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Craftsmanship

2025.01.28

坂本龍一の手書き譜面を唐紙に!? 「かみ添」の唐紙【手仕事の京都・道具名品編2】

平安時代以来、芸術文化を紡いできた美しき都・京都。その歴史は、暮らしの名品から骨董、工芸、和菓子などの〝超絶技巧〟を生み出し、今も伝統が息づいています。 かつて道具は職人がつくるもので、自分好みにオーダーしたり、修理を重ねたりして、大切にされてきたものでした。そんな道具が数多く残るなかから、今回は唐紙の技を受け継ぐ職人と、その手から生まれた〝道具名品〟を紹介します。

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「かみ添」の唐紙

和紙に雲母摺を施したみずみずしい感性の唐紙

唐紙(からかみ)とは、文様を彫った版木で摺(す)った型染(かたぞめ)の和紙。古くから襖(ふすま)などに用いられ、その文様の美しさ、面白さは色褪せることはなく、今でも多くの人々を魅了しています。
そんな唐紙に新風を吹き込んだのが「かみ添」のオーナーであり職人の嘉戸 浩(かど こう)さんです。

京都とアメリカでデザインを学び、唐紙の老舗で技術を身につけた嘉戸さんは、あるとき古い町家(まちや)に出合い、そこでオリジナルの唐紙をつくろうと決意して独立。それが現在の場所で、1階を店舗、2階を工房とした「かみ添」を立ち上げてから15年目を迎えます。

1階のショップスペースは、カード類やレターセット、ポチ袋など、美しく使いやすい文具が中心。

伝統に安住しない潔さによって美しく進化した和の文具

さまざまな色で文様を表した従来の唐紙に対して、嘉戸さんの作品は一見無地のようですが、光の当たり方によって文様が浮き上がります。しかも、キラキラ輝いていて、思わず目を奪われてしまいそうなほど。

その秘密は、雲母摺(きらずり)という手法にありました。布海苔(ふのり)を混ぜた無色の胡粉(ごふん)と雲母の顔料を用い、木枠にガーゼを張った篩(ふるい)で版木に乗せ、和紙に摺ってできているのです。

しかも、版木のほとんどは自らデザインして彫ってもらったもの。だからこそ、嘉戸さんの唐紙には伝統的な様式から一歩進んだ、モダンなイメージに溢れています。繊細でさりげないのに、暮らしを新鮮に変えてくれる嘉戸さんの唐紙は、京都の手仕事の新旧の粋(すい)と言っても過言ではありません。

「かみ添」の唐紙はすべて手作業でつくられています

左/作業を行う2階工房は、台や道具、版木、和紙が使いやすく配されている。右/唐紙づくりの工程は、まず、丸い木枠にガーゼを張った篩に刷毛(はけ)で水を塗っておき、篩のガーゼ面に布海苔を混ぜた雲母と胡粉などの顔料をまんべんなく塗る。

左/顔料を乗せた篩のガーゼ面を版木に軽く押し当てて顔料を塗る。右/色が乗った版木に和紙を置き、和紙全体をそっとなでる程度ではがして出来上がり。この作業を、嘉戸さんは素早くくり返している。

嘉戸さんの名品1・光を反射してさり気なく輝く文様にウットリ

ポチ袋(3枚入り)各1,000円。シンプルながら極上のセンスに溢れているので、特別な思いを伝えるのに最適。日が昇る図柄は幸せいっぱい!

嘉戸さんの名品2・坂本龍一の手書き譜面を唐紙にしたポストカード

2017年、故坂本龍一氏より展覧会の礼状用に依頼されて作製した二つ折りカード2,000円。奥は坂本龍一オリジナルアルバム「12」 3,410円

嘉戸さんの名品3・淡い色合いなのにドラマチックな印象を与える

和紙の風合いと雲母を加えた顔料の組み合わせだけで、多彩な表情を実現。メッセージカード各1,000円

ひとつひとつ異なる文様のカード類が並ぶ店内。版木から新たに作製する、オリジナル唐紙の版木をお願いすることもできる。

「かみ添」店舗情報

読み方:かみそえ
住所:京都市北区紫野東藤ノ森町11-1
電話:075-432-8555
営業時間:12時~18時
休み:月曜(不定休あり)
公式サイト:https://kamisoe.com/

※本記事は雑誌『和樂(2024年4・5月号)』の転載です。
※掲載価格はすべて税込です。掲載商品は、売り切れや販売期間の終了の場合があります。価格や営業時間も変更される可能性がありますので、お出かけの前に公式サイトなどでご確認ください。

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和樂web編集部


構成/山本 毅 撮影/内藤貞保
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