もしかして私って都合のいい馬?鎌倉幕府のエモキラ馬たちに「愛されモテ馬」になる秘訣を聞きました♡【妄想インタビュー】

もしかして私って都合のいい馬?鎌倉幕府のエモキラ馬たちに「愛されモテ馬」になる秘訣を聞きました♡【妄想インタビュー】

「天高く馬肥ゆる秋」となり、和樂webをご覧の馬の皆さまは、いかがお過ごしでしょうか? 菊花賞に向けての調整にはいっているダービースター馬、颯爽と神社を駆け抜ける流鏑馬……。エモキラな馬たちの活躍を目にする季節となりました。

でも、真のエモキラ馬になるには、外見だけじゃダメ! フィジカルも鍛えないと、ご主人様から「キレイナダケデス」なんて言われちゃうかも!

そこで、『平家物語』に登場するレジェンド馬のみなさんに、エモキラな愛されモテ馬になる秘訣を聞いてきちゃいました!

潜入! 鎌倉幕府の厩!

「ほんやくコンニャク」お味噌味を齧りながら「絵本入り込みぐつ」を使って、私がやってきたのは、源平合戦が終わってしばらくした後の鎌倉幕府……の厩(うまや)です。

まさに「質実剛健」な鎌倉武士の都に相応しい、頑強な作りの厩。本日は、名だたる鎌倉御家人の皆様が、頼朝様の元で会議があるので、彼らの愛馬もこの厩に集まっています。

なお、鎌倉幕府からは始め「インタビューですか……鎌倉殿はこの日は会議ですので……え? 馬? 馬を? え? 主人の方じゃなくて馬????」という回答でしたが、和樂webをご覧になっている馬の皆さまの、熱い要望がある事をお伝えし、どうにか実現しました!

さて、案内された先には、がっしりとした体格の肉体美溢れるエモキラな馬の皆さんが!

美しいたてがみ……それに触れたものは?

私を案内してくれたのは、髪不撫(かみなでず)さん。たてがみがとても美しいエモキラ馬です。お歳は召していらっしゃいますが、筋肉はまだまだ現役といったところです。

髪不撫さん(以下髪)「ありがとうございます。私は元々、三浦の惣領である義澄(よしずみ)様と共に戦場を駆けていた馬です。年を取って頼朝様に召し上げられました。今はこの厩で若い馬の面倒をみているんですよ」

へ~、けっこう悠々とした老後なのですね。

髪「とんでもない! この厩に来るのは個性的な馬ばかりですからね! 私自身も、彼らに示しをつけるためには日々の鍛錬は欠かせませんよ。でも、たまに義澄様が会いに来て下さる時は、とても心休まりますね」

髪不撫さんと義澄さんは本当に固い絆で結ばれているのですね! ……それにしても、本当に綺麗なたてがみですねぇ。

髪「おっと、たてがみを触るのはNGです!」

もし触ったら?

髪「蹴り上げて背骨をへし折ります」

蹴り上げて背骨をへし折る。(思わず復唱)

髪「私のたてがみに触っていいのは、義澄様と頼朝様、それから厩係で一番ブラッシングの上手い弥八だけです」

なるほど、だから「髪不撫」なのですね。私がそうつぶやくと、髪不撫さんはヒヒヒンと笑いました。

心に決めた主人以外は塩対応。これが離れても可愛がられている髪不撫流「愛されモテ馬の秘訣」なのかもしれませんね!

二頭(ふたり)はライバル! 鎌倉幕府のツートップにインタビュー

「もう! またアンタの隣なの! いい加減にして!」
「知らないわよ! アンタの主人が、アンタをアタシの隣に繋ぐのよ! ホント、いい加減にして欲しいのはこっちよ!」

奥の方で二頭(ふたり)の馬が言い争う声が響いてきました。言い争っているのは神の使いと思うほど美しい黒栗毛の池月(いけづき)さんと、墨をこぼしたかと思うほど光沢のある黒々とした毛並みの磨墨(するすみ)さんです。

お二頭(ふたり)とも鎌倉幕府を代表する2頭のエモキラ馬ですが……一体どうしたのでしょう。

磨墨さん(以下磨)「ちょっと、聞いてよ! この馬ったら、また私の主人を誑かすの~」
池月(以下池)「人聞きの悪い事言わないでよ! こっちからしたらアンタの主人の方をどうにかして欲しんですケド~」
磨「なんですって! 景季(かげすえ)様を悪く言わないでくれる!?」

おおっと、後足で立ち上がってついに喧嘩が始まってしまいました! 髪不撫さんが間に入って止めましたが……落ち着いた後に、個別にインタビューをしました。

まずは磨墨さんから。

ご主人と共通の目標で絆アップ! 磨墨さんのエモキラエピソード

磨墨さんは「さっきはごめんなさいね、ヒヒヒン」と少しはにかみながら、インタビューに応じてくださいました。

それにしても、見事なまでに真っ黒ですね……そしてこの光沢! まさにエモキラ!

磨「でっしょ~? 今のご主人様、梶原景季様に仕える前は、頼朝様のお気に入りの馬だったのよ。今も景季様が自ら毎日全身を磨いてくれるんだから! 見て! この蹄(ネイル)! ピッカピカでしょ」

キラキラすぎて眩しい! 愛されているんですね~。

磨「でもね……あの馬! 池月を前にすると、ご主人様はおかしくなっちゃうの……」

そう言って磨墨さんは長いまつ毛で縁取られた目を伏せました。

磨「私も、池月も、元々は頼朝様のお気に入りツートップで、御家人たちの憧れだったの。源平合戦で鎌倉軍が西へ向かって出発する時、頼朝様が自分の愛馬を御家人に賜ることになったの」

そこで磨墨さんは、梶原景季さんの愛馬となったのですね!

磨「ええ、そうよ! で、池月は佐々木高綱(ささき たかつな)さんの所に行く事になった。でも……それを見た景季様はとても悔しがってたわ。最初は池月を欲しがっていたらしいから」

磨墨さんだってカッコいいですよ!

磨「ええ、景季様も『磨墨より優れた馬などいない!』と言ってくださったわ! でも……佐々木さんが池月に跨っているのを見て、すごく対抗意識を燃やしちゃって……『宇治川で先陣争いして、佐々木と池月に勝ってやる!』ってとても張り切っていたの。私も景季様を勝たせるために、鼻息荒く宇治川の岸に立ったわ」

おお! 有名な『宇治川の先陣争い』ですね!

土佐派『宇治川合戦図屏風』(東京富士美術館所蔵)(https://jpsearch.go.jp/item/tfam_art_db-3560)

磨「そう! そしていざ川に入ろうとしたら、佐々木さんったら、景季様に『腹帯が伸びてますぞ』なんて言ったのよ! ちゃんと結んでたのに!」

腹帯というのは、馬と人間を固定する帯のことですね!

磨「そう! 私たちって興奮するとつい乗っている人間の事忘れちゃうから(笑)。しっかり結んだ腹帯は絆の証ね」

万が一、武士が敗けそうになったら、腹帯を刀で切って馬だけでも逃がすって聞きました。

磨「そうよ。そして馬だけで故郷に戻って、主人の死を知らせた馬もいるって話を聞いた事あるわ……。でも私に乗っている限り、景季様に負けさせないけどね! とはいっても、先陣争いでは負けちゃったけど……。ほら、景季様って良くも悪くも素直というか……。佐々木さんに腹帯が緩んでるなんて言われたから、わざわざ解いて結び直しちゃって……」

タイムロスしちゃったんですね。

磨「そう。それに私はエモキラ度なら池月にぜ~んぜん負けてないけど、フィジカルではちょっと……というか、池月が規格外なのよ! 体力お化けってレベルじゃないのよ……宇治川の急流を真っすぐに横切るなんてありえないと思わない!?」

現代のエンジン吹かしたボートでない限り難しそうですね……。

磨「私も下流に流されちゃったけど、景季様を乗せて無事渡河できたの。景季様は残念そうにしていたけど、私の事は褒めてくれたのよ。でもやっぱり悔しいものは悔しい!」

それで、今も磨墨さんと池月さんはライバル関係なんですね!

磨「ライバル? 景季様と一緒にいるのは私だし、支えているのは私! 池月なんて知らないもん!」

主人と共通の目標を持ち、互いに支え合う健気系エモキラ馬の磨墨さんでした!

鎌倉御家人のアイドル!スーパーモテ馬池月さんへ直撃インタビュー

池「磨墨? 梶原? 関係ないわよ。あっちが勝手に対抗意識燃やしてんだから」

ヒヒヒンと白い泡を飛ばして、池月さんは言いました。王者の余裕の笑みですね。

池「それで、アタシに聞きたい事って?」

はい、実は池月さんの出身地についてーー。

池「ノーコメント」

早い! 流石駿馬!? いや、でも出身地候補が「宮城県説」「千葉県説」「東京都説」「鳥取県説」がありますがーー。

池「……過去の事なんて忘れたわよ」

池月さんは白い泡をくゆらせました。

池「それにみんな、『この名馬を作ったのはうちの牧だ!』って言って、それを誇りにしているわけでしょ? それをアタシが『本当は〇〇です』なんて言ったら、そこ以外の牧はどうなっちゃうかしら? きっと困ると思うのよね。だから、そういうのは言わない方がいいの」

なるほど。このミステリアスさに隠れた配慮も、トップエモキラ馬たる秘訣でしょうか……。そういえば池月さん、お名前に「月」の字があるのに月毛(クリーム色)じゃないんですね。

池「ああ、池月って当て字なのよ。『生食(いけづき)』とも書くの」

現代人的には、どちらかというと生食の方が「いけづき」って読みづらいですが、どういった意味なんでしょう。

池「生き物を、食べる」

生き物を、食べる。(思わず復唱)

池「近づく者は、みな食いちぎってやるんだから」

……池月さんも、「決めた主人以外は塩対応系馬」なんですね。

池「そんなじゃじゃ馬を乗りこなす事が、武士のステータスなのよ。アタシは主人のために、それ以外の存在にはワガママ馬(ホース)道を突き進むわ!」

そう言って池月さんは、白い泡を吹いてヒヒヒヒヒンと笑いました。その笑顔はまさに小悪魔系エモキラ馬、馬界のトップスターでした。

私は唯一の馬! 自己肯定感でエモキラ度UP!

池月さんの唾まみれになった私は、着替えさせてもらって、厩をぐるっと回りました。改めて見るとどの馬も、みながっしりとした体格です。サラブレッドと比べると足は短いですが、どっしりと太く、確かに鎧を着込んだ成人男性が乗っても平気で歩けそうですね。

その中でも、特に目を引いたのが美しい月毛の持ち主。お名前は三日月さん。ご主人は坂東武者の鑑と言われた畠山重忠(はたけやま しげただ)さんです。

三日月さん(以下三)「こんにちは」

声も美しい!!

三「ええ。わたくしのご主人である畠山重忠様は、姿を見ずに鳴き声だけで誰のどの馬か当てることができるのです。そんなご主人に、お前の声が一番だと言われたいですからね。ボイトレは欠かせません」

自分磨きも忘れない、エモキラ馬ですね! そんな三日月さんとご主人の絆エピソードをお伺いしたいのですが。

三「そうですねぇ、強いて言うなら、源平合戦の時の頃でしょうか」

源平合戦! やっぱり武士だけでなく馬にとっても、源平合戦は語り草なんですね。

三「ええ、私は主人と一緒に、源義経殿の搦手軍(別動隊)にいた……はずです」

はず?

三「はい。私の記憶ではそうなんですけど、幕府の記録では大手軍(メインの部隊)にいるんですよね、重忠様。不思議ですね」

三日月さんの記憶では、どのような事があったのですか?

三「はい。義経殿が率いる搦手軍は、三日間山の中を歩いて、平家の本拠地の真裏にやってきました。そこで、義経殿は『鹿も四つ足、馬も四つ足、鹿が通れて馬が通れぬはずはない。我に続け!』って、崖を下りようとしたんです!」

おお! 鵯越の逆落としですね!

海北友雪『源平合戦図屏風』(東京富士美術館所蔵)(https://jpsearch.go.jp/item/tfam_art_db-1069)

三「わたくしからしたら、偶蹄目と奇蹄目を一緒にしないで! って感じでしたけど……三浦さんちの馬が『このような坂道、故郷にはいくらでもあるわ! 行きましょう、ご主人!』って駆け下りちゃって……。本当、信じられませんでした」

三日月さんはどうしたんですか?

三「恥ずかしながら、怖気づいちゃったんですよね。そしたら……主人の重忠様が、おもむろにわたくしを背負ったんです!」

馬を! 背負う!

三「わたくし、すごくびっくりしてしまって……。当時、わたくしも若かったものですから『ちょ、ちょっと! やめなさいよ、なんなのアンタ! 馬は乗るもので背負うものではないでしょ? 降ろしなさいよ!』なんて言ってしまって……」

そしたら、重忠さんはなんと?

三「重忠様は、わたくしを振り返って笑いかけました。『大丈夫だ。私のことだけ見ていなさい。そしたら、あっという間に崖の下だ』」って!」

キャー! さすが史実イケメン、坂東一のモテ男、畠山重忠さんですね!
(*史実イケメン=当時の史料からイケメンであると十分推測可能なイケメン)

三「わたくし、重忠様を信じて、重忠様の兜の後を見ながら降りました。そして気が付けば、無事に崖の下でした」

それで、三日月さんと重忠さんの絆が深まったわけですね!

三「ええ、古今東西、主人を背に乗せて戦場を駆けまわった、誉れ高き名馬は数多かれど、主人の背にのって戦場を駆けまわった馬は、わたくしだけでしょうね!」

そう言って、三日月さんはヒヒンと得意げに笑いました。

自分が特別な存在だという自信が、エモキラ度を更にアップする秘訣なのでしょうね!

時にツンデレ、時に小悪魔、人間たちをドキドキさせてエモキラ馬になろう!

個性豊かな鎌倉幕府のエモキラ馬のみなさんも、ご主人に愛されるための努力は欠かせないようですね!

時にツンデレ、時に小悪魔で周囲を悩ませつつも、ご主人にだけはたっぷり甘えちゃう、愛され上手なみなさんでした!

和樂webをご覧の馬のみなさまも、今日からさっそく白い泡を吐きながら、許可なく体を触ろうとする無礼な人間どもの腕を食いちぎりつつも、ご主人にはベッタベタに甘えてみましょう!

目指せ、エモキラレジェンド馬!

あとがき

武士にとって、馬はなくてはならない存在でした。生まれた時から成長を共にして、戦場では命を預ける大切な相棒です。

歴史に登場する人物は個性豊かですが、馬も個性豊か! 歴史に名を刻んだ馬の魅力を伝えるために妄想インタビューをしてみました。

今回ご紹介した「髪不撫」は『吾妻鏡』に記述があります。「池月」「磨墨」「三日月」は『平家物語』に登場する馬です。特に三日月については、畠山重忠が大手軍の方にいますので創作である可能性は高いですが、馬が好きでとても大事にしていたこと、そして大岩を一人で担ぎ上げたほどの怪力であったことが『吾妻鏡』にも残されています。

当時は戦場でも怖気づかない、荒々しい性格をした馬ほど良いとされていて、「白い泡を吐く(興奮状態)」「生き物にすぐに噛みつく(攻撃的)」というのは名馬の証でした。

現在、牧場などで乗馬体験できる馬は人に慣れていて大人しいですが、繊細な生き物です。可愛いけれど不機嫌になると容赦はない小悪魔ぶりは今の馬も一緒。トレーナーからの注意をよく守って仲良く触れ合いましょう!

もしかして私って都合のいい馬?鎌倉幕府のエモキラ馬たちに「愛されモテ馬」になる秘訣を聞きました♡【妄想インタビュー】
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