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2021.02.12

加勢した軍は必ず負ける!?杉本哲太演じる源行家には要注意!【鎌倉殿の13人予習シリーズ】

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鎌倉御家人・三浦胤義(たねよし)が語る! 令和4(2022)年大河ドラマ『鎌倉殿の13人』予習シリーズ! オレが何者かは第1回参照なッ!

第9回は「走る死亡フラグ」こと源行家(みなもとの ゆきいえ)殿!! 行家殿はオレが生まれた頃に亡くなっている人物だし、オレの家とも積極的な繋がりがあったわけではないのだが、その噂は聞いた事がある。おそろしい……。とてもおそろしい話だ。

なぜなら……「この男が加勢した軍は必ず負ける」からだッ! というわけで今回もちょっとネタバレっぽい内容だぞ~。

変装もお手の物? 令旨配り叔父さん!

第1回で、『吾妻鏡』では以仁王(もちひとおう)が全国にいる源氏に「平家を倒せ」という命令書を発行した事から始まると紹介したが、この命令書を全国に届けたのが源行家殿だ。

ちなみに、以仁王の命令書は「以仁王の令旨(りょうじ)」と言うが、本来令旨は皇太子や皇后・親王などの身分でしか発行できない。以仁王は皇族だけどそこまでの身分はないんだ。だから本当は「以仁王の御教書(みぎょうしょ)」と表現すべきなんだが……。以仁王、平家の圧力で親王の身分を貰えなかったという経緯があったらしくてさ……。本人が令旨と言い張っているので、そこら辺の気持ちは汲んでやってほしい。

さて、行家殿の話に戻ろう。行家殿は、頼朝様の父の末弟にあたる。つまり頼朝様の叔父だ。といっても年齢差はさほどなく、4歳~6歳差なんだ。

行家殿は全国行脚しても怪しまれないように山伏に変装し、令旨を渡して頼朝様に決起を促した。が、頼朝様は怪しんで一旦は様子見した。だけど結果的にはこの令旨がのちの挙兵の一因となったんだ。令旨配りおじさんは頼朝様視点の源平合戦には欠かせない人物だな!

……ちなみに、行家殿の令旨配りは平家にバレバレで、以仁王は討死してしまう。そして生き延びた行家殿は鎌倉を中心とした坂東の武士には加勢せず、独立勢力を目指した。三河や尾張などの東海地方に勢力を伸ばしたんだ。

戦は全敗! なのにしぶとく生き延びる

頼朝様が鎌倉に武士の都を造っている、養和元(1181)年。行家殿は東国に進軍した平家を迎え撃つため、墨俣川に陣を張った。ここで平家を追い返して、鎌倉に恩を売ろうとしたんじゃないかって言われている。頼朝様も援軍を派遣したんだが……結果はボロ敗け。援軍の大将も討死しちゃったんだけど、行家殿は逃げ延びて、ちゃっかり鎌倉の支配圏に住み着いた。

そこで行家殿、頼朝様に所領を要求したんだが、まぁ……当然の如く拒否されてなぁ。完全に対立する事になるんだ。そして向かった先が、頼朝様の従兄弟の木曾義仲(きそ よしなか)殿。

平家を追い出した木曾殿と一緒に入京するんだが、山育ちで都のルールに疎かった木曾殿はどんどん京人に嫌われていく。その一方で畿内で生まれ育って口先が上手い行家殿は好かれていた。

だんだん行家殿と木曾殿は仲が悪くなり、身を危険を感じた行家殿は京を脱出する。前門の虎、後門の狼とはまさにこの頃の行家殿の状況だな。逃げた先で平家と合戦して敗走し、その敗走先でも木曾殿が派遣した軍勢に攻め込まれ、また敗走した。やがて木曾殿が鎌倉軍に敗れた後に京に戻ったが、鎌倉軍の平家追討の合戦には参加しなかった。

まだまだ終わらない、行家の野望

壇ノ浦で平家が滅亡して、鎌倉が大勝利した後、頼朝様と義経殿が対立する。この対立関係の詳細は、語ると長くなるので今回は省く。行家殿はそんな義経殿に近づきつつ、和泉(いずみ)国や源氏の本拠地である河内(かわち)国(どちらも現・大阪府)での勢力を確保していた。

そんな行家殿を危険に思ったのか、頼朝様は行家殿を討伐する計画を立てる。それを知った行家殿は義経殿に「一緒に頼朝を倒そう」と持ち掛けるんだが、この2人に味方する武士は少なかった。

いよいよ討伐軍が出発するという段階で2人は京から逃げるんだが、九州に向かう船上で暴風雨に遭って逃走失敗。義経殿は縁のある平泉に向かい、行家殿は和泉国に逃げ込んだ。

でもなぁ……もしかしたら行家殿、公家や朝廷のウケは良かったけど、庶民派ではなかったのかもしれんな。地元民の密告により、文治2(1186)年に捕まって斬首されたよ。

こんな風に、行家殿は戦にほぼ全敗し、関わったものは討死する事で、歴史好きからは「死亡フラグ」扱いされているんだ。

源行家役、杉本哲太殿について

そんな感じの人だったし、「令旨配りおじさん」とか「死亡フラグ」とかイジられている事から察せると思うが、創作ではコメディリリーフ的な立ち位置にいる事もしばしば。

しかし! 大河ドラマで行家殿を演じる杉本殿は、なんともいぶし銀な渋い雰囲気が漂ってる。戦上手と言われる木曾殿や義経殿がうっかり仲間にしちゃうぐらいだから、見るからに面白おじさんより、杉本殿のような人の方が確かに説得力があるな。

『頼朝の叔父。源氏のプリンスたちを操る野心家』
この行家という人物は、かなりの野心家だったからか、敵も多かったよう……エネルギッシュにいろいろな欲望を滲(にじ)ませられたらと思っています。

NHK_PRサイト 杉本哲太のコメントより抜粋

うむ。これはかなり怪演を期待できるのではないだろうか!

……ちなみに、Twitterにも行家殿botがいるが、こちらはコメディリリーフな側面を前面に出しているカンジだな。歴史上で多くの人を巻き込んでいたように、Twitter上でも多くの人を巻き込んで今夜も大騒ぎしている。

アイキャッチ画像:『義仲勲功図会 前編 巻の5』(信州デジタルコモンズ

書いた人

承久の乱の時宮方で戦った鎌倉御家人・西面武士。妻は鎌倉一の美女。 いわゆる「歴史上人物なりきりbot」。 当事者目線の鎌倉初期をTwitterで語ったり、話題のゲームをしたり、マンガを読んだり、ご当地グルメに舌鼓を打ったり。 草葉の陰から現代文化を満喫中。