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2022.09.03

日本書紀とは?作者・古事記との違い・あらすじなど、わかりやすく概要解説

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「名前は知っているけれど読んだことのない本」ランキングがあるとしたら、『日本書紀(にほんしょき)』は国内で上位にランクインするのではないでしょうか。

ちゃんと読んだことがある人の方がレアケース!

『日本書紀』の作者は誰なのか、どんな内容なのかを分かりやすく解説します。

『日本書紀』とは、日本初の正史

正史とは国が編纂した歴史書、国が正当と認めた歴史書のことをいいます。720(養老4)年に成立した『日本書紀』は、日本における初めての正史です。

『日本書紀』の内容

『日本書紀』には、天地開闢(てんちかいびゃく)といわれる世界のはじまり、神々の手によって日本の国が築かれていった神代から、第41代の天皇にかぞえられる持統天皇の時代までの歴史が記録されています。
全30巻からなり、系図1巻が添えられています。『日本書紀』の内容は写本によって現代に伝えられていますが、長い年月の間に失われてしまった系図の内容は伝えられていません。

江戸時代に書き写された『日本書紀』の1ページ(国立国会図書館デジタルコレクションより)
「髙木家蔵」とあるので、これは髙木さんの家で保管されていたものなんですね。

『古事記』との違い

『日本書紀』は中国の歴史書のスタイルにのっとって、純粋な漢文でまとめられています。中国をはじめ国外に対して、日本の歴史をアピールするためにまとめられた歴史書だからです。
同時代に編纂された『古事記』は変体漢文といって、仮名がまじった日本ならではの文章で書かれています。こちらは国内の読者を想定してまとめられたと考えられています。

へ、変体漢文……。

『古事記』と『日本書紀』では登場する神々が異なっていたり、名前に使われている漢字が違ったりします。また、同じ登場人物でも記されているストーリーが異なることもあります。
どちらも日本の歴史を知る上で貴重な書物であり、2つ合わせて『記紀(きき)』と呼ばれています。

▼古事記に関してはこちら
日本神話「古事記」の神々と物語をわかりやすく解説!こんなに面白いって知らなかった!

六国史のひとつ

日本が律令国家となった飛鳥・奈良時代以降、朝廷には歴史書を編纂するための役所である史局が設置され、『日本書紀』、『続日本紀(しょくにほんぎ)』、『日本後紀』、『続日本後紀』、『日本文徳(もんとく)天皇実録』、『日本三代実録』が編纂されました。これらを六国史(りっこくし)といいます。
なお、『日本書紀』は平安時代ごろまでは『日本紀(にほんぎ)』という名称でした。

紫式部は「日本紀の御つぼね」というあだ名をつけられていたらしいです↓↓


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『日本書紀』の作者は誰か

『日本書紀』は成立した時代に新たに書き下ろされたものではなく、国内外の様々な歴史書を参考にしながら編纂されました。編纂を命じたのは第40代天武(てんむ)天皇、編纂責任者は天武天皇の第3皇子にあたる舎人親王(とねりしんのう)です。

『日本書紀』に登場する神々

『日本書紀』のはじまりは、神々が登場する建国神話です。一部を簡単にご紹介します。
神々の名前は、『日本書紀』では伊弉諾尊(いざなぎのみこと)、伊弉冉尊(いざなみのみこと)、『古事記』では伊邪那岐命、伊邪那美命となるなど、使われている漢字が異なる場合があります。
ここでは、読みやすいようカタカナにしています。また、「~のみこと」など敬称にあたる部分は省略しています。

イザナギ・イザナミの国生み

天と地が分かれて間もない頃、イザナギとイザナミという男女の神が天の浮橋(あまのうきはし)に立って、天沼矛(あまのぬぼこ)で海をかき回しました。すると矛の先からしたたった潮が固まってオノゴロ島という島になりました。イザナギとイザナミはオノゴロ島に降り立って夫婦となります。すると次々と島が生まれました。日本のはじまりといわれる国生みの神話です。
イザナギ・イザナミの国生み

日本誕生秘話!!

大八洲国(おおやしまのくに)

イザナギとイザナミの間に生まれた島のうち、大日本豊秋津洲(おおやまととよあきつしま)、伊予二名洲(いよのふたなしま)、筑紫洲(つくしのしま)、隠岐洲(おきのしま)と佐渡洲(さどのしま)の双子、越洲(こしのしま)、大洲(おおしま)、吉備子洲(きびのこじま)の8つの島を大八洲国(おおやしまのくに)といいます。

淡路島

イザナギとイザナミの間には、大八洲国が生まれる前に淡路洲(あわじのしま)が生まれ、子どもが生まれるのに重要な役割を担う胞衣(えな/胎盤のこと)となりました。兵庫県にある淡路島は、日本の建国神話で重要な場所とされています。

その後、「天下の主者(あめのしたのきみたるもの)」となるべき神々が生まれます。イザナギとイザナミの間に生まれた神々のうち、アマテラス・ツクヨミ・スサノオを三貴子(みはしらのうずのみこ)といいます。

アマテラスの天岩戸(あまのいわと)隠れ

アマテラスは世界を照らす太陽神です。地上を支配するために生まれましたが、あまりに神々しかったことからツクヨミとともに天上に帰されました。天皇家の祖先にあたる皇祖神(こうそしん)として、三重県にある伊勢神宮に祀られている神でもあります。

あるとき、弟のスサノオが乱暴なことに怒ったアマテラスは天岩戸という洞窟に隠れます。すると世界は闇に包まれました。困った神々は相談をして、岩戸の前に集まりにぎやかな祭りを開きます。祭りが気になって顔をのぞかせたアマテラスは岩戸から引っ張り出され、世界はまた明るく輝くようになりました。
アマテラスの天岩戸(あまのいわと)隠れ

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スサノオによるヤマタノオロチ退治

アマテラスの弟にあたるスサノオは、荒ぶる神です。乱暴でいつも泣きわめいていたために、地底にある「根の国(ねのくに)」へと追放されました。
天上を追われて出雲国(いずものくに)に降りたスサノオは、ヤマタノオロチを退治して蛇に呑まれようとしていたクシイナダヒメを助けます。スサノオがヤマタノオロチを退治したときに、三種の神器のひとつである草薙の剣(くさなぎのつるぎ)が現れました。
スサノオによるヤマタノオロチ退治

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オオナムチ・大国主の国譲り

オオナムチはスサノオとクシイナダヒメの間に生まれた神です。兄弟である八十神(やそがみ/たくさんの神々のこと)に殺されそうになったり、根の国でスサノオから数々の試練を課されたりしながら、「葦原中国(あしはらのなかつくに)」の大国主神(おおくにぬしのかみ)へと成長します。

葦原中国というのは葦が生い茂る原っぱで、天上にある神々の国「高天原(たかまがはら)」と、根の国の中間にある国。つまり人間の世界、日本の国のことを指しています。

天上に最初に現れた神のひとりであるタカミムスヒは、自分の娘とアマテラスの子との間に生まれた孫のニニギを葦原中国の主にしようと考えていました。そこでオオナムチに使者を送り、国を譲るように迫ります。オオナムチは国を譲り、島根県にある出雲大社に祀られました。

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神代のハイライト天孫降臨

タカミムスヒとアマテラスの孫にあたるニニギは、五穀豊穣の神です。天から降りてきて、葦原中国の主となりました。ニニギが降り立ったのは、日向(ひむか)の襲(そ)にある高千穂(たかちほ)の峯(たけ)と記されています。

ニニギのひ孫が日本の初代天皇となるカムヤマトイワレヒコ。神武(じんむ)天皇のことです。
神と天皇をつなぐ天孫降臨(てんそんこうりん)は、『日本書紀』神代のハイライトシーンです。

『日本書紀』は神話と歴史をつなぐ本

初代天皇とされる神武天皇の後、第10代崇神(すじん)天皇までは「欠史八代」といって『日本書紀』には具体的な歴史が記されていません。

『日本書紀』に記されている内容のどこまでが神話で、どこからが歴史なのかははっきりとしていませんが、第12代景行(けいこう)天皇、第14代仲哀(ちゅうあい)天皇の時代に熊襲(くまそ)を討つために九州へ遠征したという記述があり、当時日本を統一しようとしていた大和朝廷の軍事力を象徴しているとみなすことができます。
その後を継いだ第15代応神(おうじん)天皇のころには日本が統一されて、実在した天皇の時代へと歴史がつながっていくと考えることができます。

『日本書紀』の研究は今も続けられていて、これから先も、新たな日本の歴史を知る重要な手がかりとなるかもしれません。

アイキャッチ:日本書紀(国立国会図書館デジタルコレクションより)

参考書籍:
日本大百科全書(小学館)
世界大百科事典(平凡社)
入門 日本書紀事典(東京堂出版)
別冊太陽 日本書紀 編纂一三〇〇年(平凡社)
地図&図解なるほど!古事記・日本書紀 著:島崎 晋(廣済堂出版)

▼和樂webおすすめ書籍
眠れないほどおもしろい日本書紀――「書かれた文字」の裏に秘された真実 (王様文庫)

書いた人

岩手生まれ、埼玉在住。書店アルバイト、足袋靴下メーカー営業事務、小学校の通知表ソフトのユーザー対応などを経て、Web編集&ライター業へ。趣味は茶の湯と少女マンガ、好きな言葉は「くう ねる あそぶ」。30代は子育てに身も心も捧げたが、40代はもう捧げきれないと自分自身へIターンを計画中。