新米も出回りはじめ、ご飯のおいしい季節。和樂webでは、新米特集 全10回をお届けしています!日本の辺境・異境を物ともせずに旅に出る和樂スタッフが、「自分史上最高のご飯のお供」を、自前のお茶碗に盛ってプレゼン。故郷を思い出す味、取材で知った味…個性あふれる和樂スタッフの生の声をお楽しみください。
第8回「八島こんぶ店の特白とろろ」
選・古里典子
「ちょっと惜しいなぁと思うのは、削りたての鰹節の美味しさは広く知られているのに、ご飯のお供として昆布の削りたてについては知られていないこと」
物心ついたときから、昆布でご飯を食べていたという古里。江戸時代、北前船(きたまえぶね)によって大量の昆布が富山に運ばれた経緯もあって昆布消費量は国内トップクラスを誇る富山の出身です。“昆布でごはん”といっても、佃煮ではありません。ふわっと“削りたて”の昆布が地元の人には、最高のごはんのおともだとか。となると、お気に入りは「八島こんぶ店」。昭和初期に開業し、北海道産天然真昆布を扱う地元でも一目置かれる店。ここはふだんから削りたてを買うことができるのです。店に入るとガラスケースがあり、中には削られた昆布が山型に整えられて並んでいます。上段が白、下段が黒。色の違いは酢の加減の違いで、黒は味が濃い。白の中でも、特白とろろ・白とろろ・おぼろと形状が分かれており、地元の人は使い分けているそう。
「客は当面使う分だけ注文して買い、店もそのつど削って補充するので、新鮮なものが手に入るわけですね」
特上の意味をもつ「特白とろろ」はその白さとやわらかさに注目を。昆布板の芯の部分を、極めて細い刃で削り上げるため、シフォンのようなとろろに仕上がるのでした。
「ご飯のお供として炊きたてのご飯の上にのせると、湯気にあてられて昆布の香りが立つんです。ホワホワと昆布がご飯の上で躍る姿も幸せな気分になります。この景色あっての美味しさなんです」
◆八島こんぶ店
住所 富山県富山市越前町5−11
新米特集 全10回
第1回 ちりめん山椒
第2回 ふくやの明太子
第3回 生あみ
第4回 養肝漬
第5回 いか塩辛
第6回 細切り柚子昆布
第7回 金糸瓜の粕漬
第8回 特白とろろ
第9回 牛肉茶漬
第10回 かえりちりめん