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2026.08.20

【来日直前!】フェルメールの傑作《真珠の耳飾りの少女》と2026年展覧会の見どころ解説

世界中で愛され続ける、ヨハネス・フェルメールの《真珠の耳飾りの少女》。2026年8月21日から9月27日まで、大阪中之島美術館にて「フェルメール 《真珠の耳飾りの少女》展」が開催されます。今回は名画の来日に先立ち、先日オランダを訪れ、本場マウリッツハイス美術館で実物を鑑賞してきたばかりの「美術初心者・web編集担当K」が、和樂編集部に在席しながら美術書籍も数多く手がける「書籍担当G」に素朴な疑問をぶつけながら、その美の秘密に迫ります。

世界中を熱狂させる名画《真珠の耳飾りの少女》とは?

ヨハネス・フェルメール《真珠の耳飾りの少女》1665年頃 油彩/カンヴァス 44.5×39 cm マウリッツハイス美術館 (C) Mauritshuis. The Hague

K:先日旅行でオランダのマウリッツハイス美術館を訪れ、《真珠の耳飾りの少女》を鑑賞したのですが、部屋に入った瞬間にハッと息を呑むような存在感がありました。今回の来日も大ニュースになっていますが、美術初心者としてシンプルに、この絵の人気の理由を知りたいです!

G:私も現地で鑑賞したことがありますが、本当にオーラがありますよね。この絵がここまで世界中で愛されている理由は、大きく言うと、「少女が今、目の前にいるかのような存在感」「鮮烈な色彩の対比」「計算された視線誘導」にあると思います。

まず、この絵は実在の人物を描いた肖像画ではなく、「トローニー」と呼ばれる、不特定の人物の頭部や上半身を描いた作品だと考えられています。真っ黒な背景の中から振り向く少女の姿だけを切り取っているため、余計な情報が入らず、少女そのものの存在感がまっすぐ観る人に届くんです。

さらに印象的なのが、青と黄色、そして白の使い方。白い襟、青いターバン、黄色い衣装、真珠や瞳、唇に入る白いハイライトが、暗い背景の中で強く浮かび上がる。でも輪郭はやわらかくぼかされているので、色は鮮やかなのに、作品の纏う空気は穏やかでやさしい。その強さとやわらかさが同居しているところに、この絵ならではの魅力がありますよね。

K:なるほど! 鮮やかなのにきつく見えないのは、輪郭や光の入れ方まで計算されているからなんですね。

G:そうなんです。しかも構図もとてもシンプルだから、視線が自然と少女の顔、そして真珠へと引き寄せられる。見た瞬間に忘れられなくなるのは、その“見せ方”が本当に巧みだからだと思います。

謎多き天才。作者「ヨハネス・フェルメール」とはどんな人?

K:そもそも、作者のヨハネス・フェルメールってどんな人物だったのでしょうか?

G:フェルメールは1632年、オランダのデルフトに生まれ、1675年に43歳で亡くなった画家です。生涯のほとんどをデルフトで過ごしたと考えられていて、1653年には画家のギルドである「聖ルカ組合」に加入し、同じ年に結婚もし、14人の子供をもうけています。家庭を持ちながら制作を続けた画家だったんですね。

ただ、誰に絵を学んだのか、自画像はあるのか、現存する作品のうち何点が真作なのかなど、今もはっきりしないことが多い。だからこそ“謎多き画家”と言われることが多いのだと思います。一方で、当時のデルフトでは、聖ルカ組合の理事も2度務めていて、きちんと評価されていた画家でもあったんです。

K:生涯で残した作品数がとても少ないと聞いたのですが、具体的に何点くらい現存しているのでしょうか?

G:一般には30数点と言われますが、研究者によって幅があります。フェルメールは43歳で亡くなっていますし、所在不明の作品やさまざまな理由で失われた作品もあったと考えられています。現存作品数の少なさもこの画家の特徴のひとつですね。

制作年がはっきり分かっている作品として挙げられるのが、《取り持ち女》《天文学者》《地理学者》の3点です。《取り持ち女》は1656年、《真珠の耳飾りの少女》は1665年頃とされていて、《天文学者》は1668年、《地理学者》は1669年の作。ほかの作品については、研究者が作風や技法などから大まかな制作年を推測しているんです。

K:なるほど。作品数が少ないうえに、制作年代がはっきりわからないのも、余計にミステリアスなんですね。

G:そうですね。《真珠の耳飾りの少女》がとくに印象的なのも、その完成度の高さに加えて、そうした「わからなさ」も魅力の一部になっているからかもしれません。

フェルメールが生きた時代。なぜ「日常」を描いたのか

K:彼が生きた17世紀のオランダ・デルフトという街の背景や、フェルメールの絵画スタイルの特徴についても教えてほしいです!

G:フェルメールが生きた時代のオランダは、独立戦争を経て共和国となり、市民の力が大きくなっていった時代でした。それまで絵画は、王侯貴族や教会のために描かれる大きなサイズの歴史画や宗教画が高く評価されていたけれど、オランダでは裕福な市民が自宅に飾るための、小ぶりな絵画の需要が高まっていったんです。

その流れの中で、フェルメールも神話や聖書の世界だけでなく、手紙を読む女性、楽器を奏でる人、身支度を整える場面、牛乳を注ぐ女性といった、身近な日常を描くようになっていきました。人々の日常生活の様子を描いた絵を「風俗画」と言いますが、その風俗画の中でもこうしたモチーフは、時代や国が違っても私たちの生活と重ね合わせやすいですよね。だからフェルメールの絵は、昔の西洋絵画でありながら、どこか親しみやすく感じられるんです。

K:たしかに、宗教画や神話画よりも、日常のワンシーンのほうが共感できるし、ぐっと身近に感じます。フェルメールが今でも広く親しまれている理由のひとつなんですね。

G:そう思います。しかも彼は、単に身近な場面をそのまま描いただけではなく、窓から差し込む光や静かな室内の空気まで含めて、美しく理想化して見せている。日常なのに、どこか永遠の一瞬のように感じられるのが、フェルメールらしさなんですよね。

K:時代の需要に応えながら、自分の美意識もしっかり作品に込めていたんですね。

G:そうですね。世の中の流れを受け止めつつ、芸術家として自分の描きたいものを研ぎ澄ませていった。それも、フェルメールの魅力だと思います。

なぜ心に残る? フェルメール特有の「青と黄色」の魔法

K:フェルメールの絵を見ていると、「青と黄色」の組み合わせが鮮烈に心に残ります。この少女の青いターバンと黄色の衣装の対比も、黒い背景に対してとても際立っていますよね。なぜこのふたつの色彩がこれほど印象的に使われているのでしょうか?

G:まず青に使われているのは、ラピスラズリという鉱石から作られる『ウルトラマリン』という高級顔料です。当時は金と同じか、それ以上に高価だったとも言われていて、フェルメールはこの美しい青をとても効果的に使っています。目立つ場所だけでなく、衣装の暗い部分などにも青を忍ばせているんですよね。

一方の黄色は、その青と隣り合うことでお互いを引き立てる役割を果たしています。深く澄んだ青と明るく温かい黄色。その対比によって、少女が暗い背景の中でぐっと鮮やかに立ち上がるんです。しかも、黄色い衣装にも青みが潜んでいたりして、単純な二色では終わらない奥行きがある。

K:ただ派手な色を置いているわけではなくて、色同士の響き合いまで計算されているんですね。

G:そうなんです。そして《真珠の耳飾りの少女》の場合、この青いターバン自体がとても大きな役割を果たしています。顔のすぐそばに青があることで、肌の明るさがいっそう引き立つ。もしターバンがなければ、ここまで印象に残る作品にはならなかったかもしれない、と感じる人がいるのもよく分かります。

K:なるほど。たしかにあの青があるからこそ、少女の顔がぱっと浮かび上がって見える気がします。

G:さらにターバンや真珠には、当時のオランダにあった異国趣味への憧れも感じられます。海洋国家として発展していた時代の空気が、装いの中にもにじんでいるのかもしれませんね。

白の一筆。真珠の耳飾りに隠されたポイント

K:タイトルにもなっている真珠の耳飾りですが、あの立体的な輝きにはどんな秘密があるのですか?

G:フェルメールは“光の画家”とも言われますが、この作品を見るとそれがよく分かります。真珠だけでなく、瞳や唇にも、それぞれ違う色や質感のハイライトが入っていて、少女がそこにいるかのような存在感がありますよね。

ターバンには、白い絵の具を点のように置く「ポワンティエ」という技法が使われています。ほんの小さな点なのに、そこに光が宿ったように感じられる。フェルメールはこうした表現を、他の作品でもパンや牛乳のような日常のモチーフにも活かしています。それが画面全体にみずみずしさを与えているんですね。

さらに面白いのが、真珠そのものだけではなく、服の白い襟の明るさが真珠に映り込むように見える。そうしたことで、あの丸みや立体感が生まれているんです。細部まで描き込みすぎるのではなく、光と色のバランスで形と輝きを立ち上がらせているところに、フェルメールのすごさがあります。

K:たしかに、ただ白い点があるだけじゃなくて、周りの光まで含めて真珠が輝いて見える感じがします。すごく繊細ですね!

G:そうなんです。繊細なのに、印象は鮮烈。その絶妙なバランスが、この絵を特別なものにしているんだと思います。

少女が佇む優美な館。オランダにあるマウリッツハイス美術館とは

マウリッツハイス美術館 (C) Mauritshuis, The Hague

K:今回私が訪れた、《真珠の耳飾りの少女》が収蔵されているオランダの『マウリッツハイス美術館』についても触れさせてください。オランダの政治の中心地であるハーグという街にあって、まるで水辺に浮かぶ宮殿のような、本当に美しい美術館でした!

G:マウリッツハイス美術館は、もともと17世紀の邸宅だった建物なので、建物自体にとても気品がありますよね。格調高い室内装飾の中でフェルメールやオランダ絵画の名作を見る体験そのものが、とても贅沢なんです。大規模な美術館とはまた違って、作品と静かに向き合えるのも魅力だと思います。

それに、フェルメールが生まれ育ったデルフトが近いのも特別ですよね。作品が生まれた土地の空気を感じながら、絵を見ることができる。他の国でフェルメールの名画を見るのとはまた違う、絵が生まれた場所に入っていくような感覚があると思います。

K:すごく分かります。マウリッツハイス美術館を訪れたことで、私も、ただ名画を見たというだけじゃなくて、絵画の中に入っていくような感覚がありました。クラシックで温かみのある室内の中で、少女の絵が生き生きと輝いていたことが印象的でした。

G:《真珠の耳飾りの少女》をあの美術館で見る体験は、本当に特別ですよね。だからこそ、その作品が日本に来るというのは、とても貴重な機会だと思います。

『フェルメール原寸美術館 100% VERMEER!』について

K:そんなフェルメールの作品を、原寸大の迫力でじっくり楽しめるのが、『フェルメール原寸美術館 100% VERMEER!』(小学館)。編集担当のGさんから見て、この本の注目ポイントはどこですか?

G:この本のいちばんの魅力は、フェルメール作品をほぼ網羅していて、原寸、あるいはそれ以上の拡大率で細部まで見られるところです。《真珠の耳飾りの少女》は150%、《レースを編む女》は300%など、高倍率で掲載されていて、美術館では見逃してしまいがちな部分までじっくり観察できるんです。

たとえば、おくれ毛の描き方、ターバンに置かれた白い点、真珠のハイライト、やわらかくぼかされた輪郭。雑誌などの小さな写真では見えにくい部分が、この本だと驚くほどよく分かります。人気作品が展示された会場はどうしても混雑しがちですが、本なら自分のペースで細部を鑑賞できるのも大きな魅力ですね。

作品によっては原寸以上に拡大した図版を掲載し、繊細な描写と絵の中に秘められた数々の謎を読み解く楽しみも

『フェルメール原寸美術館 100% VERMEER!』試し読みはこちらから

K:作品を見る前の予習にも、見たあとに思い返すためにもよさそうですね。

G:そうですね。しかもこの本は、単に作品を並べているだけではなく、テーマごとに眺められる構成になっているのも面白いんです。青と黄色のハーモニー、光に満ちた輝く白、笑う人々、音楽のある日常など、フェルメール作品で繰り返し使われるモチーフや主題が見えてくる。真珠や楽器、地図といった要素も、作品を横断して読むと印象が深まります。

K:一枚ずつ見るだけじゃなくて、並べて見ることでフェルメールらしさが浮かび上がってくるんですね。

G:まさにそうです。フェルメールは現存作が30数点と少ないからこそ、全体像をつかみやすい画家でもあります。初めて触れる方にも、すでに好きな方にも、この画家はこういう世界を描いていたんだと立体的に感じられる一冊だと思います。

K:本で細部やテーマを予習してから美術館で作品を見ると、感動の深さが変わりそうですね。ますます会場で見たくなりました!

この夏、大阪中之島美術館で開催される《真珠の耳飾りの少女》展の見どころは?

K:今回の展覧会では、どんなところに注目するとより楽しめるのでしょうか?

G:まずは、瞳、唇、真珠のように光が集まる場所を意識して見ること。そして、青・黄・白の配色、やわらかい輪郭、背景を極限までそぎ落として人物を際立たせる構図に注目してみてください。本で細部を見ておくと、会場では逆に全体の佇まいの美しさがより鮮明に感じられるはずです。

K:今回の展覧会では、《真珠の耳飾りの少女》のほかに具体的にどんな作品が見られるのでしょうか?

ヨハネス・フェルメール 《ディアナとニンフたち》 1653-1654年頃 油彩/カンヴァス 97.8×104.6cm マウリッツハイス美術館 (C) Mauritshuis, The Hague

G: 今回は、マウリッツハイス美術館所蔵のフェルメール作品から、《真珠の耳飾りの少女》と《ディアナとニンフたち》の2点が出品されます。《真珠の耳飾りの少女》の来日は14年ぶり。それだけでも特別ですが、フェルメール初期の貴重な《ディアナとニンフたち》もあわせて見られるのが大きな魅力だと思います。さらに本展は「17世紀オランダ絵画の名品、奇跡の再来日」とうたわれている通り、フェルメール作品だけでなく、同時代のオランダ絵画の魅力にもふれられる構成になっているんです。《真珠の耳飾りの少女》を一枚の名画として見るだけでなく、17世紀オランダ絵画の流れの中で味わえるのも、この展覧会の見どころのひとつだと思います。

K: フェルメール作品だけでなく、17世紀オランダ絵画全体の流れの中で見られるのは、理解がぐっと深まりそうですね。

開催概要

展覧会名:フェルメール 《真珠の耳飾りの少女》展 17世紀オランダ絵画の名品、奇跡の再来日
会期:2026年8月21日~9月27日 ※日時指定制
会場:大阪中之島美術館 5階展示室
公式サイト:https://vermeer2026.exhibit.jp/
※展覧会チケットは8月20日時点で売り切れの可能性があります。あらかじめご了承ください。

書籍概要

書籍名:『フェルメール原寸美術館 100% VERMEER!』
価格:3,850円(税込)
判型/頁:A4判/200ページ
出版社:小学館
公式リンク:https://www.shogakukan.co.jp/books/09682275

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和樂web編集部

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