Craftsmanship

2024.02.07

花の兆しに心躍らせて。二十四節気「春」 【一生愛せる「うつわ」と出合う・その7】村田森(3)

「古いものの写しの腕は抜群。料理を生かすうつわをつくる」と話題の陶芸家・村田さんは近年、二十四節気(にじゅうしせっき)きをテーマにした作品づくりに取り組んでいます。 季節とともにある日本人の暮らし。村田さん夫婦は、美しい雲ケ畑の変化の日々をついスマホで撮影してしまうと言います。 そんな村田夫妻の写真と、暦をめくるような楽しさにあふれた村田さんのうつわを季節ごとに紹介します。

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春が近づくと気持ちが弾む。次第に春山はピンクに染まり、ふくらんで見えるという。

春分 しゅんぶん

ことさら寒い雲ケ畑だから
春の兆しに心が躍る

村田さんの工房がある雲ケ畑にようやく春が到来。冬の間は積雪で山に入れなかったけれど、3月中旬になると、外にコーヒーやお弁当を持ち出して楽しむこともあるそう。下の鉢は、江戸時代の名工・尾形乾山(けんざん)の同型の写し。村田さんは乾山の上絵付け(うわえつけ)とは違う技法、織部(おりべ)の釉薬(ゆうやく)などで趣を生み出しています。

江戸後期の尾形乾山の有名な鉢を写した緑釉椿文輪花小鉢(りょくゆうつばきもんりんかこばち)。直径10.5㎝ 19,800円。

ひとり鍋などに、こんなかわいいレンゲがあると楽しい! 鉄絵蓮華(れんげ) 7,700円。

穀雨 こくう

たおやかな春の高揚感を
辰砂というやきものに込めて

穀雨とは「百穀(ひゃっこく)を潤す春雨」という意味で、春の季節最後の二十四節気です(4月20日ごろ)。山中の桜は、徐々に葉桜へと代わっていきます。そのころの花といえば牡丹。「赤の辰砂(しんしゃ)は色を安定させるのが難しい釉薬」と村田さん。これは、花弁に辰砂釉がフワッと広がり、独特な華やかさを感じさせます。

辰砂牡丹形皿。横20.0㎝ 22,000円。少しだけ鈍い赤に調整されて、落ち着いた趣。

村田 森 むらた しん
1970年京都生まれ。1993年に京都精華大学陶芸科を、翌年に同研究科を卒業。荒木義隆氏に師事後に独立。2003年に京都・雲ケ畑に築窯し、年間10回以上個展を開いてきた人気作家でありながら、2016年に新作の発表を停止。2020年に、現代美術家の村上隆氏とともに陶芸専門店「となりの村田」(https://tonarinomurata.com/)を立ち上げ、二十四節気をテーマにした392点のうつわの受注生産を始める。

撮影/篠原宏明、小池紀行 構成/植田伊津子、後藤淳美(本誌)
※本記事は雑誌『和樂(2023年2・3月号)』の転載です。
※表示価格はすべて税込価格です(「となりの村田」https://tonarinomurata.com/)。
※掲載商品には1点ものや数量が限られているものがあり、取材時期から時間がたっていることから、在庫がない場合もあります。

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和樂web編集部

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