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もし船を造りたいのなら、木を集めるために人を呼び込んだり作業や仕事を割り当てたりするのではなく、限りない海の広大さに憧れを抱くように彼らを教えなさい。(サン=テグジュペリ)
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2022.05.22

この矢が源氏の世の始まりを告げるッ!大河ドラマ原作『吾妻鏡』より山木館襲撃

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令和4(2022)年NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』をもっと楽しむために、原作である吾妻鏡を読んでみようコーナー!

▼ここまでの流れはこちらから!

今回はいよいよドラマ序盤の見せ場だった、『山木館襲撃』だ!

ここに来て計画が!

治承4(1180)年8月16日。昨日から雨が降っていて一日中止まなかった。

明日の合戦の無事を祈るため、御祈祷を始める。昌長(まさなが)は天曹地府祭(てんそうちふさい=冥府の役人を祀り、使者の冥福を祈る陰陽道の祭り)を奉仕す。頼朝様が自ら御鏡を取って、昌長に授けたとかなんとか。頼隆(よりたか)は 1000回のお祓いを勤めたとか。

佐々木兄弟は今日ここに来いとよくよく命じられていたのに、来ないまま日が暮れた。

集まった者が少ないので、山木兼隆(やまき かねたか)を討つのは延期しようかと頼朝様はお考えになった。

しかし、18日は幼少の頃から正観音像を安置して祭り、殺生をしないことを長年続けているので、これを破ることはしたくない。19日になってしまったら計画がバレるかもしれない。

そして佐々木一家が居候している家主、渋谷重国(しぶや しげくに)は平家に恩があって仕えているので、佐々木たちは渋谷と一緒にいるのだろう。

と、頼朝様は心中とても悩んでいた。

ここの頼朝様のソワソワっぷりはドラマでも描かれていたな。歴史を知っていてもどうなるのかハラハラした者も多かったのでは……。

何度も繰り返し読んだお話でも、何度でもドキドキしてしまう。そんなものですよね!

いよいよ出陣!

治承4(1180)年8年17日。快晴。

今日は三島大社の神事があった。安達盛長(あだち もりなが)は奉幣(ほうへい)の使い(代理で捧げものをしに行く人)となって三島大社にお参りして、ほどなく帰って来た。

午後3時頃、佐々木4兄弟がやってきた。頼朝様は感激して涙を流しながらも、「お前たちが遅れて来たので、今日の明け方に合戦ができなかったではないか! わしは怒ってるぞ!」とおっしゃる。兄弟たちは、「洪水のため、意に反して遅れてしまいました」と謝罪したそうだ。

夜、あたりがすっかり暗くなった頃、安達盛長の家来の少年が調理場で山木の部下を生け捕りにした。これは頼朝様のご命令である。

この男、北条邸で働いている女性と結婚したばかりで、夜な夜なやって来ていたのだ。けれども、今夜は武士たちが北条邸に集まっているので、いつもと様子が違う事に気が付かれてしまうだろうと、頼朝様はお考えになった。だからこのように捕まえたのだとか。

そして頼朝様は「明日を待ってはいけない。各々早く山木邸へ向かい、雌雄を決せよ。この合戦をもって生涯の吉凶をはかるのだ」とおっしゃられた。また、「合戦の際には、まず火を放て」と命じた。その煙をどうしてもご覧になりたいのだとか。武士たちはすでに競い合うように奮い立っていた。

北条時政(ほうじょう ときまさ)が言うには、

「今日は三島大社の神事です。多くの人たちがお参りしていて、きっと人が溢れかえっています。よって、大通りを行くと、道行く人に咎められてしまうでしょう。だから脇道を行くべきかと存じます」

頼朝様はそれに対してこうおっしゃった。

「それは最もな意見だ。しかしこれは大きな事の始まりを意味するのだ。脇道を使うのはよせ。騎馬も通れないだろう。大通りを行くのだ」

それから戦場で祈祷させるため、昌長を軍勢に付き添わせた。佐々木盛綱(ささき もりつな)と加藤景廉は留守を守るため、頼朝様の側に留まった。

山木の部下の新婚さん、タイミングが悪かった……。

ドラマで「大通りを行け!」と命じた頼朝様、めちゃくちゃカッコよかったよなぁ!

その後、軍勢が出発し、大通りの手前の原っぱで北条時政は馬を止めて、佐々木定綱(ささき さだつな)にこう伝えた。

「山木の後見、提信遠(つつみ のぶとお)は、山木の屋敷の北方に住んでいる。こいつは優れた勇士なんだ。山木と同時に討っておかないと、後々面倒なことになりそうだ。そこで佐々木兄弟たちに提を襲って欲しい。道案内をつけよう」

佐々木定綱はこれを了解した。

ドラマでは視聴者のヘイトを稼いでおいて、あらかじめターゲットにされていたが、『吾妻鏡』ではほんと、「もののついで」に襲撃されてたんだな提……。

運が悪かった人がこちらにも……。

是源家の平氏を征する最前の一箭也

深夜になり、大通りを東に行く。佐々木兄弟は提邸の前に留まった。

佐々木定綱・高綱(たかつな)は案内人を伴なって提邸の後ろへ回る。佐々木経高(ささき つねたか)は邸の前庭を進み矢を放つ。これは源氏が平家を征する第1の矢である。その時、明るい月が真上に輝き、ほとんど昼間のようだった。

提の家来たちは経高たちが競い合って攻めて来るのを見て、矢を放った。提は太刀を取って西南へ向かい、これを迎え撃つ。経高は弓を捨て、太刀を抜いて北東へ向かい、提と戦う。どちらの武勇も著しいものだった。

経高は矢に当たった。その時、定綱と高綱が後ろからやって来て先頭に加わり、提を討ち取った。

経高殿が放った矢! 原文では「是(これ)源家(げんけ)征平氏(へいしを せいする)最前(さいぜんの)一箭(いっせん)也(なり)」メチャクチャかっこいいよな! ドラマでもこのシーン再現してくれて滾(たぎ)ったよ!

ここから源氏の大躍進始まる、って感じですかね!

山木成敗!

北条時政たちは、山木兼隆の屋敷の前に進み出て矢を放った。山木の家来の多くは三島大社の神事を見物に行っていて、その後も黄瀬川宿に留まって遊び歩いていた。しかし屋敷に僅かに残っていた家来は強い者たちで、死を恐れずに立ち向かってきた。佐々木兄弟たちは提を討ち取って時政の軍勢に加わった。

さて、頼朝様は兵を送り出した後、屋敷の縁側に出て合戦に思いを馳せておられた。山木の屋敷に火は放たれたのか。その煙を確認させるために、厩(うまや)の舎人(とねり=雑用係)の男を木に登らせたが、しばらく煙は見えなかった。

そこで屋敷の警護をさせていた加藤景廉・佐々木盛綱・堀親家(ほり ちかいえ)たちを呼んで、こうおっしゃった。

「すぐに山木邸へ向かい、合戦に加わりなさい」

そして頼朝様自身が薙刀を手に取り、加藤景廉に賜り、「これで山木の首を討て」と言い含めたそうだ。

こうして各人、脇道を走って山木の屋敷へ向かう。3人とも馬には乗らなかった。佐々木盛綱と加藤景廉は頼朝様の命令通りに山木の屋敷に入って、山木の首を取った。

月岡芳年『山木館の月 景廉』(国立国会図書館デジタルコレクション

山木の家来たちも同じく殺されて、火が放たれた。山木の屋敷は全て焼失した。
すでに空はあけぼの。武士たちは頼朝様の元へ帰って来て、庭に集まった。頼朝様は縁側で山木たち主従の首をご覧になったそうだ。

このシーン、ドラマでもなかなか壮絶だったなぁ。オレもまさか首を落とすところまでやるとは思わなかった。TVの前で義時と同じ表情になった視聴者も多かったろうな。

さて山木を討ち取った所で、頼朝様と北条家も引き返す事はできなくなった。ここから先は次回へ続く!

引き返せなくなってからが本番だ(!?)

アイキャッチ画像:歌川国芳『源頼朝山木館夜討図』(ライデン国立民族学博物館

「鎌倉殿の13人」13人って誰のこと? 人物一覧

「鎌倉殿」とは鎌倉幕府将軍のこと。「鎌倉殿の十三人」は、鎌倉幕府の二代将軍・源頼家を支えた十三人の御家人の物語です。和樂webによる各人物の解説記事はこちら!

1. 伊豆の若武者「北条義時」(小栗旬)
2. 義時の父「北条時政」(坂東彌十郎)
3. 御家人筆頭「梶原景時」(中村獅童)
4. 頼朝の側近「比企能員」(佐藤二朗)
5. 頼朝の従者「安達盛長」(野添義弘)
6. 鎌倉幕府 軍事長官「和田義盛」(横田栄司)
7. 鎌倉幕府 行政長官「大江広元」(栗原英雄)
8. 鎌倉幕府 司法長官「三善康信」(小林隆)
9. 三浦党の惣領「三浦義澄」(佐藤B作)
10. 朝廷・坂東の事情通「中原親能」(川島潤哉)
11. 頼朝の親戚「二階堂行政」(野仲イサオ)
12. 文武両道「足立遠元」(大野泰広)
13. 下野国の名門武士「八田知家」(市原隼人)

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眠れないほどおもしろい吾妻鏡―――北条氏が脚色した鎌倉幕府の「公式レポート」 (王様文庫)

書いた人

承久の乱の時宮方で戦った鎌倉御家人・西面武士。妻は鎌倉一の美女。 いわゆる「歴史上人物なりきりbot」。 当事者目線の鎌倉初期をTwitterで語ったり、話題のゲームをしたり、マンガを読んだり、ご当地グルメに舌鼓を打ったり。 草葉の陰から現代文化を満喫中。

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人生の総ては必然と信じる不動明王ファン。経歴に節操がなさすぎて不思議がられることがよくあるが、一期は夢よ、ただ狂へ。熱しやすく冷めにくく、息切れするよ、と周囲が呆れるような劫火の情熱を平気で10年単位で保てる高性能魔法瓶。日本刀剣は永遠の恋人。愛ハムスターに日々齧られるのが本業。