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魯山人の魅力 その四、自由奔放!
魯山人は、原典となる秀作をアレンジした「本歌取り」を行って、数多くの傑作を生み出しました。
この『椿鉢』は、尾形乾山(けんざん)の名作として知られる向付に描かれた椿の文様を取り入れ、琳派が得意とした図案化に倣って花弁を単純化して丸く描くなど、デザイン的に表現。
ひと抱えもあるほどの大鉢にもかかわらず、写真では小さく収まって見えるのですから、バランスのよさも見事なものです。
魯山人は本作以外にも、さまざまなサイズの器に同じ椿の文様を用いていて、自由奔放に作陶を楽しんでいたことが感じられます。
これほどの大きさの鉢に、魯山人はいったいどのような料理を盛り付けようと思っていたのか、想像してみるだけで楽しくなってきます。
魯山人の魅力 その五、絢爛豪華!
後世に大きな影響を及ぼした絵師というと、琳派を大成した尾形光琳が思い出されます。
しかし、魯山人が惹かれたのはむしろその弟の乾山で、人間味に溢れたその書画に憧れ、陶芸作品を自らの作品に進んで取り入れていました。
特に、乾山作の土器(かわらけ)皿には憧れにも似た敬意を抱き、やや粗い赤土に白化粧を施し、乾山風の文様を描いた向付をいくつも手がけています。
それが単なる乾山のコピーで終わらなかったポイントは、余白に用いられた金泥の輝きにあります。この、絢爛豪華なアレンジによって、先人に倣った作品も、魯山人好みのきれいな趣に変化。
魯山人が誠心誠意を尽くしたもてなしの食卓に、華やかな彩りを添えていたことは言うまでもありません。
撮影/鍋島徳恭 構成/山本毅、吉川純(本誌)※本記事は雑誌『和樂(2020年4・5月号)』の転載です。