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Culture
2021.04.12

2023年、ついに宇宙にお寺ができる!874年建立の醍醐寺が挑む「宇宙寺院」とは?

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醍醐寺が宇宙に寺院を建立する——。プレスリリースが発表されるとSNSでは「近未来」「宇宙にお寺って?」と一気に話題となりました。
IoT衛星に、宇宙寺院『浄天院劫蘊寺(じょうてんいんごううんじ)』を建立という前代未聞の試み。2023年に打ち上げ予定です。

お寺をどうやって打ち上げるの!? 2023年が楽しみ!

宇宙ビジネスと言えば、今世界的に注目される分野であり、一方の醍醐寺は874年(平安時代)建立。両者を何が結びつけたのでしょうか?衛星開発を行う「テラスペース」の執行役員でもある、醍醐寺の仲田順英執行統括本部長にお話を伺いました。

火事や盗難……「国宝をどう守るか」から始まった、宇宙への旅


—衛星に大日如来を乗せるというプロジェクト、とても驚嘆したのですが、そもそもどうやって思いつかれたアイデアだったのでしょうか?

仲田順英執行統括本部長(以下、仲田):そもそもは、醍醐寺にある数多の文化遺産をどう守るか、から始まりました。醍醐寺には7万以上の国宝があります。ある程度国の保護が受けられるとはいえ、基本的には自分たちで管理せねばなりません。五重塔をはじめ、木造建築なども16棟あり、それらすべてを防災・防犯するのはかなり骨が折れる。そこで、IoTを活用できないかと思ったのがすべての発端でした。

―IoTのセキュリティシステムで、文化財を守ろうとしたのですね。

仲田:常に防犯・防災には気を配っておりますが、醍醐寺には山もあります。テクノロジーの力で補えないかと思っているところに、京大経営管理大学院との交流を通じて、人工衛星ビジネスを知りました。今はデータの収集や、地震や津波など、防災の分野で人工衛星が活躍していて、身近な存在になっているんです。

―人工衛星にお寺を建立するというところにはなかなか結びつかないのでは、と思うのですが……

仲田:我が国は、コンビニよりもお寺の数が多いです。しかし、宇宙が身近になるのとは裏腹に、お寺は人々の心からどんどん遠い存在になってしまっている。人工衛星で我々を見守ってくれる、スマートフォンで位置を確認して参拝できるお寺があったら良いのでは、というお話をうかがいました。
宇宙観は仏教と深く関係していますしね。大日如来は、宇宙の象徴でもあるので、これは素晴らしいと率直に思いました。

―えっ?宇宙の象徴、そうなのですか。

仲田:仏教とは、宇宙の中に存在する人として、どうあるべきなのか、人としてどうすべきなのかを教えるものです。真言宗の祖・弘法大師は宇宙をイメージとして取り入れてらっしゃいます。皆さんにおなじみの五重塔も宇宙そのものを示しているんです。

大日如来や五重塔が宇宙に関係があったなんて、知らなかった!

浄天院劫蘊寺、の名前に込められたもの

―平安時代から宇宙という概念が身近だったことに驚きます。『劫蘊寺』という名前も、宇宙を意識したものですか?

仲田:一瞬の短い時間を表す、「刹那」という言葉がありますよね。あれは実は仏教用語でして、「劫」はその対義語のようなもの。ひとつの宇宙ができてから、なくなるまでの時間を示す言葉です。「蘊」は「色・受・想・行・識」という人間の5つの構成要素を示す意味を持ちます。宇宙は空間、時間、人間でできている。我々もその一部であるという意味を込めて名付けました。

―近年、「オンライン参拝」など、直接赴かない参拝様式も増えました。直接行かなくても良いものなのでしょうか?

仲田:昔は、京都や伊勢に直接訪れることが今よりずっと困難でした。ですので、村や集落を代表した数人が代表して「お伊勢参り」することなどはままあった。お札を祀ったり、分社をこしらえたり、素地はもともとあったと思います。

ーそういえば、私の家の近くにも伊勢神宮の分社があります。

仲田:どこにいようが、心の中で祈ることを、仏さまはちゃんと見ていてくださいます。その中継場所に人工衛星がなるだけです。1時間で地球を一周しますし、宇宙空間には国境はありません。日本だけでなく、海外の方にもお祈りいただける。醍醐寺のものというよりは、皆さんとつながれるものでありたいと考えています。

―人々の祈りを背負った人工衛星となりそうですね。

仲田:「井戸端会議」の井戸は、お寺にあった井戸です。古くから、お寺は学ぶ場であり、イベント会場であり、人々の拠り所でした。世界平和や、疫病の平癒をずっと祈ってきたんです。まさに今、不安になっている皆さんに「安心(あんじん)」の心を届けたい。安らかなお気持ちになって頂きたいと思っています。

―斬新な着想だと思っていましたが、意外と芽はあったのですね……!

仲田:我々も、なぜ気づかなかったんだろう?と思っているくらいです(笑)。苦しみや悩みの中から生まれてきたひとつのソリューションではないかなと思います。今回、ずいぶんと話題になってこちらが驚いているほどなのですが、それもまた、人とのご縁ではないかと思います。

現代は「心の拠り所」がない人が多い気も……。宇宙から見守ってもらえると思うだけで、少しほっとします。

願いよ宇宙へ届け!最新で古風な「宇宙寺院」からこれからも目が離せない


先日、初の「宇宙法要」が行われ、「病魔退散・世界安穏」を祈願。さらに、ホームページから申し込まれた宇宙祈願についても祈られました。今後も祈願を受けつけ、祈願文はデータ化して人工衛星に載せるのだとか!光通信になって星や月へと届けられると思うと、ワクワクしてきますね。
最新技術ながら、脈々と受け継がれてきた仏教の心をのせる人工衛星。私達の祈りが「天まで届く」日もそう遠くないのかもしれません。

浄天院劫蘊寺

書いた人

歌舞伎を着物で観つつ和菓子を食べ茶を点て過ごす日々。実はTOEIC910点だが、あまり活用していない。旅行とコスメと本が好き。ラグビーとプロレスで叫んでいることもある。今日も漫画は面白い。