、ともに食べることで絆としてきました。
だから、年末に届いた新巻鮭(あるいは塩鰤)は、半身をお返しにしたり、切り身にして周囲に配ったりしたのです。
年の瀬になると近所からお餅が届けられたりするのも、同じ理由。
人と会って一緒に食事をする、そんな当たり前のことが、当たり前でなくなった今。
お歳暮の意味に、改めて誰かと同じものを、ともに食べるということの尊さを感じます。
お正月にいろいろな家の冷凍庫をめぐる、鮭の切り身や餅に幸あれ。
参考書籍:
平成ニッポン生活便利帳
世界大百科事典
デジタル大辞泉