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2019.08.30

婚礼の風習「三三九度」。和風結婚式で使われるものと儀礼の約束ごと・意味を解説

この記事を書いた人

私たちの生活に深く根付いている儀礼やしきたり。こと婚礼の風習において、日本では世界的に見ても珍しい盃事(さかずきごと)による契約儀礼が受け継がれています。

誓約書にサインするでもなく、第三者に誓うでもなく、夫婦が厳かに酒を飲み交わして結ぶ特別な約束。その中で最も大切な儀式が一般的に「三三九度」(さんさんくど)と呼ばれている、盃を用いた固めの儀礼なのです。私たちにとって、酒と盃を用いた約束事が、これほどまでの重みを持つのは一体なぜでしょうか。

今回は、日本の結婚式の原型である「祝言」(しゅうげん)のしきたりに詳しい祝言プランナーの二宮 理予(にのみや りよ)さんと一緒に、盃事の伝統を深掘りしていきたいと思います。

祝言、それは酒と三つ重ねの盃で契約する日本人の儀礼

日本には、古代・中世に始まる「式三献」(しきさんごん)と呼ばれる儀礼的な酒宴の作法があります。その流れを汲んでいるのが、祝言で行われる「三三九度」の盃事。一盃をお互いに三口で飲み干し、それを交互に三度重ねる盃事の基本的な形は、ふたりと神様を、さらには夫婦同士を固く結ぶ大切な作法でもあります。

「三三九度」とは?和婚でかかせない 約束を固める盃事
今でこそ気軽に飲める日本酒ですが、昔の人にとっては、晴れがましい祝いの席でしか飲むことのできない特別なものでした。

日本酒の原料となるお米は、私たち日本人にとって貴重な食料です。そのお米を原料に、調理の手間をかけた日本酒は、神前に捧げる神饌(しんせん)の中で、最も尊い献上物です。

「三三九度」とは?和婚でかかせない 約束を固める盃事
祝言では、写真左の瓶子(へいし)のお神酒(おみき)を、右の銚子(ちょうし)と呼ばれる酒器に移し、それを盃に注ぎます。

酒器には、雄蝶雌蝶(おちょうめちょう)の飾りを付けます。蝶は蚕を表し、雄雌が交差してやがて新しい繭を作る姿に、新たな家庭を築く男女を重ねています。

「三三九度」とは?和婚でかかせない 約束を固める盃事
丁寧に三つ重ねられた大・中・小の盃。三三九度の盃事に欠かせない器です。

ひとつの盃で互いに飲み交わし、それを三度重ねることで、ふたりは生涯を契ります。契約儀礼で用いる盃は、約束を固めた証文にも相当する大切なもの。かつての祝言では、媒酌人(ばいしゃくにん)が「家宝としてお納めください」と、念を押したものでした。

二宮さんがプロデュースする現代の祝言でも、三つ重ねの盃は、ご両家の記念品として大切にお納めいただいているのだそうです。

現代の祝言―家族を前に表明するふたりの覚悟

「時代や身分によって異なりますが、婚姻の諸儀礼は、嫁方や婿方の家で行われるのが一般的でした。現在も自宅で行うこともできますし、ご希望に合わせて歴史ある古民家や料亭、旅館などの場を借りることもできます」と二宮さん。

「儀礼としての結婚式を、これからもずっと継承していきたい」と語る二宮さんに、最近祝言を挙げたご家族の例を、紹介していただきました。

「三三九度」とは?和婚でかかせない 約束を固める盃事
大好きなお母さんやおばあちゃんに、感謝の気持ちを伝える花嫁。

普段は遠く離れて暮らすことが多い現代の家族。だからこそ、二宮さんがプロデュースする祝言では、家族と一緒に過ごす時間を何よりも大切にしています。花嫁支度をお母さんやおばあちゃんに見守ってもらうのも、花嫁や家族が気持ちを整えるための大切な時間なのです。

「三三九度」とは?和婚でかかせない 約束を固める盃事
祝言の場に選んだのは、横浜市指定有形文化財の三渓園(さんけいえん)「 鶴翔閣」(かくしょうかく)。

三三九度に続いて、親子固めの盃や親族固めの盃といった盃事が行われます。ふたりを新たな家族として認めてもらい、家族同士が心を交わす大切な契約儀礼です。

「三三九度」とは?和婚でかかせない 約束を固める盃事
盃事の後で、家族や親族に挨拶をする花婿。緊張の中にもややホッとした表情を覗かせます。

「ふたりで新たな家庭を築いていきます」と覚悟と決意を語る花婿。花嫁は家族みんなの名前を呼んで「今までありがとう、夫と幸せになります」と、感謝を伝えました。

「三三九度」とは?和婚でかかせない 約束を固める盃事
披露宴でリラックスした表情を見せるふたり。幸せそうな笑顔が印象的でした。

こちらのふたりは、婚礼の「結び」にかけて、おむすびを握ったのだそう。心のこもった演出に、ふたりの優しい人柄が滲む披露宴となりました。

神様と人、人と人とが結びついて誕生する新しい家族。酒と盃で生涯を契る三三九度は、当人同士の決意を、その家族や親族に認めてもらうためにも欠かせない契約儀礼です。盃を重ね、最後の一滴を飲み干した時、それは腹の底に一生の覚悟として残るのではないかと思うのです。

文/水鳥るみ
写真提供/FUTAGAMI wedding PHOTOGRAPHER SHAR

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書いた人

都内在住のお散歩マニア。好きな場所は日本庭園・公園・神社仏閣・動物園・水族館。全て歩き回れるところが良し。水鳥という名に託すのは、鳥のように羽ばたきたいという思い。しかしどういうわけか、飛べないペンギンが大好きで、いつか南極に行きたいという夢がある。