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2019.12.25

大阪「絹谷幸二 天空美術館」のアクセス・展示作品・楽しみ方は?見どころ解説!

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関西へ旅行に訪れる外国人が高確率で立ち寄る、人気スポットがあります。それは、JR大阪駅から徒歩約9分の梅田スカイビル。40階建ての超高層ビル2棟を最上部の「空中庭園」で連結させた斬新なフォルムは、完成から20年以上経過しても、前衛的な魅力を保ち続けています。2008年に英紙「THE TIMES」で、パルテノン宮殿やサクラダ・ファミリアと並んで「世界の建築TOP20」に選ばれると、口コミで評判が広がり海外の旅行者や建築愛好家がこぞって訪れる名所となっています。

アミューズメント感覚で楽しめる最新型ミュージアム

2016年にはこの梅田スカイビルタワーウエスト27階に、「絹谷幸二 天空美術館」がオープン。眺望の良さと世界初の試みである絵の中に飛び込む3D映像や、迫力ある絵画や造形の展示が話題となり、体験型ミュージアムとして注目されています。

入場すると、天空をイメージさせる幻想的なプロローグ空間、シンボルゾーンが出迎えてくれます。この内部へ入ると180度のラウンドスクリーンによる3D映像「夢無辺」を見ることができます。手渡された3D用のめがねを装着していざ、体験!!

す、凄い!! 原色の絵画が間近に迫ってきて、音楽と共に次第にその絵の中に自分自身が溶け込んでいくような錯覚を覚えました。大阪城や満開の花びらが咲き誇る映像から、龍が出現して、その口の中に吸い込まれて、あっ!!と思っていると、風神雷神が登場して勇壮なイメージに変化していきます。百花繚乱とはまさにこういうことかと、しばらく余韻の残る濃密な時間でした。この作品と新作3D映像「平治の乱」とでトータル10分ほどの上映です。アミューズメント感覚で、誰もが楽しめる3D、これはお勧めですね。一緒に体験した外国人観光客も、感嘆の声をあげていました。

目から色彩を吸収して元気に!! 色に込める作者の思い

天空美術館名誉館長で画家の絹谷幸二さんは、東京藝術大学大学院壁画科修了後、ヴェネツィア・アカデミアに留学。アフレスコ(壁画技法)を深め、帰国後に最年少で安井賞を受賞。独創的なスタイルを確立して、現代画壇をリードし続けています。自身の作品を解説する時には、「普段、野菜・果実・肉・魚などカラフルな食材を食べて元気になるように、この美術館では目から色彩を吸収していただき脳の活性化を促し元気になってもらいたい」この言葉をよく口にされると、アシスタントキュレーターの高橋暁生さんが教えてくれました。確かに色鮮やかで力強い作品からは、元気がもらえる気がします。

「祝・飛龍不二法門」

3D映像の中にも取り入れられたこの作品は、油絵と日本画が融合されたような独自の世界観のミクストメディア。絵の中に書かれた文字が印象に残ります。「この不二法門は仏教の言葉で、相反するものはそれぞれ別のものではなくて、一つのものの部分であるという意味だそうです」と高橋さん。奈良県出身の絹谷さんは仏教に造詣が深く、アフレスコを志したきっかけは東京藝術大学油絵科3年の頃に目にした奈良、法隆寺の壁画だったそう。かつて法隆寺で火災が発生して多くの壁画が被害を受けましたが、朽ち果ててしまった法隆寺に無常を感じ、全てのものは朽ちていく運命を悟りながらも、その中で燦然と輝く壁画から未来への希望を見出したといいます。イタリアの留学で身につけた豊かな色彩表現と、生まれ育った奈良の土地からくる和の心が見事に合わさっていて惹きつけられる作品です。

壁画の技法で身につけたダイナミックさ

展示は作品イメージから導かれた「青」と「赤」のエリアに分かれていて、間近で楽しむことができます。様々な経験を積んで独自の技法を身に着けた画家だけに、これが同じ作者から生み出されたものかと驚くぐらい多彩でユニークで、見ていて飽きません。

展示ゾーン「青」

青の展示ゾーンでひときわ目につくのが、「天孫降臨Ⅰ」「天孫降臨Ⅱ」の200号2枚組の大作。「古事記」編纂1300年にちなんだ作品で、アマテラスオオミカミの勅令を受けて、ニギノミコトが地上へと向かう姿が描かれています。

ダイナミックで活力がみなぎっているこの作品は、2019年現在76歳の絹谷さんが7年前に完成させたと聞いてびっくり!今もなお、絵を描く熱意に溢れているそうです。絹谷さんが習得したアフレスコ技法は、生乾きの漆喰を壁に塗り、漆喰が乾ききらない内に水で溶いた顔料で直に絵を描く技法です。まさに時間との戦いで、漆喰が乾くまでの24時間以内に仕上げなくてはいけない過酷なもの。この技術を習得していることもあって、絹谷さんは制作のスピードがとても速いそう。絵から感じ取るエネルギッシュさは、そんなことも関係しているのかしれません。

「天孫降臨「Ⅰ」」

「天孫降臨「Ⅱ」」

あえての遊び心がカッコいい!!

絹谷さんの作品には、確かな技術を駆使しながら、くすっと笑ってしまうものもあります。目が釘付けになったのが、こちらの作品。なんだか楽しい気持になりますね。

「波乗り七福神」

絵画の中に文字を入れたり、このような遊び心のある作品を発表するのには、絹谷さんのある思いからだそう。「自分自身があえて型破りな表現をすることで、後に続く子どもたちや若いアーティストの表現に広がりが出るという目的から制作されています。枠に囚われない表現が大切との考えをお持ちですね」と高橋さん。あえての面白い表現と思うと、カッコいいですね!!

圧巻のアフレスコ画ゾーン

赤のゾーンでは、アフレスコの作品を見ることができます。これらの作品は、元々は東京青山にあったこどもの城 国立総合児童センターの壁画として親しまれていたもの。2015年に惜しまれながら閉館となり、建物は取り壊されてしまいました。それがこの壁画は残り、こうして見ることができます。ストラッポという特殊な技法を使い、壁画の表面数ミリだけを剥がし取り、キャンバスに移し、展示されています。この技法のお蔭で、名物だった壁画を消滅の危機から救うことができました。

アフレスコ画「アラベスク」

眺望最高のおしゃれなカフェスペース

こちらの美術館には、見晴らしの良いカフェスペースがあるのも人気の要因の1つ。お茶を飲みながら、絶景が楽しめます。私が訪れた日は少し曇り空でしたが、明石海峡大橋を遠くに眺めることができました。時間帯によっても雰囲気が変わり、夕焼けを眺めるのもムードたっぷりでお勧めですね。壁面には、長野オリンピック公式ポスターに使用された絹谷さんの版画なども飾られています。

絹谷幸二 天空美術館基本情報


住所:大阪市北区大淀中1-1-30梅田スカイビルタワーウエスト27階
開館時間:10時~18時 金曜、土曜、祝前日は10時~20時 (入館は閉館の30分前まで)
休館日:火曜日(祝日の場合は開館、翌日が休館)年末年始、展示模様替え期間
入館料:一般1000円 大学、高校、中学生600円 小学生以下無料
公式ウェブサイト
※美術館では、月に一度キュレーターによる「アフレスコを描く」ワークショップを開催。対象は大人~小学生(中、高学年)、参加費:大人2000円、大・高・中学生1600円、小学生1500円。展示解説付き。申し込みはホームページより。