Culture
2022.12.05

ふるさと納税で登場!蒲ザクラ800年の歴史輝く「5種の七宝作品」開発ストーリー

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埼玉県北本市の七宝作家・近藤健一さんと北本市、和樂webがコラボレーションした作品が、ふるさと納税で登場しました。2022年大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも注目された源範頼(みなもとののりより)にゆかりのある「石戸蒲ザクラ」をモチーフにした、5種の作品の開発ストーリーをご紹介します。

国の天然記念物指定から100年を迎える、石戸蒲ザクラ

日本五大桜のひとつ、石戸蒲ザクラは、樹齢約800年とされる銘木です。源頼朝の弟である源範頼(蒲殿とも)が突いた杖が根付き、桜の木に成長したという伝説が残っています。江戸時代の人々もその美しさに熱狂したという石戸蒲ザクラは、1922(大正11)年に国の天然記念物に指定されました。2022年の今年は、それからちょうど100年。その記念をかたちに遺すべく始まったのが、今回の「石戸蒲ザクラふるさと納税プロジェクト」です。

北本市観光協会

七宝作家・近藤健一さんと蒲ザクラ

800年にわたり北本のまちを見つめ続けてきた蒲ザクラを、どのように表現するか。そう考えた時、北本で艶やかな七宝づくりを続ける近藤健一さんの名前が浮かびました。

近藤さんのアトリエから望む、北本の景色

七宝焼きは、他の伝統工芸と同じように作り手が減りつつあります。そんな中、今までの七宝のイメージを覆す新鮮な作品を生み出している近藤健一さんに、蒲ザクラの今も変わらぬ輝きを表現していただくことになりました。

▼近藤健一さんのインタビュー記事はこちら
艶やかな七宝ジュエリーにドキドキ!作家・近藤健一さんが北本にアトリエを構える理由【埼玉】

七宝のイメージを覆す大作、サラダボウル「刹那」

「これまでの七宝らしさとはまた違う、今までにない作品ができました」と近藤さんが語るように、七宝焼きのイメージを覆す大作、サラダボウル「刹那」。

まるで我が子のように作品を抱き上げる近藤さん

サラダボウルの制作は、銅板に七宝の釉薬をかけるところから始まります。

そこに、蒲ザクラの力強い幹や枝をひっかくように描いていきます。「こっちに生えたい、こっちに伸びたい、という蒲ザクラの想いがよぎった」と語る近藤さん。考えるのではなく、その時の感性を大切に制作されたそうです。

幹を描いたら逆さにして、内側と外側の両面を一気に焼きます。この時、垂れていく釉薬が模様となり、作品に変化と奥行きをもたらします。

一度目の焼き上がりがこちら。

さらに釉薬をのせ、もう一度焼きます。こうして、まるで樹齢800年の蒲ザクラのような味わい深い輝きを放つサラダボウルが生まれました。

「800年以上生きてきた蒲ザクラに対しては、ただただ謙虚な気持ちです。過酷な環境に晒されながらここまで生きてくるのは大変だったはず」と、蒲ザクラへの想いを語ってくれた近藤さん。このボウルを制作した日は穏やかなとても良い日で、完成した際は「良いものができた」とホッとしたのだそうです。

悠久の時を留め置いためたかのような、味わい深い輝きを放つ

料理を盛るのはもちろん、花入れにしたり床の間に飾ったり。「春はぜひ桜を活けて楽しんで」と近藤さん。そこにあるだけで空間がパッと華やぐ逸品です。

蒲ザクラを日常に

蒲ザクラをイメージした、普段の生活を彩る作品も制作していただきました。片口セット、ぐい呑み、ネックレス、帯留めです。

重厚な輝きを放つ、片口セット「静宴」

器に用いる時、普通は金ピカに表現するという金箔。近藤さんの手掛けた片口セットでは、あえて金箔を変色させることで、蒲ザクラ800年の歴史を感じるシックな佇まいに。

光に当たると、重厚な輝きを見せる

注ぎやすさと洗練を兼ね備えた片口は、手作業で形作られています。毎日の料理に彩を添える酒器セット。花見のお供にもどうぞ。

どちらも揃えたい、ふたつのぐい呑み

ぐい呑みは、ぽってりした丸型「円」と、すっきりしたフォルムの三角型「凛」の2種。3回焼き上げることで溶けた銅と釉薬が絡み合い、複雑な表情を見せています。さまざまな角度から眺めてお楽しみください。今回のプロジェクトのリーダー、和樂webスタッフ・とまこ一押しの作品です。

一番最初に製作したぐい呑みは、どうしたら蒲ザクラのイメージに近づけられるか、試行を重ねた逸品!七宝とは思えない味のある表現に北本市、和樂web一同驚きました。



サラダボウルともあわせて揃えたい

蒲ザクラを軽やかに身にまとう、ネックレスと帯留め

色の白い小ぶりの花を咲かせる蒲ザクラ。ネックレスと帯留めでは、花の可憐さを表現しました。

小さいのでかなり気を遣って制作したというネックレスには、透明1色・ピンク2色・ブルー2色・さらに白2色を重ね、晴れた日の空に向かって花が咲くようすを閉じ込めています。身に着けていると心まで上向きになるかのよう。

着物姿を上品にも粋にも仕上げてくれる帯留めは、はっきり桜とわかるデザインでないので、季節を問わず蒲ザクラの可憐さを身にまとうことができます。透明1色・ピンク2色・白2色、さらに濃い白を重ね花びらの重なりを表現しています。

和装、洋装、それぞれに楽しめるアクセサリーをまとえば、お出かけする心も弾みます。

今回のプロジェクトを通して

「たくさんの方に、北本の蒲ザクラの魅力と歴史を知ってほしい」。

そんな想いからスタートした「石戸蒲ザクラふるさと納税プロジェクト」。企画の段階から近藤さん、北本市、和樂webで何度も打ち合わせを重ねてきました。

近藤さんのアトリエでインタビューする、北本市の木村さん、和樂webのとまこさん

今回のプロジェクトを通して「自分のストライクゾーンが広がりましたね。今回の話がなければこのようなものは作っていなかったので、新しい発見になったし、制作に対してすごく心が軽くなりました」と、近藤さんは話します。

作品に対しても「どれも気に入っているから、ふるさと納税で選ばれなくてもいいかな」と、自身から手放すのが名残惜しそうな雰囲気。すかさず「それは困ります!(笑)」とツッコミが入りました。

源範頼の伝説とともに花開き、以来800年もの間北本の人々を見守ってきた蒲ザクラ。可憐さと力強さを併せ持ち、いぶし銀のような輝きを放つ銘木の美しさを、ぜひお手元でお楽しみください。

撮影:江澤勇介

【連載】石戸蒲ザクラ国指定100周年 きたもと桜国ものがたり

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3 源範頼の墓が桜の下に?埼玉・北本市で石戸蒲ザクラと範頼伝説を探ってみた
4 高さ12mの巨木!?渡辺崋山が弾丸取材した、埼玉・北本の石戸蒲ザクラと範頼伝説
5 小さなお寺に貴重な文化財を発見!源範頼の逃亡伝説を紐解く
6 樹齢約800年の桜に想いを!日本五大桜の一つ「石戸蒲ザクラ」をモチーフにした七宝作品が完成!
7 ふるさと納税で登場!蒲ザクラ800年の歴史輝く「5種の七宝作品」開発ストーリー

書いた人

大学で源氏物語を専攻していた。が、この話をしても「へーそうなんだ」以上の会話が生まれたことはないので、わざわざ誰かに話すことはない。学生時代は茶道や華道、歌舞伎などの日本文化を楽しんでいたものの、子育てに追われる今残ったのは小さな茶箱のみ。旅行によく出かけ、好きな場所は海辺のリゾート地。