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2026.05.30

鮮やかな岩絵の具の色彩にうっとり。絵師・木島櫻谷の美しい色使いに魅了される 美容家・石井美保の「和魂美才」vol.15

美容家・石井美保さんが、日本文化と和装の魅力を伝える連載「和魂美才」。今回は、泉屋博古館(せんおくはくこかん)東京にて開催中の「企画展 ライトアップ木島櫻谷Ⅲ―おうこくの色をさがしに」を訪れました。 明治後期から昭和初期まで、京都画壇で活躍した木島櫻谷(このしまおうこく)の日本画を泉屋博古館東京館長の野地耕一郎さんの解説により、堪能しました。スケールの大きな屏風は圧巻のひと言です。

色の洪水を浴びるかのような岩絵の具の鮮やかな魅力

「企画展 ライトアップ木島櫻谷Ⅲ―おうこくの色をさがしに」看板前の美保さん。ブルーが爽やかです。

木島櫻谷の「燕子花図かきつばたず」(前期展示)を前に、泉屋博古館東京館長の野地耕一郎さんから説明を受ける美保さん。

石井美保(以下、石井):私、実はこの美術館に初めて訪れました。通るとき、閉館していることが多いような……(笑)。

野地耕一郎(以下、野地):いつも閉まっている、とよく言われます(笑)。うちの美術館は公益財団法人なのですが、閉館しているときは研究をしているのです。今回は、2027年に計画している〝生誕150年 木島櫻谷〟の回顧展に向けた準備段階の展示で、パートⅢとなります。パートⅠからここ3年かけています。

石井:美術館の展示は準備期間が長くて大変そう。
今回は色がテーマなのですね。岩絵の具がこんなにも鮮やかなのに驚きました。特にこの「燕子花図」の青が驚くほどくっきりしていて…。

野地:はい。岩絵の具は、基本的に天然鉱石を砕いた絵具です。青=群青ぐんじょうの岩絵具はアズライト(藍銅鉱)やラピスラズリなど。粒子が粗いと濃紺に、細かくなるほど淡い水色になります。

石井:岩絵の具って、近くで見るとさまざまな色味が混ざり合っていて、キラキラ光る部分もあって、本当にきれいです。

野地:「燕子花図」といえば、尾形光琳の国宝「燕子花図屏風」がよく知られていますね。思い出してみてどうでしょう? 尾形光琳のものと比べると、こちらの木島櫻谷の作品はかなり明るいのです。

石井:全体が明るいから青が印象的だったのですね。

野地:はい、こちらの木島櫻谷の「燕子花図」は大正中期の作品で、大阪茶臼山にあった住友本邸の大広間=表書院に飾るために描かれました。空間に爽やかさを求め、明るい色調になったのです。一方の尾形光琳の国宝「燕子花図屏風」は、かなり暗め。というのも、江戸時代は蝋燭の光で見ていたから、絵の具も塗り重ねて濃くしなければならなかったのです。

圧巻の「燕子花図」屏風は金6:緑3:青1の黄金比。納得の美しさ


「燕子花図」大正6年(1917)/泉屋博古館東京(前期展示)

アップで見ると、「燕子花図」の青の岩絵の具のきらめきがよくわかります。

柳桜図やなぎさくらず」大正6年(1917) 絹本金地着色/泉屋博古館東京(前期展示)

「柳桜図」の部分アップ。布を貼ってあるかのような胡粉の立体感に魅了されます。

石井:なるほど。色の濃さも時代背景が大きな要素なのですね。そして、金の存在感にも圧倒されます!

野地:実は今回、木島櫻谷作品の色分析をして、色の割合を円グラフにして作品解説に添えてあるのです。この「燕子花図」は金、緑、青が6:3:1の黄金比なんですよ。

石井:素晴らしい! だからこその美しさ。説得力がありますね。それにしても、屏風の大きさは迫力があって驚きます。

野地:設置していた表書院の大きさが想像できますね。そして、この屏風は左右の真ん中は絵が少し低くなっているのがわかりますか? ここに主人が座るためにあえてこんな構図になっています。

石井:そういうことですか! お話を伺うたびに、印象が深まるのを感じます。美術館で実物を見る醍醐味は何ものにも代えられないですね。
さらに、「柳桜図」もすごいです。近寄って見ると、びっくりするほど胡粉が塗り重ねてあって。

野地:全体の大きさや印象とともに、近くだからこそわかる立体感や色の微妙な発色具合も楽しんでください。

「鹿図」大正時代・20世紀 絹本着色/個人蔵 

石井:花の屏風のダイナミックな表現と異なり、「鹿図」はかわいいですね。牡鹿なのに表情がやわらかい。

野地:色味は茶色のグラデーションですが、絵が描かれた絹の裏側には全体に金箔が押されています。

石井:光がふわりと感じられて、穏やかな印象を受けるのは、そんな技巧が使われているのですね。

野地:こちらの屏風は京都の商家、町屋などから注文を受けて制作したものかもしれません。祇園祭のときなど、店先に飾っていたのです。注文を受けてから納期まで日にちがないので、色数が少なくて仕上げられるもの、遠くからぱっと見ても理解できるようにと、動物画が多く描かれました。

石井:え、そんな秘密があったのですか? 面白いです。作品が描かれた事情背景を想像すると、また見え方が違ってきます。

差し色の妙手。木島櫻谷の色使いを学ぶ

第2展示室には、小品が展示されている。

「孔雀」昭和4年(1929)頃 絹本着色/櫻谷文庫

唐美人図とうびじんず」大正時代・20世紀 絹本着色/泉屋博古館東京 

実際に使われていた岩絵の具を見る美保さん。

ガラス瓶に詰められた岩絵の具。粒子の大きさによってたくさんの色が。/櫻谷文庫

石井:こちらの展示室は小品が展示されていて、一点ずつ見ていくのも楽しいですね。

野地:こちらは、なかでも円の色分析がわかりやすいと思います。繊細なグラデーションはもちろんですが、差し色が効果的に使われているものが多く、興味深いのではないでしょうか。

石井:「孔雀」の青や、「唐美人図」の赤は、アクセントカラーが小気味よく素敵です。色のバランスは、本当に勉強になります。

野地:木島櫻谷が実際に使っていた、岩絵の具の展示も楽しんでいただけると思います。

石井:1色ずつがとても美しくて、帰りに文房具屋さんに寄って、岩絵の具を買い込みそうです(笑)。実は素敵な展示を見ると、「私も描いてみたい」と、色々材料を買い込んでいるのです。まだ、使って描いたことはないのですが、いつかきっと描けると信じています!

「企画展 ライトアップ木島櫻谷Ⅲ―おうこくの色をさがしに」概要

2026年7月5日(日)まで
(前期 5月31日(日)まで/後期 6月2日(火)〜7月5日(日)まで)

会場:泉屋博古館東京
住所:東京都港区六本木1丁目5−1
開館時間:11:00〜18:00(金曜日は19時まで開館/入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日
展示お問い合わせ: 050-5541-8600
展覧会公式ウェブサイト
https://sen-oku.or.jp/program/t_202604_spotlightokoku3/

インタビュー・本文/國藤直子(STRIPE) 写真/目黒智子 着付け/星山奈保子 ヘア/高倉里美 撮影協力/泉屋博古館東京
着物協力/wasou(TAKAMI BRIDAL)[訪問着]商品名:ミントグリーン雲取疋田雪輪に四季花 レンタル価格:¥77,000(税込) [帯]商品名:金斜め紐取四季花華文 レンタル価格:¥11,000(税込)


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石井美保

美容家、トータルビューティーサロンRiche代表。深い美容愛とさっぱりした物腰で、幅広い層にファンが多い。自身の経験に基づく美容法とコスメ選びは、常に注目を集めている。
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和樂web編集部

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